泣きゲーの世界に転生した俺は、ヒロインを攻略したくないのにモテまくるから困る――鬱展開を金と権力でねじ伏せろ――

穂積潜

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第60話 ドジっ子キャラが張り切るとろくなことがない

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 晩秋のある日曜日。



 俺は今日も今日とて、俺はぷひ子家で飯を食う。



「ゆーくん。はい。ご飯! ゆーくん、みかちゃんに回して!」



 ぷひ子はぷひ子ママからカウンターキッチン越しに茶碗を受け取って言う。



「おう――はい。みか姉」



 俺は茶碗を右から左に受け流す。みかちゃんは俺の隣――つまり、台所から一番遠い位置に座っている。



「ありがとう。――あの、ぷひちゃん。私も手伝おうか?」



 みかちゃんが所在なさげに腰を浮かせて言う。



「いいのいいの! みかちゃんはお客さんなんだから、じっとしてて」



 ぷひ子がみかちゃんを手で制する。



「でも、私までごちそうになるからには何かお手伝いくらいは――」



「ふふふふ、いいのよ。みかちゃん。美汐にやらせてあげて。この子、みかちゃんに嫉妬してるのよ」



「えっ。どういうことですか?」



 みかちゃんが首を傾げる。



「ほら、みかちゃんがゆーくんのお家にお手伝いに行くようになったでしょう? だから、このままじゃ、ゆーくんがお世話役を必要にしなくなって、一緒にご飯を食べてくれなくなるんじゃないかって心配なのよ。ねー?」



 ぷひ子ママがぷひ子をからかうように言った。



 俺はマジでそうしたかったけどな。ぷひ子ママの料理の腕は確かだが、どちらかというと健康重視の薄味の飯を作る。でも、みかちゃんの方は、俺好みにチューニングされた味付けの飯を忖度して作ってくれるし。だけど、ぷひ子の好感度を下げないために、俺は律儀にぷひ子家で飯を食う習慣を継続してるのだ。



「ぷひゅっ! そ、そんなんじゃないもん! 私はお料理が好きだからこうしてるだけだもん!」



 ぷひ子がぷくっと頬と鼻を膨らませて言った。手にしていた箸をカラカラと取り落として、いかにもバレバレな態度だ。



 残念だが、ぷひ子よ。天然ぽやぽや系幼馴染の天下は短い。時代はこの後ツンデレに傾く。お前は時代の過渡期に産まれた徒花あだばななのだ。



「ぷひちゃん。安心して。私とゆうくんはそういう関係じゃないのよ。お仕事として、私はゆうくんのお世話をしてるの」



 みかちゃんが優等生っぽく無難な返答を返す。



 こういう偽善者ムーブが積み重なって、他のヒロインたちが胸の奥にどす黒いものを植え付けていくんですね。



「――じゃあ、みかちゃんは、もしゆーくんが、みかちゃんに『およめさんになってください』って言ってきても、断るの?」



 ぷひ子が床に転げ落ちた箸を拾い上げながら言う。



 カウンターキッチンの陰に隠れて、その顔は見えない。



 でも、多分、ひぐら〇みたいな不穏な顔をしてると思う。



「……」



 みかちゃん。そこで頬を染めて黙るのはやめよ? 偽善者ムーブをするなら最後まで貫かなきゃダメじゃん。



  あっ。すごくいやな空気が流れ始めた。



「うふふ。ゆーくん、モテモテね。どっちを選ぶのか、私もとっても気になるわ」



 ぷひ子ママは呑気にそんなセリフを吐きやがる。ここで、『二人の女の子が俺を取り合ってくれてウハウハ!』なんて考えるやつは、ギャルゲーの主人公には向いてない。



 三角関係が楽しいのはTo l〇veると実用性に特化したアホみたいな世界観のエロゲ―だけ! リアルでもシリアス系のギャルゲーでも、三角関係なんて胸が痛くなってnice boatな展開が待ってるだけで、基本的にいいことなんてない。



「勝手に俺の選択肢を狭めないでください! 俺は将来、総理大臣になって、アイドルと結婚するんです! さて、社会情勢を勉強しなくちゃ――」



 俺は本編の主人公の返答を引用して答える。



 ああ、少年って素晴らしい。どんなに無謀な夢を語っても許される。ボーイズビーアンビシャス。

 俺は、そのまま、場の空気を変えるために、テレビのリモコンの電源ボタンを押した。
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