美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

文字の大きさ
142 / 209

仕事復帰

しおりを挟む
 ようやく体力も回復し、仕事に戻ることが出来た。私が居ない時でも団員の皆が料理や掃除も交代でこなしてくれるけれど、やっぱり私も黒騎士団の役に立ちたいのだ。
 でも……これからは妊娠や育児があるから、仕事はだいぶ出来なくなっちゃうよね。
 朝、キッチンに立ちながらぼーっとしてしまっていた私に、ヴェルくんが心配そうに声をかける。

「サキさん、何か考え事でもありましたか?」
「えっとね、これからは色々あるからお仕事が長い期間出来なくなるでしょ?私も自分のことで精一杯になっちゃうから」
「それは当たり前です!サキさんの体が一番なんですから、仕事のことは気にしないでください」
「うん!ちゃんと気をつけるよ。出来る時に出来るとこまで頑張ろうと思って」

 そう言うと、彼はホッとした様子で頷いてくれた。
 そんな話をして朝食も出来上がり、ヴェルくんと夫たちも揃って美味しく頂いた。
 皆を見送ったところで、ヨルアノくんが走って食堂にやって来た。
 私の姿を見つけて慌てたように駆けてくる。

「サキさん!」
「ヨルアノくん、久しぶり!」
「お、お久しぶりです……」

 少し息を整えた彼は顔を上げる。

「サキさんずっと休んどりましたけど、大丈夫でしたか……?なんや大きい病気とか……」
「ううん!ちょっと体調が悪かっただけで、ほとんど元気だったんだけど……夫たちが心配してくれて」
「それなら良かったです……。ちょっと前までヴェルストリアも隊長も本当に切羽詰まった顔しとって……誰も話しかけれんかって……」

 そうだったんだ……。
 ずっと私の事を気にかけながらも仕事はしなくちゃいけなくて、きっと何度も何度も様子を見に来てくれていたんだ。
 申し訳ない気持ちもあるけれど、それ程までに彼らに想われて愛されているのがやっぱり嬉しかった。

「絶対サキさんになんかあったって思って……もう……」
「ヨルアノくん……」

 しゃがみこんで大きく息を吐いた彼も、相当私を心配してくれていたのだろう。

「ありがとう……。あの……実はね、二日くらい意識が無かったみたいなの」
「えっ……」
「今は本当に何ともないんだけど、それで……流石にお仕事には来れなくて」

 正直に事実を言うのは余計な事だと分かっていたが、ここまで心配してくれるのに誤魔化して話すのがどうにも辛かった。

「夫たちには言わないでね、多分怒られちゃうから」
「はい……。良かった……いうんは違いますけど……また起こらんといいですね……」
「うん……でも、もう大丈夫って思うんだ」

 あの夢を見て私はまた前を向けた。大切なきっかけの一つだったと思うから。
 この指輪が……向こうの世界と私を繋いでくれている気がする。これまでの出来事や行動が全て繋がって今があるのだと実感した。

「ヨルアノくん、ご飯食べる?まだギリギリ残ってるよ」
「……はい!間に合って良かったー、朝ごはん抜きはキツいですから」
「そうだよね、ご飯無い時はどうしてるの?」
「缶詰ばっかです!」
「やっぱり野菜が無いなぁ……」

 団員たちが料理を頑張ってくれることを願って、寮で過ごす一日が始まった。


「サキさん、体調とか大丈夫でしたか……?」
「はい!ご心配おかけしました」

 すれ違う皆に声をかけてもらって、やっぱりこの温かい場所に居たいと強く思う。
 掃除も終えたところで、しばらく行けなかった裏庭の様子が心配で早歩きで向かう。
 しかし以前と変わらず、花壇は綺麗に整えられた状態だった。

「あ、この花咲き始めてる!」

 この一週間の間にちょうど目に見える成長をしていたようだ。
 お花育て始めたのも私なのに……お世話出来なくなっちゃうなぁ……。

「サキ」
「ミスカさん!」

 休憩中に会いに来てくれた彼と手を繋ぐ。

「今咲き始めだから来週には満開になると思う」
「ミスカさんがお世話してくださったんですか?」
「ああ。他のやつにやらせたらすぐ枯らしそうだから」

 そんなことは無いと思うけど……お花のこと知らないと大変だよね。

「これからもサキが居ない時は代わりにやるから、任せてくれ」
「ありがとうございます……!」

 でも、そうなると迷惑かな……。

「あの……ミスカさん」
「どうした」
「お家の方もお花植えたいなって思ったんですけど……」

 全部ミスカさんにやらせるのは何だか申し訳ない。
 私の気持ちが分かったのか、彼は「気にしなくていい」と微笑んだ。

「花は育てるのも楽しいが、見て楽しむものだ。サキが大変な時も少しは精神的に役に立つだろう」
「ミスカさん……」

 優しい彼の好意に甘えることにし、私もそれまでは一緒にお世話をすると言った。

「それで……」

 私は少しモジモジしながら彼を見る。

「実は買って欲しいものがあるんですけど……」
「!」

 私からの初めての要求に、ミスカさんは平静を装いながらも前のめりに聞いてきた。

「何が欲しいんだ?」
「誕生日にくれた……このジョウロはここで使いたいから自宅用のが別で欲しいんです」

 毎回持ってくるのも大変だと思うし、思い出になるものが増えたら嬉しいから。

「ああ、新しいのを買おう。他の道具も揃えたら良い」
「ありがとうございます!」
「せっかくなら一緒に見に行って決めるか?」
「行きたいです!」

 彼は心底嬉しかったようで頭を凄い撫でてくれる。私もちゃっかりデートの予定を取り付けることが出来て内心凄いはしゃいでいた。

 夕食も張り切って作り団員たちの笑顔に喜んだ後、家に帰ってからそのデートについて話していた。
 リビングの定位置……ミスカさんの上に座り、ちょうどラグトさんがやって来て話に加わる。

「え、サキちゃんと先輩町に行くの?俺も行きたい!」
「ラグト……」
「良いですね!また三人でお出かけしたいです!」
「……」

 エマさんに会いに行った時はちょっと気持ち的にあれだったから……今度はいっぱいはしゃごう!

「ミスカさん、楽しみですね!」
「……ああ」
「ちなみにどこ行くの?」

 ……どこだろう?
 後ろに居る彼を見る。

「前と同じ店で良ければサロディーアにある。他の道具も大体は揃うはずだ」
「じゃあそこに行きましょう!」
「俺サロディーア久しぶりだなぁ、楽しみ!」

 ワクワクした様子のラグトさんに笑顔で頷く。

「いい町ですよね!一部を除いて」
「一部を除いてな」
「……え、何を除いてるんすか」
「どこにでも変な奴は居るってことだ」

 そうそう、どこに行っても声をかけられる。
 リュークとミスカさんと行った時も帰りに二人くらいから……あっ、でも……。

「ラグトさんとデートした時は声かけられなかった……」
「そうなのか?」
「確かにそうだったね」

 これはもしかして……!

「やっぱりイチャイチャが大事なんですね!」
「「!?」」
「……どうしてそうなった、サキ。……いや、言い出したのは俺たちだが」
「ラグトさんと一緒の時が一番イチャイチャしてた気がします!」

 ハイテンションでラグトさんにベタベタくっついてたから。

「え!嬉しい……あ、先輩……目が怖い……」
「サキ、イチャイチャしよう」
「はい!……え、あれ、今ですか?」
「今もだ」

 抱えられてしまったのでお話は中断になり、私はラグトさんに手を振る。

「おやすみなさい」
「おやすみー」

 部屋に二人きりで、寝るまでいっぱいイチャイチャした。
しおりを挟む
感想 66

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

処理中です...