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雪の日
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いつもと違う訓練場の真っ白な景色。
この世界に来て初めて雪の日がやって来た。
「結構積もってる!」
一掬いすればふわふわの雪が手に乗るくらい。
「昨日の雨、夜の間に雪になってたんですね」
「明日には溶けているだろうが、今日も休みだな」
ヴェルくんとミスカさんはため息を吐いていて、彼らにとっては嫌な事だと分かっていても、私はどうしても嬉しく思ってしまった。
私の住んでいたところでは雪なんて滅多に降らないし、こんなに積もっているのは初めて体験する。
「あ、あの……」
「サキ、寒いから中に入ろう」
ミスカさんに手を取られるが、私は逆に引っ張ってしまう。
「ミスカさん……私、雪で遊びたい……」
「え」
「ちょっとだけなので!すぐ戻りますから!」
そう頼み込むと、彼は怪訝そうな顔をしながら「少しだけだぞ」と許可してくれた。
「雪で遊ぶって……どういうことでしょうか」
「何だろうな」
二人が見守る中、私は雪を丸めてそれを転がしていく。私以外誰も居ないのでコロコロし放題だ。
出来た!雪だるま!
しかし白い玉二つだと何か違う気がして、葉っぱと木の実と枝を付けてみた。
結構可愛くない?どうかな?
せっかくなので見て欲しくて、二人に手を振って来てもらう。
「なんだ?これは」
「雪だるまです!」
「もしかして顔と腕ですか?」
「そう!可愛いでしょ」
自信満々でふふんとする私に、二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「ああ、とても可愛い」
「可愛いですね。僕も作っていいですか?」
「うん!いっぱい作ろ!」
彼らに作り方を教えてコロコロして、三人で六つの雪だるまを作った。
「これはミスカさん、一番背が高いから!」
「じゃあ小さいのはサキだな」
「僕はその次ですね」
こうして並べて見るとなかなか壮観だ。それぞれの少し歪な形にどこか愛着を覚える。
あ!雪と言えばそういえば……。
もう一つ、やりたいことがあったのだ。
私は彼らから少し離れて雪玉を作る。
「ヴェルくん!」
彼に向かってポイッと投げた。足元に当たり砕ける。
「ヴェルくんも投げてー!」
「え!?サキさんに当てるなんて出来ませんよ!」
「大丈夫だよ!ミスカさんも!」
困ったように笑った二人は私に軽く雪玉を投げてくる。
「二人とも当たりに行ってない?」
「そんなことない。もっと投げていいぞ」
「もう、顔に当てちゃいますよ!」
そんなことをして遊んでいると、団員の皆も様子に気づいたようでこちらに集まってくる。
「サキさんたち何してるんですか?」
「雪合戦です!一緒にやりませんか?」
順に誘っているうち、どんどん人数は増えていって雪合戦は壮絶なバトルとなっていた。
雪玉ってあんなに速く投げれるものなの……?
目の前を飛び交う白い物体を何とか目視しながら、私も追いつかなければと気合を入れる。
「えいっ……!」
若干弱々しく飛んで行った私の雪玉も団員さんに当てることが出来た。
「やったー!」
「や、ヤバい。サキさんの雪玉を貰ってしまった」
「おま……ずるいぞ!」
「俺も当ててもらいたい」
なんだか私の的中率が高くなっている気がする。皆こっちには投げてくれないのに……。
「先輩方……そんなに当たりたいなら僕が当ててあげますよ……」
「待って、ヴェルストリアが怖い」
「あっ、顔に!!」
ヴェルくんも凄く楽しんでくれているみたい。
あっという間に時間は過ぎ、足元の雪はほとんど無くなってしまった。
「サキ、そろそろ戻るぞ」
「はーい……」
だいぶ長居してしまって手も悴んで感覚が鈍くなっている。
「楽しかったな!雪の日も良いもんだ」
「結構運動にもなった気がする」
「サキさん、ありがとうー!」
「はい!また積もったら遊びましょう!」
三人で部屋に戻り暖炉の前で暖まる。
「はしゃいでしまった僕もですけど…遊び過ぎは良くないですね」
「うん、ごめんね」
ヴェルくんと、お互いの冷たい手を重ねて温もりを取り戻す。
ミスカさんは私の肩に毛布を掛けながら、窓の外に目を向けた。
「あの雪だるまも明日には溶けてしまうな」
「……はい」
避けて階段に並べて置いた彼らの寿命は短い。
「雪は一日だけだから楽しいんですよね。もっと続いたら大変だし」
「ああ、だがこんな日もたまには悪くない」
今冬で雪が降ったのはこの日が最初で最後だったのだけれど、より思い出として深く記憶に残ったのだった。
この世界に来て初めて雪の日がやって来た。
「結構積もってる!」
一掬いすればふわふわの雪が手に乗るくらい。
「昨日の雨、夜の間に雪になってたんですね」
「明日には溶けているだろうが、今日も休みだな」
ヴェルくんとミスカさんはため息を吐いていて、彼らにとっては嫌な事だと分かっていても、私はどうしても嬉しく思ってしまった。
私の住んでいたところでは雪なんて滅多に降らないし、こんなに積もっているのは初めて体験する。
「あ、あの……」
「サキ、寒いから中に入ろう」
ミスカさんに手を取られるが、私は逆に引っ張ってしまう。
「ミスカさん……私、雪で遊びたい……」
「え」
「ちょっとだけなので!すぐ戻りますから!」
そう頼み込むと、彼は怪訝そうな顔をしながら「少しだけだぞ」と許可してくれた。
「雪で遊ぶって……どういうことでしょうか」
「何だろうな」
二人が見守る中、私は雪を丸めてそれを転がしていく。私以外誰も居ないのでコロコロし放題だ。
出来た!雪だるま!
しかし白い玉二つだと何か違う気がして、葉っぱと木の実と枝を付けてみた。
結構可愛くない?どうかな?
せっかくなので見て欲しくて、二人に手を振って来てもらう。
「なんだ?これは」
「雪だるまです!」
「もしかして顔と腕ですか?」
「そう!可愛いでしょ」
自信満々でふふんとする私に、二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「ああ、とても可愛い」
「可愛いですね。僕も作っていいですか?」
「うん!いっぱい作ろ!」
彼らに作り方を教えてコロコロして、三人で六つの雪だるまを作った。
「これはミスカさん、一番背が高いから!」
「じゃあ小さいのはサキだな」
「僕はその次ですね」
こうして並べて見るとなかなか壮観だ。それぞれの少し歪な形にどこか愛着を覚える。
あ!雪と言えばそういえば……。
もう一つ、やりたいことがあったのだ。
私は彼らから少し離れて雪玉を作る。
「ヴェルくん!」
彼に向かってポイッと投げた。足元に当たり砕ける。
「ヴェルくんも投げてー!」
「え!?サキさんに当てるなんて出来ませんよ!」
「大丈夫だよ!ミスカさんも!」
困ったように笑った二人は私に軽く雪玉を投げてくる。
「二人とも当たりに行ってない?」
「そんなことない。もっと投げていいぞ」
「もう、顔に当てちゃいますよ!」
そんなことをして遊んでいると、団員の皆も様子に気づいたようでこちらに集まってくる。
「サキさんたち何してるんですか?」
「雪合戦です!一緒にやりませんか?」
順に誘っているうち、どんどん人数は増えていって雪合戦は壮絶なバトルとなっていた。
雪玉ってあんなに速く投げれるものなの……?
目の前を飛び交う白い物体を何とか目視しながら、私も追いつかなければと気合を入れる。
「えいっ……!」
若干弱々しく飛んで行った私の雪玉も団員さんに当てることが出来た。
「やったー!」
「や、ヤバい。サキさんの雪玉を貰ってしまった」
「おま……ずるいぞ!」
「俺も当ててもらいたい」
なんだか私の的中率が高くなっている気がする。皆こっちには投げてくれないのに……。
「先輩方……そんなに当たりたいなら僕が当ててあげますよ……」
「待って、ヴェルストリアが怖い」
「あっ、顔に!!」
ヴェルくんも凄く楽しんでくれているみたい。
あっという間に時間は過ぎ、足元の雪はほとんど無くなってしまった。
「サキ、そろそろ戻るぞ」
「はーい……」
だいぶ長居してしまって手も悴んで感覚が鈍くなっている。
「楽しかったな!雪の日も良いもんだ」
「結構運動にもなった気がする」
「サキさん、ありがとうー!」
「はい!また積もったら遊びましょう!」
三人で部屋に戻り暖炉の前で暖まる。
「はしゃいでしまった僕もですけど…遊び過ぎは良くないですね」
「うん、ごめんね」
ヴェルくんと、お互いの冷たい手を重ねて温もりを取り戻す。
ミスカさんは私の肩に毛布を掛けながら、窓の外に目を向けた。
「あの雪だるまも明日には溶けてしまうな」
「……はい」
避けて階段に並べて置いた彼らの寿命は短い。
「雪は一日だけだから楽しいんですよね。もっと続いたら大変だし」
「ああ、だがこんな日もたまには悪くない」
今冬で雪が降ったのはこの日が最初で最後だったのだけれど、より思い出として深く記憶に残ったのだった。
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