異世界転移したら主夫していた。何を言っているかわからないと思うが俺にもわからない

頑張るマン

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9話 異世界転移したから幼女拾った

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 それはいつものごとく、陽が落ちる少し前にアミスが帰ってきた時だった。その日は夕食の準備に少し手間取って、俺は後回しにしていた玄関の掃除をしていた。

「ただいま!今日も順調だったわ!」
 そう言いながら大ぶりの肉塊を手に帰ってきた。めちゃくちゃいい笑顔なのに見せているのが肉塊ってシュール。
「おかえり、ちょっとご飯の準備に時間かかっちゃってね。もう少しで掃除も終わるから先にお風呂入っておいで」
「はーい!あ、待ってる間にでーぶいでー見てもいい!?」
 アミスはDVDを上手く言えません。相変わらずの舌足らずだ。
「いいよ。でもちゃんと後ろに下がってみるんだぞ?」
「わかってまーす!」
 ルンルン気分で風呂場に消えていくアミス。ほんとにわかってんのかね?どうも興奮すると段々前に行く傾向があるらしく、かじりつく勢いでDVDを見ていた時はさすがに注意した。異世界の王女勇者を俺のDVDのせいでメガネにさせるのはちょっとまずい。
「…ったくもう。俺もさっさと掃除終わらせよう」
 手に持った箒で土や埃を外に掻き出す。特に玄関はどうしても溜まるからね。毎日掃除しているから大した量は無いけど。

「よし…、これで終わりっと。……んん?」
 玄関の掃除を終え、軽く伸びをしていると、玄関口の向こうに文字通りの幼女が立っていた。
 年は…10才くらい?黒髪ぱっつんで目は少し細目。だが一番目立つのは黒のマントを付けている事だ。身長低いから思いっきり地面に付いちゃってるよ。
 しきりに周囲をキョロキョロしている。うーん、アミスの知り合いかな?ってかこんな所に幼女が一人とか危なくね?いや、ここまで来ているならそれなりに強いという事か?
 アミスは風呂に入ってるし、どうしようかなぁ…と思ったが、やはりそこは年長者として保護しないとダメだろう、という事で声を掛ける事にした。怖いから玄関から顔を出すだけにするけどね。

「あのー…」
 俺の言葉に幼女がぴくっと反応した。こちらを向く。顔を見ると、細目がくわっと見開かれている。まぁたぶん幼女からしたら岩から顔だけ見えてる状態だもんな。完全に化け物じゃん。

「君はこんなところに一人でいて大丈夫?お父さんかお母さんはいないの?」
「……ここに女が来なかったか」
 …隊長、会話が成立しておりません。でもこんな事で現代社会で鍛え上げられた俺のメンタルは折れません!
「もう陽も落ちるし危ないよ?お家には帰れるの?」
「……ここに女が来なかったか、と聞いている」
…隊長!会話が成立しておりません!もう僕のメンタルはボロボロです!幼女に平坦な声で無視されるのは、オッサンに罵倒されるよりも遥かにキツイという事に気付きました!
「アミスの事?アミスならうちにいるけど…」
「…アミスがいるのか?」
 幼女の問いに頷く。やっぱり名前を知ってるから知り合いなんだろう。クール系幼女に気後れしたわけではない決して無い。

「今は風呂に入ってるけどどうする?中で待つ?」
「…中?どういう事だ?なぜ貴様は首だけ出ているのだ?」
 ちょ、質問多い多い。ってかナチュラルに貴様呼びとか辛い。最近の幼女こわい。

「ん、ちょっと待ってね。今入れるようにするわ」
 そう言って幼女を承認したいと頭の中で考える。
『エキナ・フォン・グリムルドールを承認しますか? Y/N』
 おっ、出てきたな。ってかまたフォン付いているし。なに?この世界ってフォン多くね?また勇者とかじゃないだろうな。でもここまで来ているとなったらかなりの高位者である可能性が高い?

「エキナって言うんだね。可愛い名前だな」
「……」
 精一杯の笑顔でそう言ったが、思いっきり無視された。というか先程よりも視線にキツさが増した気がする。俺、不審者じゃないです…。営業スマイルを顔に貼り付けたまま承認ボタンを押す。今この笑顔をやめたら絶望の表情になってしまいそうだ。

「どう?見えた?」
「これは…一体……」
 うへへ、幼女が驚いてやがるぜ。ここまで俺を無視した報いだな!年長者に対してあんな態度を取るからだぞぉ!俺はちゃんと悪い事には悪いと叱れる大人です!
「まぁまぁとりあえず中に入りなよ。俺はちょっとエキナちゃんの着替える服探してくるから玄関で待っててね」
 俺の言葉が聞こえているのかいないのか、呆然としたままのエキナちゃんだったが、そのうち入ってくるだろうと放っておいた。早くしないとアミスも風呂からあがってくるだろうしね。ご飯の準備も急がないと。

 急いで部屋に戻ってタンスを漁る。エキナちゃんのサイズに合う服か…。下は俺の短パンでいいか。夏用のオシャレステテコにして、上はどうする?無難にTシャツでいいか。丈があまりにも余りそうなら裾を少しくくってやればいいか。うん、そうしよう。…胸は無さそうだったし。
 失礼な事を考えながら急いで玄関に戻ると、そこには風呂上りのアミスとエキナちゃんがいた。
「あれ?アミスもうお風呂あがったの?いつもより早かったね」
「タツ…、どうしてここにエキナがいるの?」
 俺の言葉に振り向かずに言葉を返すアミス。
「…あれ?知り合いじゃないの?外でアミス探しているっぽかったから家に上げたけど」
「そうなんだ」
 じっと互いを見つめるアミスとエキナちゃん。どちらも視線が怖い。知り合いじゃないの?知り合いだよね?俺、またなんかやっちゃいました?使い方違うか。

「……ふぅ、わかったわ。エキナ、後で少しお話をしましょう。タツ、今日はエキナも私と一緒に泊まるんだって」
 そう言いながらスタスタとリビングに歩いていってしまったアミス。エキナちゃんは未だ何も言わず、リビングに消えていくアミスをじっと睨んでいる。こわい。
 とはいっても早く着替えてもらわないと。ご飯がいつまで経っても出せなくなる。
 ……あ!鍋を火にかけたままなの忘れてた!やべぇ!

「エキナちゃんこれ着替え!さっきアミスが出てきたところで着替えれるから!俺はご飯の用意があるから着替えたら奥のリビングに!」
 慌ててエキナちゃんに服一式を渡してリビングに走る。弱火でコトコトだから火事の心配はないけど早くしないと焦げるかも!


◆◇◆◇

 食事の用意をしている間、アミスはいつものようにDVDを見ていたがとても静かだった。やっぱりエキナちゃんの事が気になるのかな?心ここにあらずといった感じだ。
 食事の用意が終わるころ、やっとエキナちゃんがリビングに姿を現した。

「おぉーっ、よく似合っててかわいいじゃん。でもやっぱりちょっと丈が長いかな?」
 オシャレステテコはゴムが入っているから問題ないとして、Tシャツはやはりかなり丈が長い。膝上くらいまで来てるからちょっと歩きにくいかも。
 それと、長い黒髪はご飯の時に邪魔になるかもな。なんか髪の毛をまとめるものあったっけ?独身男の家にシュシュなんてものは当然無いから…。

「さぁさぁエキナちゃんも座って座って。お腹減ってるでしょ?今日はクリームシチューを作ってみたよ。急遽3人分になったから足らない時はご飯と他のおかずで誤魔化してください」
 クリームシチューは大鍋で十分な量を作ったけど、アミスの食欲を考えると足りるか微妙なラインだ。作りだめしておいた和食系のおかずなどを一緒に出す。洋と和が混在する食卓になったが気にしない。

 まだエキナちゃんは警戒心を露わにしているが、それを全く気にする事無く席につくアミス。一瞥もくれない。二人は仲が悪いの?仲良くしようよー。

「うーん、ちょっとエキナちゃんの髪が長いから食べにくいかも。ちょっと待っててね」
 何かなかったかなーと考えながらタンスを開ける。無いなぁ、どうするかなぁ、最悪タオルを頭に巻く?いやさすがにそれはダッサイしなぁ…。などと思いながら順にタンスを開けていると、ちょうどいいものを見つけた。

 リビングに戻ると二人は横並びに席に着いていた。ただし会話が全く無く、視線すら合わない。やっぱり仲悪いのか。せっかくだから楽しく食事したいんだけど。
「エキナちゃん、そのまま動かないでね。ちょっと髪触るけどごめんね」
 エキナちゃんの後ろに回り、髪を両手で優しく持とうとすると
「さわるな!」
「いって」
 バシィッ!っとエキナちゃんの右手を叩かれた。手に持っていたバンダナが下に落ちる。え、幼女にさわるなって言われた。叩かれた痛みよりもはるかにそっちの方がつらい。めちゃくちゃつらい。
 エキナちゃんの顔を窺うように見ると、なぜかめちゃくちゃ驚いていらっしゃる。え、それはどういった感情?叩いてしまって!ってこと?本心じゃないってこと?

「そのままだと食べにくいでしょ。せっかくの髪に付いちゃうかもしれないし。大丈夫、髪を後ろでまとめるだけだから」
 そう言って笑顔で努める事にする。なんで俺はこんなに必死に幼女に言っているんだ?完全に事案な件について。

 もうなんだか面倒になってきて固まったままのエキナちゃんを無理やり前を向かせて頭にバンダナを巻いてしまう。安物のバンダナだけど、元の素材がいいから可愛いね。これで短パンにスニーカーでも履いてたらそのままピクニックにでも行きそうな勢いだ。

「さぁさぁ食べよう!冷めちゃうからね!ちょっとだけ焦げた部分が入ってるかもだけどごめんね?」
 エキナちゃんは未だに固まったままだったが、もう時間もかなり過ぎてしまっていたから強引に食事を始める事にする。アミスは我関せずでもうとっくにスプーンを持っていたからね。早く食わせろの圧が凄かった。

「うん!今日もとっても美味しいわ!」
 食事が始まってしまったら、いつものアミスに戻ったようだった。隣に座っているエキナちゃんを認識していないとでも言わんばかりに俺にしか話しかけないのが気になったけど。

「エキナちゃんも食べてみて…?」
 しばらく固まったままだったエキナちゃんに声を掛ける。早くしないと冷めてしまうし、どうせ作ったんなら美味しく食べてほしい。アミスとエキナちゃんの間にどんな事情があるかは知らないけど、少なくとも俺はエキナちゃんに楽しくご飯を食べて欲しいから。
「……」
 おもむろにスプーンを持ってクリームシチューを見るエキナちゃん。最近アミスは俺が作った料理を見ても、美味しい!ばかり言うので似たような料理があるのかどうかわからないんだよね。まぁ美味しく食べてくれるならなんだっていいが。

「俺の世界では子供が好きな料理だよ。パンに付けて食べても美味しいし、人によるけど俺はご飯にかけて食べるのも好きだよ」
 そう言ってシチューをすくって口に入れる。うん、シチュールーを使っているから大崩れはしないわな。他にも臭みを取った肉を入れたりしているから味に深みも出てるし美味しい。

「……」
 エキナちゃんはやっと意識を取り戻したのか、俺が食べる動作をじっと見つめていたが、おもむろにシチューを掬い、口に入れた。

「……ぉぃしぃ…」
 ヨッシャァ!幼女のおいしいゲットだぜ!思わずガッツポーズしちゃったわ。横に座っていたアミスは一瞬だけちらり、とエキナを見たがすぐに自分の食事に戻った。うーん、かなり根深いものがありますなぁ。アミスも幼女相手にそんな態度取っちゃいかんよ?あんまりひどかったら注意したほうがいいんだろうか?

 ぎこちない空気間だったが、それでも食事は恙なく終わった。エキナちゃんがアミスと同じくらい食べたのは衝撃的だったが。あの身体のどこに消えていってるんだ?クリームシチューはかなりお気に入りだったようで、なんとアミスよりも1回多い5回おかわりをした!
 恥ずかしそうにしながら頬を赤くしておかわりを所望するエキナちゃんを見て、あぁ…これが萌えかと思った俺だった。
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