美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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案内

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 執務室で色々説明を受けて昼からは騎士団の寮内を案内するということで、私は一度部屋に戻ってきた。
 最初に貸してもらったこの部屋は特に普段使うことも無いからと、そのまま使わせてもらうことになった。
 貰ったパンを食べながら先程の出来事を思い出す。
 まさか一妻多夫制だけじゃなくて美醜の考え方も違うなんて……。
 ざっくり聞いた話と私の推測によると、この世界では女性の存在が少ない為女性に近い丸みのある体つきがモテる。逆に筋肉質だったり背が高いのは怖い、乱暴だと言われている。
 黒騎士団は実力主義の為、平民出身でそのようなあまり好まれない見目の人が多いようで、例のぽっちゃりさんがいる赤騎士団というのは貴族中心の(この世界の)イケメンが多いんだとか。
 つまり貴族のほうがお金があって沢山食べれるから太れる、モテる?……うーん、なんか分かったような分からないような……。
 この世界は要素が多すぎて頭がパンクしそうになる。誰だ、こんなめちゃくちゃ設定を考えたのは。
 ここで、コンコンとノックが聞こえてきて慌てて戸を開ける。

「そろそろ行こっか」
「はい!お願いします」

 ハインツさんは団長なので忙しいらしく、リュークさんとミスカさんの二人に案内してもらう。歩きながらリュークさんが私のほうへ振り返った。

「サキ、あのね、さっきここに居たいって言ってくれて……嬉しかった。ありがとう」

 そう言って彼は「えへへ」と、はにかむ。
 そんな風に言ってもらえるなんて驚いたけど、私も嬉しくなって口角が上がる。
 初めてリュークさんを見た時は金髪の印象が強くてチャラそう……なんて思ってしまったけど全然そんなこと無くて、とても明るくて可愛い人だった。

「お礼を言うのは私のほうです!急なことなのに受け入れてくださって……。本当にありがとうございます」
「そんな堅苦しくなくていいよ!俺も二十歳で同い年だし」
「そう……かな、じゃあよろしくね!」

 見て周りながら二人の説明を聞く。

「ここは一応風呂だよ。湯船はここしかないんだ……サキの部屋にもあれば良かったんだけど、ごめんね」
「ううん、充分だよ」
「トイレはそれぞれの階にある。君は部屋がある三階のを使ってくれ」
「わかりました」

 漏れそうになっても三階までダッシュしなくちゃな……とか思ってしまった。男性と同じところは使えないのだから仕方ないけれど。

「あそこは訓練場。こっちは東で南にもう一個ある」

 遠目からだが今も何人かが訓練に励んでいるのが見える。石の階段が数段ありその下が砂のグラウンドになっていて、剣や弓などやっている事は違うけど放課後の部活動のようで、なんだか学生時代を思い出す風景だった。

 黒騎士団の敷地は想像以上に広かった。
 建物は団員たちの寮になっている北館と、私の部屋や団長のハインツさんの執務室、その他会議室などもある西館。訓練場が東と南にあり、主にこの四つの区画に別れているそうだ。

「それで……ここが食堂だ」

 西館の一階にあるここは木製の長テーブルと椅子が何組か置かれている結構広々とした空間で、奥にあるカウンターの向こうがキッチンになっていた。

「さっきも話をしていたが……食事を用意してもらいたい。本来女性がすることではないから無理はしなくていいが」

 やはり男性が圧倒的に多いので、家事などは夫となる人がやるのが当たり前らしい。
 先程もハインツさんに何もしなくていいと言われたが、さすがになんの対価も無しに居座ることは出来ない。
 現在人手不足で皆忙しく、料理は当番制だったが作ったり作れなかったりで困っているとのことだったので、なんとか頼み込み私が食事担当として任されることになった。

「大丈夫です!私、料理得意なんです!」

 料理は楽しくて好きだし、一人暮らしの中でも自炊は積極的にするほうだった。
 最初私が料理をすると言った時三人とも有り得ないという顔をしたが、いや、今も若干しているが異世界から来たということでようやく納得したらしい。

 案内が終わる頃には外は夕日でうっすらオレンジがかっていた。今日は部屋まで送ってもらって、明日から料理をすることにした。
 私が言い出したことだけれど、実際ここの様子を見て周って自分が住むんだと考えると不思議な感じがした。初めて来たホテルに泊まる時と同じ感覚だろうか。
 何はともあれ衣食住が得られたので良かった。喜びと安心感でベッドに倒れ込む。
 天井を見つめながら一つ心配なことを思い出す。その日夕食にと貰ったものは加工肉の缶詰とパン。
 野菜は……?
 騎士団の皆さんは今までこれで済ませてきたのだろうか……栄養素が不安すぎる。
 明日の献立をどうしたものかと悩みながら、私はまた眠りについた。
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