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エピローグ:また、はじまる
「二学期の始まり」
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二学期のはじまり。
朝の教室は、夏を背負った声でいっぱいだった。
「夏休みなにしてたぁー!?」
「海!焼けた!見てこれ、くっきりじゃない?」
「虫かごに蝉いれすぎて、お母さんにベランダ出禁にされたし」
笑い声と机の音が入り混じって、なんだか騒がしくて、でも心地いい空気。
ぼくたち四人は、後ろの席で顔を見合わせていた。
「ヒナちゃん……いたら、絶対この会話に突っ込んでたよね」
アカネがぽつりと言う。
トシオが口をとがらせる。
「くそー、これからいっぱい遊びたかったのになんで引っ越しちまったんだろなぁ……」
ショウが小さくうなずく。
「きっと、向こうの学校でも人気者だろうね……」
その時。
──カララ。
教室の扉が開いた音がして、ぼくらは思わずそちらを向いた。
「……みんな、おはよう」
一瞬、空気が止まったようだった。
「……ヒナちゃん!?」
アカネが叫ぶ。
「まって、引っ越したんじゃ……」ぼくは、声が裏返っていた。
ヒナちゃんは、少し照れくさそうに笑った。
「うん、引っ越したよ。でも、隣町だったから……校区が、同じだったの」
「だから、これからも……ずっと一緒だよ」
「なんだぁー!!」
「良かったーー!!」
一気に歓声を上げる僕達。
アカネが「あのお別れ、なんだったの!?」と詰め寄ると、ヒナちゃんがぷくっと頬を膨らませて「お母さん、わかってて内緒にしてたの! 信じらんない!」と怒っていた。
ショウがにっこり笑って、「まぁ、いいじゃん。これからも一緒にいられるんだから」って言ったとき。
ぼくの胸の中も、スッとあったかくなった気がした。
季節は、もう九月。
風に揺れる稲穂、空の雲も少しだけ秋の色。
だけど、ぼくらの中には、まだ“あの夏”が残っていた。
放課後の川べり。
ランドセルを背負ったまま、五人で並んで歩く。
「まだ暑いけどさ、夏休みってほんと、あっという間だったよね~」
アカネが空を見上げながらつぶやく。
トシオは両手を頭の後ろに回し、「オレ、今でも夢みるんだよ。あの飛んだとき。最高だったよなぁ」
ショウが横でふふっと笑って、「次は帆の改良をしたいな。記録をもっと伸ばせるように」
ヒナちゃんがそっと言った。「……わたしも、もっとみんなと思い出つくりたいな」
ぼくは、まっすぐ前を向いて言った。
「……これからも、ぼくたち五人で。いっぱい、思い出を作ろう!」
「さんせー!!」
アカネの声が跳ねた。
みんなの胸には、まだあの「五つ星ピンバッジ」がついていた。
キラキラ光っていて、ちょっと照れるけど、すごくうれしい。
「これさ、だれが何年生になっても、つけつづけよーよ!」
アカネが言えば、ヒナちゃんも「うん!ぜったい忘れたくないもん」
「卒業しても、持っとく。家宝にするわ」トシオの言葉に、全員が笑った。
──この夏、ぼくらは小さな町の川で、世界一大きな冒険をした。
風を信じて、友だちを信じて、前に進んだ。
そして、胸の中に“たいせつ”を手に入れた。
それが、きっと未来を進む力になるんだ。
遠くの空から、川の上を風が渡っていく音がした。
五人は川を見つめて、にっこり笑い合った。
「ねぇ、来年の夏も、またみんなで──」
「──うん!!」
風が吹いた。川の向こうから。
ぼくらの未来は、きっと、まっすぐつながっている。
あの時の風のように。
空には、五つ星が瞬いて見えた。
🌟 完 🌟
朝の教室は、夏を背負った声でいっぱいだった。
「夏休みなにしてたぁー!?」
「海!焼けた!見てこれ、くっきりじゃない?」
「虫かごに蝉いれすぎて、お母さんにベランダ出禁にされたし」
笑い声と机の音が入り混じって、なんだか騒がしくて、でも心地いい空気。
ぼくたち四人は、後ろの席で顔を見合わせていた。
「ヒナちゃん……いたら、絶対この会話に突っ込んでたよね」
アカネがぽつりと言う。
トシオが口をとがらせる。
「くそー、これからいっぱい遊びたかったのになんで引っ越しちまったんだろなぁ……」
ショウが小さくうなずく。
「きっと、向こうの学校でも人気者だろうね……」
その時。
──カララ。
教室の扉が開いた音がして、ぼくらは思わずそちらを向いた。
「……みんな、おはよう」
一瞬、空気が止まったようだった。
「……ヒナちゃん!?」
アカネが叫ぶ。
「まって、引っ越したんじゃ……」ぼくは、声が裏返っていた。
ヒナちゃんは、少し照れくさそうに笑った。
「うん、引っ越したよ。でも、隣町だったから……校区が、同じだったの」
「だから、これからも……ずっと一緒だよ」
「なんだぁー!!」
「良かったーー!!」
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アカネが「あのお別れ、なんだったの!?」と詰め寄ると、ヒナちゃんがぷくっと頬を膨らませて「お母さん、わかってて内緒にしてたの! 信じらんない!」と怒っていた。
ショウがにっこり笑って、「まぁ、いいじゃん。これからも一緒にいられるんだから」って言ったとき。
ぼくの胸の中も、スッとあったかくなった気がした。
季節は、もう九月。
風に揺れる稲穂、空の雲も少しだけ秋の色。
だけど、ぼくらの中には、まだ“あの夏”が残っていた。
放課後の川べり。
ランドセルを背負ったまま、五人で並んで歩く。
「まだ暑いけどさ、夏休みってほんと、あっという間だったよね~」
アカネが空を見上げながらつぶやく。
トシオは両手を頭の後ろに回し、「オレ、今でも夢みるんだよ。あの飛んだとき。最高だったよなぁ」
ショウが横でふふっと笑って、「次は帆の改良をしたいな。記録をもっと伸ばせるように」
ヒナちゃんがそっと言った。「……わたしも、もっとみんなと思い出つくりたいな」
ぼくは、まっすぐ前を向いて言った。
「……これからも、ぼくたち五人で。いっぱい、思い出を作ろう!」
「さんせー!!」
アカネの声が跳ねた。
みんなの胸には、まだあの「五つ星ピンバッジ」がついていた。
キラキラ光っていて、ちょっと照れるけど、すごくうれしい。
「これさ、だれが何年生になっても、つけつづけよーよ!」
アカネが言えば、ヒナちゃんも「うん!ぜったい忘れたくないもん」
「卒業しても、持っとく。家宝にするわ」トシオの言葉に、全員が笑った。
──この夏、ぼくらは小さな町の川で、世界一大きな冒険をした。
風を信じて、友だちを信じて、前に進んだ。
そして、胸の中に“たいせつ”を手に入れた。
それが、きっと未来を進む力になるんだ。
遠くの空から、川の上を風が渡っていく音がした。
五人は川を見つめて、にっこり笑い合った。
「ねぇ、来年の夏も、またみんなで──」
「──うん!!」
風が吹いた。川の向こうから。
ぼくらの未来は、きっと、まっすぐつながっている。
あの時の風のように。
空には、五つ星が瞬いて見えた。
🌟 完 🌟
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