【完結/BL】霊力チートのΩには5人の神格αがいる

架月ひなた

文字の大きさ
18 / 74
第三話、子どもを助けて連れ帰ったら八岐大蛇でした

2

しおりを挟む


「スサ!」
 思いっきり首に抱きつかれてしまい勢いよく地面に尻餅をつく。
「スサ、会いたかった。また会えて嬉しい!」
「えーと。俺はスサって奴じゃないぞ? 朝陽だ、桜木朝陽」
「ううん、スサだ。この気配はスサに間違いない」
 誰ソイツ、と思いはしたものの朝陽は話を進めることにした。
「君の名前は?」
 朝陽が聞くと、男の子は大きな二重瞼から覗く赤眼を瞬かせる。
 シルバーのショートカットの髪の毛がちょうど目にかかるくらいの長さだった。
「んーと、……オロ?」
 ——何で疑問系?
「スサには前みたいにオロって呼んで欲しい!」
 スサじゃないけどと思いつつ、懐いてくる子どもを見て悪い気はしない。
「んじゃ、オロ。でも俺は朝陽だ。スサじゃないからな?」
「分かった。朝陽」
 無邪気な笑みが心に沁みた。
 人外では交番に届けるわけにも行かず、朝陽は悩んだ末にアパートへと連れていく事に決めた。
「ん、しょっ!」
 掛け声と共に勝手に背中によじ登ってきたオロをそのままにして、朝陽は歩き出す。
「両手塞がってるから、落ちないようにしがみついてろよ?」
「はい!」
 元気の良い声が返ってきた。

 ***

「ただいまー」
 靴を脱いで部屋の中に入って行くと、キュウは居なくなっていて、将門一人だった。
「お前はまた厄介なモノを拾ってきたな。今度はトカゲか。ペットはウンザリだ。外に放り投げろ」
「トカゲ?」
「トカゲと一緒にするな!」
 げんなりした様子の将門に向かって、オロが喰ってかかる。朝陽の背中から飛び降りるなり、トテトテと可愛らしい音を立てながら、将門に向かってオロが駆け寄った。
「そんなちんちくりんになりおってからに。トカゲだろうが」
「違うぞ! ボクは八岐大蛇《ヤマタノオロチ》だ!」
「はいはい」
 そう言った将門が嫌そうな顔でヒラヒラと手を振って、オロをあしらう。
「八岐大蛇ぃい⁉︎」
 面食らったのは朝陽だった。
 もしかしてとんでもない拾い物をしたのでは無いのか? 
 将門が『厄介な拾い物』と言った意味が分かり息を呑む。オロが己の事を『スサ』と呼んだのは『スサノオ』を指していたのか? 逡巡する。
 未だに言い合いをしている二人を交互に見ては、朝陽は口を開くタイミングを見ていたが、諍いは一向に終わらない。
 十分は様子を見たものの、段々焦れてきてやがてそれは苛立ちに変わった。
「お前ら黙れ」
 双方に霊力をぶつけて問答無用で黙らせる。
「オロって本当に八岐大蛇?」
「そうだよ。スサがボクの霊力を十分の一になるまで削ってこの姿にしてくれたから、ボクは今までずっと封印からも逃げられていた」
「逃した? 退治じゃなくてか?」
 伝わっている文献では、スサノオノミコトは八岐大蛇を討伐して、生贄とされる筈だった娘と結婚したと書かれていた。
「うん、そう。ボクとスサは友達だ。だから周りの目を欺く為に退治したフリをしてスサが逃してくれたんだ。だけど、どんどん力が弱まってきてお腹が空いたから、ご飯探して旅をしていたらあの者たちにバレた。何かボクにやらせたい事があったみたいだけど、この通りボクにはもうそんな力なんてない」
 所々良く理解の出来ない箇所はあったが、スルーした。
 確かに三歳児にしか見えない見た目では悪さなど出来そうにない。何よりオロからは邪悪な気配が全くしなかった。潜在的な能力の高さは朝陽にも視えたが、今のオロでは『下の中』くらいだと思われる。そこら辺にいる浮遊霊と大差ない。さっきの男たちがオロに何をさせたかったのかは読めないものの、ふと疑問に感じた事もあった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

処理中です...