4 / 17
第4話
しおりを挟む
「媚びへつらう他の貴族とは違い、俺に物怖じしない君が好きなんだ。聡明なジュリアでなければ王妃は務まらない」
ちょっと待って! レオンさま、告白する相手を間違えてるわ。その台詞、本来は聖女に言うものです!
ゲームをプレイしていたときは感動でわーきゃーと喜んだシーンだ。目の前で見られるのはファン冥利につきる。がしかし、告白相手が自分では純粋に楽しめない……!
「今まで散々私を避けて来たのに、いきなり好きと言われても、信用できないわ」
「ジュリアだって、俺に冷たかった」
レオンが苦しそうに顔を歪め、さすがに胸が痛んだ。顔を横へ逸らす。
その時、みゃーと猫の声が天から聞こえた。
驚いて見上げるとシャンデリアの上に金色に輝く双眸があった。獣の低いうなり声が聞こえる。
「仔猫? どうしてそんなところに、わっ!」
レオンが声を発すると同時に仔猫は飛び降りた。着地場所はレオンの顔だ。しっぽまで毛を逆立てた仔猫は彼の服に噛みついたり、シャーと威嚇しながら猫パンチを炸裂させた。
「殿下! 何事ですか?」
騒ぎに気づいた護衛兵が駆け寄ってくる。
「なんでもない。来るな!」
護衛兵が来ないようにと指示を飛ばすレオンの頭に仔猫は飛びつくと、がぶりと噛みついた。
その場にいた誰もが叫び、顔を真っ青にした。
「だ、だめよ、猫さん!」
私は猫を抱きかかえた。
どうしよう。いくら猫さまと言っても、王子に傷を負わせた。不敬を働いた罪で餌抜きの刑になるかも!
私が守らなければと意を決すると「猫に代わって謝ります。ごめんなさい!」と叫んだ。
猫を抱きかかえたまま身体を翻し、扉の外へ飛び出した。階段を下りて、転がり込むように馬車に乗り込む。
「早く出して!」
馭者は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに馬車を出した。揺れる車窓から後方を見る。さすがのレオンも追って来ていないとわかり、ほっと息を吐いた。
遠くなっていく王城は闇夜の中で、煌々と白く光っていた。王妃教育を受けるために十年間通い詰めたがそれも今日で終わり。
名残惜しく感じるのはきっと、レオンさまが顔面で猫を受け止めていたからだわ。大丈夫かしら?
腕の中の仔猫がか細く一鳴きして、あわてて手を離した。仔猫は床に下りると身体をぷるぷると震わせた。少し不器用に毛繕いをはじめる。
「シャンデリアから降ってきた仔猫さん、あなた、パーティー会場にもいたでしょう?」
問いかけると仔猫は甘えるような声で鳴いた。驚かせないように手をゆっくり伸ばすと、頭をこすりつけてきた。
「か、かわいい……!」
恋い焦がれた猫が今、目の前にいる。なんて幸せなんだろう。
仔猫は頭と背中、しっぽは金色でふさふさの長い毛をしていた。お腹は白い。毛艶もよくないが、翡翠色の瞳はガラス玉のように澄んでいてきれいだった。
顎の下を指でくすぐると目を細め、ごろごろと喉を鳴らしはじめた。
「あなたが現れたから逃げられたわ。ありがとう。でも、引っ掻いたり噛みつくのはだめよ」
猫は目を開けると、長椅子の上に移動した。足を前にして伸びたあと、大きなあくびをした。
ちょっと待って! レオンさま、告白する相手を間違えてるわ。その台詞、本来は聖女に言うものです!
ゲームをプレイしていたときは感動でわーきゃーと喜んだシーンだ。目の前で見られるのはファン冥利につきる。がしかし、告白相手が自分では純粋に楽しめない……!
「今まで散々私を避けて来たのに、いきなり好きと言われても、信用できないわ」
「ジュリアだって、俺に冷たかった」
レオンが苦しそうに顔を歪め、さすがに胸が痛んだ。顔を横へ逸らす。
その時、みゃーと猫の声が天から聞こえた。
驚いて見上げるとシャンデリアの上に金色に輝く双眸があった。獣の低いうなり声が聞こえる。
「仔猫? どうしてそんなところに、わっ!」
レオンが声を発すると同時に仔猫は飛び降りた。着地場所はレオンの顔だ。しっぽまで毛を逆立てた仔猫は彼の服に噛みついたり、シャーと威嚇しながら猫パンチを炸裂させた。
「殿下! 何事ですか?」
騒ぎに気づいた護衛兵が駆け寄ってくる。
「なんでもない。来るな!」
護衛兵が来ないようにと指示を飛ばすレオンの頭に仔猫は飛びつくと、がぶりと噛みついた。
その場にいた誰もが叫び、顔を真っ青にした。
「だ、だめよ、猫さん!」
私は猫を抱きかかえた。
どうしよう。いくら猫さまと言っても、王子に傷を負わせた。不敬を働いた罪で餌抜きの刑になるかも!
私が守らなければと意を決すると「猫に代わって謝ります。ごめんなさい!」と叫んだ。
猫を抱きかかえたまま身体を翻し、扉の外へ飛び出した。階段を下りて、転がり込むように馬車に乗り込む。
「早く出して!」
馭者は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに馬車を出した。揺れる車窓から後方を見る。さすがのレオンも追って来ていないとわかり、ほっと息を吐いた。
遠くなっていく王城は闇夜の中で、煌々と白く光っていた。王妃教育を受けるために十年間通い詰めたがそれも今日で終わり。
名残惜しく感じるのはきっと、レオンさまが顔面で猫を受け止めていたからだわ。大丈夫かしら?
腕の中の仔猫がか細く一鳴きして、あわてて手を離した。仔猫は床に下りると身体をぷるぷると震わせた。少し不器用に毛繕いをはじめる。
「シャンデリアから降ってきた仔猫さん、あなた、パーティー会場にもいたでしょう?」
問いかけると仔猫は甘えるような声で鳴いた。驚かせないように手をゆっくり伸ばすと、頭をこすりつけてきた。
「か、かわいい……!」
恋い焦がれた猫が今、目の前にいる。なんて幸せなんだろう。
仔猫は頭と背中、しっぽは金色でふさふさの長い毛をしていた。お腹は白い。毛艶もよくないが、翡翠色の瞳はガラス玉のように澄んでいてきれいだった。
顎の下を指でくすぐると目を細め、ごろごろと喉を鳴らしはじめた。
「あなたが現れたから逃げられたわ。ありがとう。でも、引っ掻いたり噛みつくのはだめよ」
猫は目を開けると、長椅子の上に移動した。足を前にして伸びたあと、大きなあくびをした。
13
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
離婚と追放された悪役令嬢ですが、前世の農業知識で辺境の村を大改革!気づいた元夫が後悔の涙を流しても、隣国の王子様と幸せになります
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢リセラは、夫である王子ルドルフから突然の離婚を宣告される。理由は、異世界から現れた聖女セリーナへの愛。前世が農業大学の学生だった記憶を持つリセラは、ゲームのシナリオ通り悪役令嬢として処刑される運命を回避し、慰謝料として手に入れた辺境の荒れ地で第二の人生をスタートさせる!
前世の知識を活かした農業改革で、貧しい村はみるみる豊かに。美味しい作物と加工品は評判を呼び、やがて隣国の知的な王子アレクサンダーの目にも留まる。
「君の作る未来を、そばで見ていたい」――穏やかで誠実な彼に惹かれていくリセラ。
一方、リセラを捨てた元夫は彼女の成功を耳にし、後悔の念に駆られ始めるが……?
これは、捨てられた悪役令嬢が、農業で華麗に成り上がり、真実の愛と幸せを掴む、痛快サクセス・ラブストーリー!
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。
緋村ルナ
ファンタジー
「お前のような女は王妃にふさわしくない!」――才色兼備でありながら“冷酷な野心家”のレッテルを貼られ、無能な王太子から婚約破棄されたアメリア。国外追放の末にたどり着いたのは、痩せた土地が広がる辺境の村だった。しかし、そこで彼女が見つけた一つの奇妙な種が、運命を、そして世界を根底から覆す。
前世である農業研究員の知識を武器に、新種の果物「ヴェリーナ」を誕生させたアメリア。それは甘美な味だけでなく、世界経済を揺るがすほどの価値を秘めていた。
これは、一人の追放された令嬢が、たった一つの果実で自らの運命を切り開き、かつて自分を捨てた者たちに痛快なリベンジを果たし、やがて世界の覇権を握るまでの物語。「食」と「経済」で世界を変える、壮大な逆転ファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる