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第1章
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「とっても素敵です! ミコト様!」
店員の女性。リタさんが、頬を蒸気させながらはしゃぐ。
「リタさん。大袈裟ですよ……」
恥ずかしくて、顔を伏せどもってしまう。こんな風に洋服に合わせて髪型を変え、お化粧をするなんて事……した事ない。
「そんな事ありませんよ! ミコト様! 本当に素敵です! ああ、本当に愛らしい!」
「それは、リタさんが綺麗にしてくれたからで、私が素敵なわけじゃ……」
本当に、リタさんは凄いと思う。手際よく、髪を纏めあげたかと思ったら、サラサラとメイクまで、流れるように施してくれた。
私の3分で終わる手抜きメイクと違って……短い時間の中できっちりと、ナチュラルにメイクを仕上げてくれた。
ほんと、リタさんはすごい。鏡に映る自分を見て、そう思う。詐欺だよこれ。だって、雰囲気が全然違うもの。
「ミコト様は、無頓着過ぎなのです! 何故そのように美しい髪と愛らしいお顔をお持ちなのに、何もなさらずそのままなのですか!?」
「私は、貴女が当店に入られた瞬間からこう思ってたのです。【勿体ない!】っと!」
「素材が良くても、何もしなければ宝の持ち腐れです! それに、ナチュラルなのと無頓着はぜんっっっぜん違いますからね!」
そして、先ほどから私は、こんな感じで絶賛お説教を受けています。
3分間メイクなどもっての他だ!っと一喝されました。いや、ちゃんと日焼け止めは塗ってますよ?乾燥防止にリップも塗ってるし……あっ、リタさんがますます険しい顔を……これ以上何か言うの止めておこう。火に油な気がする
「可愛いは、作れるのです! 綺麗もしかり! 女は、磨いてなんぼ! 化けてなんぼなんですよ!」
おおっ……何かのスイッチ入っちゃってませんか?
「はぁっ……はぁっ……すみっません。少々取り乱してしまいました」
「はっ、はい」
「─さて」
リタさんは、口元に手を添えコホンと誤魔化すように咳をする。
「それでは、行きましょうか。ヴォルフ様もお待ちですし」
あっ。そういえば忘れてた……。
「リタさん」
「はい」
席を立つ際に、疑問を投げ掛ける。
「ヴォルフって、何者なんですか?」
「? ヴォルフ様ですか?」
「あっ、いや。この街に来てからのヴォルフが、私の知ってるヴォルフと違ってて……」
……私の知ってるヴォルフ。女好きで、掴み所がなくて、神出鬼没で、人をからかうのが好きな嫌な性格の奴。
「年に数回。お洋服をお買い上げになられる、お得意様ですよ」
やっぱり、常連なんだ。こんな貴族御用達みたいなお店の常連って……。
「ヴォルフ様のお選びになるお洋服は、とてもセンスがよく、私達も参考させていただいてます」
「いつもは、愛らしい物をお選びになるのですが……本日は、とてもシンプルで大人っぽい物ですね」
そう言って私の方を振りかえるリタさん。
「着られる方の、本来の魅力を引き出すような……ええ。これを選ばれた理由がよくわかります」
そうにっこり微笑まれた。
「……ミコト様?」
「あっ、すみません。ちょっとボーッとしてしまって。行きましょう! 待たせすぎちゃってるし、急がなきゃ」
いつもは、可愛い物を?なんだか胸の奥がもやもやする。あれ……おかしいな。私、何モヤっとしたんだろう。
眉間に入る縦筋を指で伸ばす。
変なの。
─そして、この時感じたモヤモヤを、私が自覚するのは、すぐ後の事だった。─
店員の女性。リタさんが、頬を蒸気させながらはしゃぐ。
「リタさん。大袈裟ですよ……」
恥ずかしくて、顔を伏せどもってしまう。こんな風に洋服に合わせて髪型を変え、お化粧をするなんて事……した事ない。
「そんな事ありませんよ! ミコト様! 本当に素敵です! ああ、本当に愛らしい!」
「それは、リタさんが綺麗にしてくれたからで、私が素敵なわけじゃ……」
本当に、リタさんは凄いと思う。手際よく、髪を纏めあげたかと思ったら、サラサラとメイクまで、流れるように施してくれた。
私の3分で終わる手抜きメイクと違って……短い時間の中できっちりと、ナチュラルにメイクを仕上げてくれた。
ほんと、リタさんはすごい。鏡に映る自分を見て、そう思う。詐欺だよこれ。だって、雰囲気が全然違うもの。
「ミコト様は、無頓着過ぎなのです! 何故そのように美しい髪と愛らしいお顔をお持ちなのに、何もなさらずそのままなのですか!?」
「私は、貴女が当店に入られた瞬間からこう思ってたのです。【勿体ない!】っと!」
「素材が良くても、何もしなければ宝の持ち腐れです! それに、ナチュラルなのと無頓着はぜんっっっぜん違いますからね!」
そして、先ほどから私は、こんな感じで絶賛お説教を受けています。
3分間メイクなどもっての他だ!っと一喝されました。いや、ちゃんと日焼け止めは塗ってますよ?乾燥防止にリップも塗ってるし……あっ、リタさんがますます険しい顔を……これ以上何か言うの止めておこう。火に油な気がする
「可愛いは、作れるのです! 綺麗もしかり! 女は、磨いてなんぼ! 化けてなんぼなんですよ!」
おおっ……何かのスイッチ入っちゃってませんか?
「はぁっ……はぁっ……すみっません。少々取り乱してしまいました」
「はっ、はい」
「─さて」
リタさんは、口元に手を添えコホンと誤魔化すように咳をする。
「それでは、行きましょうか。ヴォルフ様もお待ちですし」
あっ。そういえば忘れてた……。
「リタさん」
「はい」
席を立つ際に、疑問を投げ掛ける。
「ヴォルフって、何者なんですか?」
「? ヴォルフ様ですか?」
「あっ、いや。この街に来てからのヴォルフが、私の知ってるヴォルフと違ってて……」
……私の知ってるヴォルフ。女好きで、掴み所がなくて、神出鬼没で、人をからかうのが好きな嫌な性格の奴。
「年に数回。お洋服をお買い上げになられる、お得意様ですよ」
やっぱり、常連なんだ。こんな貴族御用達みたいなお店の常連って……。
「ヴォルフ様のお選びになるお洋服は、とてもセンスがよく、私達も参考させていただいてます」
「いつもは、愛らしい物をお選びになるのですが……本日は、とてもシンプルで大人っぽい物ですね」
そう言って私の方を振りかえるリタさん。
「着られる方の、本来の魅力を引き出すような……ええ。これを選ばれた理由がよくわかります」
そうにっこり微笑まれた。
「……ミコト様?」
「あっ、すみません。ちょっとボーッとしてしまって。行きましょう! 待たせすぎちゃってるし、急がなきゃ」
いつもは、可愛い物を?なんだか胸の奥がもやもやする。あれ……おかしいな。私、何モヤっとしたんだろう。
眉間に入る縦筋を指で伸ばす。
変なの。
─そして、この時感じたモヤモヤを、私が自覚するのは、すぐ後の事だった。─
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