泣きゲーの世界に転生した俺は、ヒロインを攻略したくないのにモテまくるから困る――鬱展開を金と権力でねじ伏せろ――

穂積潜

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第12話 主人公の親はたまに金持ち

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 黒兎への餌やりも終わり、ぷひ子ママが持ってきてくれたおかずとご飯で簡単な夕食を済ませた俺は、パソコンのクソデカモニター君と向き合っていた。



(やっぱりだ。完全に元の世界の経済状況と連動している! ヤッター! これ勝ち確ぞ!)



 ネットで最近の経済指標やら株や為替のチャートやらを調べ尽くした俺は、独りガッツポーズする。元の世界で証券会社に勤め、かつ瞬間記憶能力を有する俺は、取引が電子化されて以降のデータが全てこの頭に入っている。そのデータと照合したが、元の世界とこの世界の経済状況のデータはほぼ完全に近い状態で一致していた。



(やっぱり、作中に明記されていない事柄は一般常識に従う、という認識でいいんだろうな)



 当たり前だが、ライターだって、くもソラで出てくる以外の場所や状況――例えば、作中に出てこないウォール街の動向まで事細かに設定してあるはずもない。



 くもソラが『2000年代初頭の日本』という設定である以上、描写がない部分はそれに従うということか。



(さて。これでマネーゲームでガッポガッポ稼ぐという方針が決定したのだが……)



 ここで問題となるのは、俺がしがない七歳児であり、まともに証券取引なんてできる口座も種銭も持っていないことだ。



 こういう時頼りになるのは? そう。もちろん、血の繋がったマイファミリーだよね。



 少なくとも、家は貧乏ではない。一人で住むには広すぎる一軒家を維持し、ぷひ子ファミリーに俺の世話代を配るくらいの余裕がある。その一部をかわいい息子=俺に分け与えてもらってもバチはあたらないはずだ。



 早速、パパンに電話だ!



「……なんだ」



 ぶっきらぼうな声が電話に出た。あんまり連絡が取れない設定の父親につながるなんて、俺はついているのかもしれない。



「親父。金がいる」



 俺は単刀直入にそう言った。それが主人公のキャラなので。



「……お前の教育資金の口座。資料庫、アステカのD-4のファイルだ。2000万ある。もし使い果たしても補充はしない。それでもいいなら、好きに使え」



 はい、二千万円ゲットー!



 一人の子どもを大学までやる教育費の平均は一千万くらいだから、よく貯めてる方だよね。



「ありがとう。親父。あっ、それから、お礼と言ってはなんだけど、発掘で出て来たエジプトの女王のミイラをこっちに送るのは絶対やめてね。すげーめんどくさいことになりそうな予感がするから。後、今、親父が調べてる墓はエジプト文明のやつじゃなくて、『アブラハムの宗教』系統だから。そして、日ユ同祖論はガチ。死海文書とヴィオニッチ手稿の方からあたってみるといいと思う」



「なに? それはどういう――」



 俺はむっちゃ早口でそう言った後、親父のセリフを最後まで聞かずに電話を切った。



 とりあえず、これで親父関連のフラグは牽制できたかな。放っておくと、ミイラ系ヒロインが航空便で送られてくるけど、ミイラは復活しなければヒロインじゃなくてただの屍だ! 返事は一生するな!



 なお、このルートでは攻略を完了するまでに、ミイラから即身仏まで、あらゆる干物の作り方を実践的に学べるゾ!



(さて。2000万は大金といえば、大金だが、まだ足りない)



 俺の工作にはとにかく金がいる。2000万の種銭では心もとない。なんせ、俺が求めるのは老後の安心ではなく、世界の救済だからだ。



(ふふふ、問題ない。子どもは、父親だけじゃ作れないのだ。つーか、こっちが本命ね、つーか、早くしないと受付時間が終わっちまう)



 俺はそんなことを考えながら、再び家電の受話器を取った。

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