輝け五つ星ーぼくらの川下り大作戦ー

ひとりさんぽ(一人三歩)

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第5章:負けたくない!(テーマ:挑戦する勇気と、胸の中のひみつ)

「ついに始まる川下りレース」

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「よし、チェック完了!」

 アカネが腕を組んで言うと、みんなが一斉にうなずいた。

 雑貨屋の裏手、いつもの秘密基地みたいな場所で、ぼくらは最後の会議をしていた。

 ショウが持ってきた自作の設計図を、ぼくとアカネとヒナちゃんとトシオが囲む。

「この軽さと浮力のバランス、たぶん大人相手でも全然いけるよ。ちゃんと座る位置も調整したし」

「さっすがショウ!」

「……でも明日か、今日の晩ドキドキして眠れないかも」

 ヒナちゃんがポツリとつぶやいた。

「ぼくも。なんか、ずっとワクワクしててさ」

「わたしなんて、昨日の夜からそわそわしてて、上の服裏返しで着ちゃったし」

 アカネが笑うと、みんなも笑った。

 そのころ、雑貨屋の裏に続く細い道を、二人の人影がそっとのぞいていた。

「……トシオ、楽しそうにしてるなぁ……」

「ふふ、あんな顔、久しぶりに見たねぇ」

 それはトシオの父さんと母さんだった。

 ふだんは照れ隠しでイジワルばかり言ってるトシオが、いま、仲間と肩を並べて大きな声で笑ってる。

 木材の切れ端を確認したり、舟のペンキの乾きを見たり、真剣な顔で。

「よかったね……」

 小さな声が、風にまぎれて消えた。

 ぼくの家では、父さんが夕飯のときに、

「ハル、明日がんばれよ」

 って言ってくれた。

「うん!」

 おかわりのごはんが、いつもよりおいしかった。

 夜。

 布団に入ったぼくは、やっぱり眠れなくて、いつものようにタオルで囲ってゲームをこっそり始めた。

 でも、画面がちっとも進まない。

 キャラが水に落ちたり、敵にやられたり、変なとこばっかり行っちゃう。

 そのときだった。

「ハ~ル~?」

 お母さんの足音が、だんだん近づいてくる!

「ヤバいっ!」

 電源を切って、タオルを枕の下に投げて、布団をかぶる。

「……ぜんぶ終わったら、ヒナちゃんと話そう」

 ぼくはそうつぶやいて、目を閉じた。

 夏の朝の空気は、ちょっとだけ冷たくて、でも日がのぼるにつれて、じわじわと熱くなっていった。

 町内会の広報スピーカーからちょっとガビガビした声が聞こえてくる。
 
 「おはようございます! 本日は川下りレース日和です!」

 という元気な声が流れ、ぼくらは集合場所の川原へ向かった。

 そこには、色とりどりの手作りの舟がズラリと並んでいた。

「うわ……!」

 アカネが、声を上げる。

「なにこれ……全部本当に手作りなの?」

「すげえ……」

 ぼくらの舟が急に小さく見えるくらい、それぞれの舟が個性的だった。

 竹で編まれたような和風の舟。

 『川しらべクラブ』って書いてある。

 たぶん、老人会の人たちだ。

 ピカピカに塗られた木製の舟は、『まちの青年団』。

 舟の先に町のマスコットの人形がくっついてる。

『日曜DIYパパズ』っていうチームの舟は、見た目は地味だけどやたら頑丈そうで、持ち手とかもバッチリついてる。

「そしてあれが……」

 ヒナが指さしたのは、明らかにプロ感ただよう、つやつやした細長い舟。

「大学の海洋工学サークル……って書いてある」

「えっ、まじで!?」

 ぼくたちは思わず息をのんだ。

 カヌーの形が完璧すぎる。

 売り物って言われてもおかしくないぐらいキレイだ。

 その時、その大学生チームの一人が、にこにことぼくらに近づいてきた。

「やあ、きみたちも参加者? この舟、自分たちで作ったの?」

 ショウくんがうなずくと、

「すごいね。形もバランスもいいし、すごく軽そうだ」

「ありがとございます!」

 ぼくらは、ちょっと照れながらお礼を言った。

 その後ろから、別の大学生がニヤニヤしながらこっちを見た。

「でもさー、うちらに勝てるわけないし。舟も途中で沈んだりして? ま、思い出作りにはちょうどいいんじゃない?」

「おい!やめないか!」

「まぁせいぜいがんばれよ~」

 そう言って去っていくイヤミなお兄さん。

「ごめんな。ちゃんと注意しとくから」

 最初に声をかけてくれたお兄さんが謝って戻っていった。

「……!」

 アカネが、眉をぴくりとさせた。

「なにいまの!? むかつくー!」

「他の人たちはいい人だったのに……」

とヒナちゃん。

「ちょっとデリカシーないよねぇ」

とショウ。

「デリカシーってなに?」

とトシオが首をかしげる。

「ぜーったい! 優勝するんだから!!」

アカネが拳を握ると、

「おー!!!」

とぼくら全員が叫んだ。

ただ一人、トシオが

「えぇ~? だからデリカシーってなにぃ~!?」

と叫んでいたけど、それはそれで楽しくて、笑っちゃった。
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