【完結/BL】霊力チートのΩには5人の神格αがいる

架月ひなた

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第七話、暗転と亀裂

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 朝陽が風呂から上がり、リビングへと向かうと各々寛いでいる所だった。
 久しぶりに見た光景に何だか笑えてきて、朝陽が笑みをこぼす。
「そういえばニギハヤヒ。そろそろ俺の中にある十種神宝を取り出してくれよ。もういいだろ?」
「それもそうだな」
 ニギハヤヒが朝陽の下っ腹に手を当てる。すると、そこから九つの玉が浮き出してきた。
「あ?」
「どうした?」
 ニギハヤヒが不可解な声を上げたのが気になり、朝陽が聞き返す。唐突にスウェットのズボンを下着ごと勢いよく下ろされた。
「ちょっ、何してんだよ、ニギハヤヒ!」
「朝陽!」
 ニギハヤヒが瞳を輝かせて朝陽の下っ腹を見ていた。
「何だよ⁉︎ いいから手を離せ!」
 ズボンをあげようとしたが、ニヤニヤと笑みを浮かべた番達にズボンを押さえられていた。
「いや、ちょっと待てお前ら……」
「え、何が?」
 シレッと言って退けたキュウに続き、将門が「これは無くてもいいだろう」と続けた。
「いや、いるし。裸族じゃねえんだよ俺は!」
「上も要らないよ朝陽。脱ごうか」
 ——何を言っているんだ、晴明?
「ボクが抱えててあげるから寒くないよ」
 ——オロ……。それなら普通に服を着させてくれよ。
「今まで神宝があって分かりにくかったが、朝陽お前これ五つ子だな」
「はあっ⁉︎」
「大きい子袋の後ろに小さめの袋が四つあるぞ」
「え、嘘。私たちの子?」
「いつ……つご」
 朝陽は立ったまま失神した。



 気が付いたらベッドの上で好き勝手にされていたので、即座に結界を強化して家からしめ出す。
「妊夫にナニしてんだよってめぇら!」
 朝陽の怒号が飛んだ。



 ***



 朝陽の懐妊の件もあり、次の休みを利用して朝陽たち一行は博嗣の元へ赴いていた。
 この面子はまだ緊張するのか、お茶を持つ博嗣の手がカタカタと震え中身が飛び散っている。もはや見慣れた光景で、六人は気にも止めずに座卓を囲んでいる。そして将門がアッサリと言った。
「朝陽に、やや子ができた。五つ子だ」
 単刀直入の言葉に、博嗣が盛大にお茶を吹く。ゴッホゴホと咽せている博嗣の背を朝陽がさすっていると、とうとう博嗣が幽体離脱した。
 飛んで行こうとしている博嗣の幽体を慌てて掴み、朝陽は無理やり体に押し込んだ。
 ——危なっ、じいさん逝っちまうとこだった!
 ハッと我に返ったように体を揺らした博嗣が朝陽を見る。
「朝陽っお前、病院へは行ったんか?」
「行ってない。普通の病院て行っても大丈夫なのか?」
 当たり前だ、と頭を叩かれる。
「人外の子だから視えないかも知れないと思ったんだよ。これで視えなかったら、俺ただの危なくて痛い人だろうが」
「とりあえずちゃんと診察を受けに行くぞ」
 博嗣は昔からの馴染みである産婦人科へと電話をかける。
 産婆も朝陽の後ろに勢ぞろいしている朝陽の番たちを見て幽体離脱しかけたので、朝陽は慌てて守りの結界を張った。
 視える側の人間だったらしい。
「ここここちらへどうぞお上がり下さいませ」
 ——いや、そんなに緊張しなくても……。
 家の裏手にある診療所に通される。代替わりして今は孫に任せているみたいだ。
 孫は朝陽たちを一瞥した後、特に取り乱すわけでもなく、診察台に朝陽を案内した。
 エコーで映し出された画像を見て「本当に五つ子ですね。おめでとうございます」と表情一つ変えずに淡々と告げられた。
 おめでたいのかおめでたく無いのかよく分からなくなってくる。
 産婆は画像を見て拝んでいた。
 知っている側からすればその相手の子どもは神に等しいのだろうと朝陽が思いながら視線を移すと、博嗣も同じように拝んでいた。
 ——じいさんもかよっ!
 残すは、会社への報告なのだが、これが一番の悩み所だった。
「会社……どうしよう。クビにならないかな」
 朝陽が働かない事には生活費が無くなる。孕むのを希望したのは自分だが胃が痛かった。
 とりあえず、報告と産む場所は決まったので帰宅する事にした。




「なんか無駄に疲れた気がする」
「朝陽お疲れ様」
 ダイニングテーブルに項垂れていると晴明に頭を撫でられた。
 不意に椅子ごと後ろに引かれて、朝陽が顔を向ける。
「お前の座る場所は俺の前だろう?」
 当たり前のようにひょいっと横抱きにされて、テレビの前に陣取った将門は胡座をかいた足の上に朝陽を乗せた。
「はあ……どうしよ仕事」
 ボヤくとキュウが宙に浮きながら朝陽の顔を覗き込む。
「私働くから大丈夫だよ。安心してよ朝陽」
「へ?」
 働くも何もキュウは人外で普通の人間には見えない筈だ。するとキュウが、さも当たり前のように告げた。
「私人間に擬態出来るよ」
「ボクも出来るよ」
「オレも」
「儂も出来るぞ?」
「やろうと思えば出来るぞ」
 初めて知った事実だった。
 こんなに胃を痛めてまで悩んだのは何だったのだろうか。朝陽は段々と己の心が荒んでくるのが分かった。
「おい……」
 皆が「何だ?」と言わんばかりの視線を朝陽に向ける。
「なら、初めっから働けや! 何ヒモしてんだっこの甲斐性無し共! 祓うぞクソが‼︎」
 物部に拉致された時に覚えた朝陽の新技、放電攻撃が炸裂し、全員床に伏す。効果は絶大だった。



→最終話へ続く











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