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第7章:最後の夜に(テーマ:想いを伝える勇気と、かけがえのない時間)
「おつかれさまのバーベキュー」
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レースの翌日。
ぼくらは、アカネの家の畑のすみに集まっていた。
「おーい!火、ついたぞー!」
声の方を見るとトシオのお父さんが大きなうちわで炭をあおいでいた。
もくもくと煙が立ちのぼり、しょうゆのたれをぬられたお肉が、じゅうぅぅっとおいしい音を立てる。
「ああっ、やば!もういい匂いしてきた!!」
アカネがよだれを垂らしそうな顔で鉄板をのぞきこんでいた。
川から吹いてくる風に、赤い提灯がふわりふわりと揺れてる。
空はまだ明るくて、だけどほんのり夕方の色になりかけていて。
畑の土のにおいと、炭火の匂いと、なんだか全部が「夏」って感じだった。
「おにぎり、たくさんあるからね~!」
アカネのお母さんたちが、大きなお皿に山盛りの塩むすびをのせてきて、サラダや冷えたトマトもテーブルに並びはじめた。
ぼくら子どもたちはもう、待ちきれないって感じでざわざわしている。
そんな中、ぼくはなんとなく火のそばにいたトシオのお母さんが、ぼくのママに話してるのを聞いてしまった。
「ねえ……昨日のレースのときの……あんなに楽しそうな顔、利男がしてるの、初めて見たのよ……」
その声が、ほんの少しだけ震えていた。
ママがそっと、トシオのお母さんの肩に手を置いてうなずいていた。
なんだか胸の中がぽわっとあたたかくなった。
だけどなんだか恥ずかしくなってぼくはコンロのところまで離れた。
「ああ~、まいった。こりゃ完璧だ」
今度はショウのパパが、ビール片手に紙皿に焼けた肉をのせながら笑ってた。
「ショウ、あのカヌー。ちゃんと浮力も、帆の位置も、すばらしかったよ」
「うん……えへへ」
ショウが、ちょっと照れながらも満足げに笑ってた。
たぶん、大人たちにとっては川下りレースなんて、ただの“子どものお遊び”だったのかもしれない。
でも、こうしてお肉を焼いてくれたり、話しかけてくれたり、そんな風に見守ってくれてるのが、なんだかうれしかった。
「いっただっきまーす!!」
アカネの声で、バーベキュー大会が本格的にはじまった。
ぼくたちは皿を手に、焼けたばかりのお肉や野菜をのせていく。
トシオはいつの間にかコーンだけで山をつくってて、「おれコーン星人!」とか言って笑ってるし、ヒナちゃんはトマトに夢中だし、アカネはおにぎりと肉のミックス攻撃。
ショウは……やっぱり、バランスよく盛りつけてる。
うるさくて、たのしくて、あったかくて……。
この夏、やっぱり最高だったなって、もう何回目かわからないけどまた、そう思った。
バーベキューがひと段落したころ、誰かが「花火やろうかー!」って叫んだ。
その一声で、わあっと子どもたちが立ち上がった。
花火の袋がいくつも開かれて、手持ちのやつや、噴き出すタイプのやつがテーブルの上に並んだ。
「いくよーー!点火ぁぁっ!!」
アカネが走って火をつけると、シュバババッと火花が天に向かって飛び出していく。
「おおーっ!」
みんなの歓声が夜空に響いた。
赤、緑、金色。
光がパチパチしてるたびに、笑い声もはじける。
「うわ、めっちゃ火花とんだ!あっつぅ!」
トシオがあわてて手を引っこめて、転がるように笑った。
ぼくはちょっと離れたところにいるヒナちゃんの姿を見つけた。
小さな線香花火に火をつけて、じっと見つめている。
「……キレイだね」って、気がついたら隣に座ってた。
「うん」
ヒナちゃんが小さくうなずいて、花火のちりちりって音と、虫の鳴き声だけが夜の空気に溶けていた。
「……終わっちゃうの、やだな」
そのひとことに、ぼくはなんて言えばいいのか分からなくて、ただ「ぼくも」って言った。
そのとき、アカネの元気な声がまた響いた。
「さーーーて!!いちばん長く残せるのは誰だ対決~~!!」
「よーし、負けねぇぞー!」トシオが火ばさみをぶんぶん振りながら立ち上がる。
「ハルくんも来て!」とヒナちゃんに言われて、二人で立ち上がると、アカネから線香花火を一本ずつ渡された。
「火、つけすぎると一瞬で終わるから気をつけてよねー!」
「さっきそれでトシオの負けだったもんね」ショウが言うと、
「うっせー!やり直しだ!」ってトシオが叫んだ。
火をつけて、そっと持ち上げる。
小さな火の玉が、ちりちりと音をたてて、夜の中で光っていた。
ふいに風が吹いて、火の玉が消えそうになるけど、それでもしぶとく光ってる。
天の川が、ぼんやりと空に浮かんでいた。
土と草の匂い。
川から聞こえる水の流れる音。
線香花火のにおい。
この夜の空気、きっとずっと覚えてるんだろうな、って思った。
ぼくらは、アカネの家の畑のすみに集まっていた。
「おーい!火、ついたぞー!」
声の方を見るとトシオのお父さんが大きなうちわで炭をあおいでいた。
もくもくと煙が立ちのぼり、しょうゆのたれをぬられたお肉が、じゅうぅぅっとおいしい音を立てる。
「ああっ、やば!もういい匂いしてきた!!」
アカネがよだれを垂らしそうな顔で鉄板をのぞきこんでいた。
川から吹いてくる風に、赤い提灯がふわりふわりと揺れてる。
空はまだ明るくて、だけどほんのり夕方の色になりかけていて。
畑の土のにおいと、炭火の匂いと、なんだか全部が「夏」って感じだった。
「おにぎり、たくさんあるからね~!」
アカネのお母さんたちが、大きなお皿に山盛りの塩むすびをのせてきて、サラダや冷えたトマトもテーブルに並びはじめた。
ぼくら子どもたちはもう、待ちきれないって感じでざわざわしている。
そんな中、ぼくはなんとなく火のそばにいたトシオのお母さんが、ぼくのママに話してるのを聞いてしまった。
「ねえ……昨日のレースのときの……あんなに楽しそうな顔、利男がしてるの、初めて見たのよ……」
その声が、ほんの少しだけ震えていた。
ママがそっと、トシオのお母さんの肩に手を置いてうなずいていた。
なんだか胸の中がぽわっとあたたかくなった。
だけどなんだか恥ずかしくなってぼくはコンロのところまで離れた。
「ああ~、まいった。こりゃ完璧だ」
今度はショウのパパが、ビール片手に紙皿に焼けた肉をのせながら笑ってた。
「ショウ、あのカヌー。ちゃんと浮力も、帆の位置も、すばらしかったよ」
「うん……えへへ」
ショウが、ちょっと照れながらも満足げに笑ってた。
たぶん、大人たちにとっては川下りレースなんて、ただの“子どものお遊び”だったのかもしれない。
でも、こうしてお肉を焼いてくれたり、話しかけてくれたり、そんな風に見守ってくれてるのが、なんだかうれしかった。
「いっただっきまーす!!」
アカネの声で、バーベキュー大会が本格的にはじまった。
ぼくたちは皿を手に、焼けたばかりのお肉や野菜をのせていく。
トシオはいつの間にかコーンだけで山をつくってて、「おれコーン星人!」とか言って笑ってるし、ヒナちゃんはトマトに夢中だし、アカネはおにぎりと肉のミックス攻撃。
ショウは……やっぱり、バランスよく盛りつけてる。
うるさくて、たのしくて、あったかくて……。
この夏、やっぱり最高だったなって、もう何回目かわからないけどまた、そう思った。
バーベキューがひと段落したころ、誰かが「花火やろうかー!」って叫んだ。
その一声で、わあっと子どもたちが立ち上がった。
花火の袋がいくつも開かれて、手持ちのやつや、噴き出すタイプのやつがテーブルの上に並んだ。
「いくよーー!点火ぁぁっ!!」
アカネが走って火をつけると、シュバババッと火花が天に向かって飛び出していく。
「おおーっ!」
みんなの歓声が夜空に響いた。
赤、緑、金色。
光がパチパチしてるたびに、笑い声もはじける。
「うわ、めっちゃ火花とんだ!あっつぅ!」
トシオがあわてて手を引っこめて、転がるように笑った。
ぼくはちょっと離れたところにいるヒナちゃんの姿を見つけた。
小さな線香花火に火をつけて、じっと見つめている。
「……キレイだね」って、気がついたら隣に座ってた。
「うん」
ヒナちゃんが小さくうなずいて、花火のちりちりって音と、虫の鳴き声だけが夜の空気に溶けていた。
「……終わっちゃうの、やだな」
そのひとことに、ぼくはなんて言えばいいのか分からなくて、ただ「ぼくも」って言った。
そのとき、アカネの元気な声がまた響いた。
「さーーーて!!いちばん長く残せるのは誰だ対決~~!!」
「よーし、負けねぇぞー!」トシオが火ばさみをぶんぶん振りながら立ち上がる。
「ハルくんも来て!」とヒナちゃんに言われて、二人で立ち上がると、アカネから線香花火を一本ずつ渡された。
「火、つけすぎると一瞬で終わるから気をつけてよねー!」
「さっきそれでトシオの負けだったもんね」ショウが言うと、
「うっせー!やり直しだ!」ってトシオが叫んだ。
火をつけて、そっと持ち上げる。
小さな火の玉が、ちりちりと音をたてて、夜の中で光っていた。
ふいに風が吹いて、火の玉が消えそうになるけど、それでもしぶとく光ってる。
天の川が、ぼんやりと空に浮かんでいた。
土と草の匂い。
川から聞こえる水の流れる音。
線香花火のにおい。
この夜の空気、きっとずっと覚えてるんだろうな、って思った。
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