【完結/BL】霊力チートのΩには5人の神格αがいる

架月ひなた

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第七話、暗転と亀裂

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 空間に切れ目が入り、朝陽達は新居に戻って来ていた。物部はニギハヤヒがしっかりと掴んでいる。
「くそ、いい加減離してくれない⁉︎ そんな老体に鞭打って大丈夫なの? 足腰ヤバいんじゃない? そんなんじゃ朝陽も満足に……っ、「……」……痛い痛い痛い‼︎」
 よっぽど頭にきたらしい。ニギハヤヒが無言で物部の関節を締め上げていた。
 ——やめてやれよ……。
 見た目はマフィアに捕まったヤンチャな男子校生である。どっちが悪役なのか分かったものじゃない。
 心の中で朝陽は思ったが、口にはしなかった。
「朝陽、コイツの周りに結界を張れ」
「分かった」
 将門に言われた通りに朝陽が結界を張ると、ニギハヤヒが物部を取り押さえていた腕を離した。
 だが、意に反して物部は結界を簡単にすり抜けてみせる。それを見ていた全員が目を瞠った。
「僕は死人じゃないからね。今日は体に入ってるし、人外用の結界なんて効かないよ」
「お前……、まさかっ」
「僕は現役の男子校生だ。あんなバカ学校になんて行ってないけどね」
 ——コイツが普通の人間⁉︎
 頭が混乱していた。華守人は死者としか番えない。ずっとそう聞かされていたし、階段落下の事件、異界の事もあっててっきり人外だとばかり思っていた。
 今は神造人だから、その法則すら変わっているのか? どういう事なのか目まぐるしく逡巡する。
 しかも生身でこれだけの霊力を誇るとなれば、朝陽と同等……いやそれ以上のチート加減である。
 驚き過ぎて朝陽は言葉も出てこなかった。
「華守人なら、人外だけだろうね。でも朝陽……貴方は今、神造人でしょ? 神造人は生者とも番えるよ。その証に僕は候補者だ」
 全員がニギハヤヒを見る。
「あー……そうだったか……?」
「おい。長生きしすぎて耄碌《もうろく》してんじゃねえのか⁉︎」
 将門が食ってかかったが、ニギハヤヒは元々の性格がやる気ゼロで適当な神様だったのを思い出し、全員半目になった。
 少し前は感情を乱され、感傷的になっていたから気にかけていなかったが、今となっては十種神宝の事もただ単に言い忘れていただけなのでは、とも思えてくる。
「αとはいえ現代に金も稼げない人外ばかり居てもしょうがないでしょ。コイツら全員祓って僕と番いなよ。養ってあげるから。個人的に増やした資産は腐るほどあるよ僕」
 ——いや、その前に俺はお前に階段から突き落とされたり、言葉で散々疑心暗鬼にさせられたり、他人けしかけられて輪姦されそうになったり、腹蹴られたり、薬物打たれたりして殺されかけてるんだけど……?
 変わり身の早すぎる物部に何も答えずに、朝陽は遠い目をした。
 宇宙ネコを通り越して虚無の精神に陥る。
「ダメに決まってん(でしょ!)(だろ!)」
 突然、優良過ぎるとも言える事故物件が現れて四人が再度戦闘体勢に入った。
 そんな中で晴明だけが静かに立ち上がり、無言で異界を開くと物部に向けてニッコリと笑んだ。
「ちょ、何すんの、アンタ……っ」
 晴明は無造作に物部を掴むと、粗大ゴミでも不法投棄するかの如く異界の中に放り投げた。そして何も無かったかのように入口を閉じてみせる。皆唖然としたまま見つめていた。
「晴明て……」
「ん? どうしたの朝陽。何かあったかい?」
 輝かしい程の笑顔で晴明が振り返る。
「ううん……ナンデモナイ」
 この中で怒らせて一番怖いのはきっと晴明だと悟った一同は、何も言わずに異界へとポイ捨てされた物部アマヤに心の中で手を合わせる。
 ——成仏しろよっ!
 全員の心が統一された瞬間だった。

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