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第2章
満を持して・・・・
しおりを挟む「お楽しみといこうか?お嬢ちゃん。」
男の顔が、近くで蠢く。暗い人通りのない路地裏。冷たく硬い地面に組み伏せられ、鼻先を掠めるゲス夫Bの咽せるような臭いに吐き気がよぎる。
「綺麗な顔に、いい身体してんな。」
間近にある男の顔が、胸へと下りる。いや・・・・触らないで。
「おい。一人で楽しもうとすんなよ。俺もちゃんと交ぜろ。」
そんな、もう一人も復活したの・・・・?押さえつけられ、男二人相手に・・・・逃げ切れるわけがありませんわ。魔法・・・・魔法でなんとか・・・・水魔法だって、水圧を加えれば、押しのける事も。
【我乞う。深淵より導かれし水の流れ。濁流となりて彼の者を飲み込め。~水鉄砲~】
ピュー。
「は?」
「あれ?」
必死に伸ばした指先から、ピューっと零れる水。えっと。・・・・おかしいわね。普通こういう状況なら、こうドッと勢いよく弾丸のように指先から水が発射されて、壁の方までゲス夫Bが吹き飛ばされるんじゃ・・・・。
「へー。お嬢ちゃん。魔力持ちかぁ。」
「ラッキーだな。いい金になるじゃねーか。」
男達の目が、妖しく光ましたわ。・・・・なんだか、ますます悪い状況になってしまったような。私・・・・やってしまいましたの?そういえば、お兄様があまり人前で魔法を使わないようにって仰ってたような。ああっ。なんだかまた滝の用に冷や汗が・・
「おいおい。お嬢ちゃん、尋常じゃなく濡れてるぜ?」
「魔力持ちの暴走か。濡れるだけだなんて可愛らしいもんだな。さっき見かけたガキは、竜巻みたいだったからな。アイツも捕まえたかったんだが速すぎて無理だったな。」
ーそれって、レオニダス?
「まぁ、いーじゃねーか。このお嬢ちゃんが手に入ったんだからよ。魔力持ちなら手を出さず、このまま売っちまう方が良さそうだな。」
「ーっ、貴方達!人身売買は、禁止されてる筈よ!見つかれば死刑だわ!」
冗談じゃありませんわ。こんな奴らに好きなようにされるくらいなら、私は没落も死刑も待たず、潔く自決しますわ!!
「ああ。それは、コッチでの話だろ?」
「此処は、アルテだぜ?隣国との境。」
「そうそう。人が行き交う街。」
「買手はいるんだよ。お嬢ちゃんみたいなお綺麗で、特別な力を持つ少女は特にな。売り捌くのに、造作もないさ。」
「・・・・まさかっ!?隣国に人を!?」
思わず目を見開いた私に、男達はニヤリと顔を歪める。
「さぁなー?どーなるかは、身を持って知ればいーんじゃねーか?」
「人に見られると厄介だな。気絶させ、袋にでも詰めるか。」
ーむぐっ!
口元を押さえられる。男が拳を振り上げるのが見える。嘘。嘘。嘘。
殴られる!いやっ!助けて!助けてハンス!!
ーガッ!!
ードカッ!!
「ぐえっ!!」
「ンがッ!!」
目を閉じ、身を固くし、痛みに耐えようと身構えた私の耳に男達の不快な声が入る。
いつまで待っても痛みは来ず、その代わりに熱を持った手が、頬にそっと触れるのを感じた。
「・・・・大丈夫か。」
慈しむ様な優しい声。
「え?・・・・ハン・・・・」
「悪いな。ハンスじゃなくて。」
目をゆっくり開けると、そこには眉間に皺を寄せ 不機嫌な顔で私を睨みつける、オズワルド皇子の姿がありましたわ。
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