美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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一歳のお誕生日

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「ユウお誕生日おめでとうー!」
「おめでとう!!」

 今日はユウが生まれて一年。記念すべき初めての誕生日だ。
 夜、皆早めに帰宅してくれて無事全員で集まることができた。
 夕食もいつもより豪華に私たちはグリルチキン、ユウもお肉と大好きなコーンスープにした。
 手掴みやスプーンで自分で食べさせているけれどまだ上手では無い。

「スープはスプーンで食べるんだよ。ここをおててで持って」

 ヴェルくんがスープまみれになったユウの手を拭きスプーンを渡す。
 しかしスプーンは役割を全うすることなく床に落ちた。すかさずラグトさんが新しいのを持ってきてユウに握らせる。

「皆対応が素早くなりましたね」
「これは経験が必要なことだから、これからも臨機応変に対応していかないと」

 そう言って頷いたハインツさんも、ヴェルくんの補助に回った。
 二歳三歳、幼児になったらまた新しい問題も出てくるもんね。それも楽しみではあるけれど。
 ご飯を綺麗に完食したところで私はキッチンへ行き、メインのものを取り出した。

「ユウにケーキ作ったの!」
「おぉー!サキ凄い!美味しそう!」
「リュークは焼き菓子食べてね」

 勿論、赤ちゃんでも食べられるもので作ったなんちゃってケーキだ。見た目はそっくり。

「気に入ってくれるといいけど……」
「サキさんが作ったものなら大丈夫ですよ」
「それはあんまり根拠ないと思う……」

 赤ちゃんは気まぐれだから、気分じゃない時はしょうがない。
 私はケーキをスプーンで取り、そっと食べさせてみる。

「食べてくれた!」
「良かったー!」

 目を輝かせたリュークを顔を見合わせ喜ぶ。

「んま」

 ユウはモチモチのほっぺを動かし、モグモグしている。

「今うまいって言った?」

 ラグトさんの声で皆静かになりユウを一斉に見て、私がコソッと聞く。

「……ユウ、ケーキ美味しい?」
「うま」
「言った!!」
「そうか、美味いか」

 リュークがミスカさんの肩を叩き、彼はそれをあしらいながらユウの頭を撫でて笑顔になる。

「私が食べさせてもいいか?」
「はい!お願いします」

 ハインツさんがソワソワした様子でスプーンを持つ。ユウはすでに口を開けて待っていた。
 パクッと食べて、嬉しそうにテーブルを手で叩く。

「なんて可愛いんでしょう……!第二の天使……」

 ヴェルくんがうっとりしてる。

「第一は誰なの?」
「勿論サキさんですよ」
「あ、ありがとう……」

 照れ照れしている私とヴェルくんでキスが始まりそうになって止められた。
 一人分の小さなケーキはあっという間に無くなり、ユウは自分でお茶を飲んでいる。

「もうちょっと大きくても良かったかな」
「食べ過ぎも良くないんじゃないか?」
「そうですね、お砂糖も入ってますし」

 ミスカさんは布巾でクリームの付いたユウの口元を拭く。

「や!」
「拭かないと遊べないぞ」

 何とか綺麗になって椅子から降ろされたユウは、テクテク歩いてリビングに行ってしまった。

「ああっ、ちょっと待って!テーブルの上片付けるから!」

 慌てて追いかけたリュークに、ユウは鬼ごっこだと思ったのか楽しそうにあちこち歩き回る。

「ユウもあんなに歩けるようになって……。子供の成長は早いな」
「この一年が一番大きく成長する時ですもんね」

 しみじみと呟くハインツさんと見守っていると、ユウが彼の脚にしがみつく。

「とうしゃ」
「ユウ、父さんと遊ぼう。何が良いかな」
「ちゃんちゃ」
「ちゃんちゃ……?」

 言葉の意味を真剣に考えこむハインツさんにラグトさんが教える。

「新しく出した音の鳴るおもちゃだと思うっすよ。今日ずっとそれで遊んでたんで」
「ああ、あれか。ようやく気に入ってくれたんだな」
「最初見向きもしなかったっすよね……」

 小さい体を両手で持ち上げ、ハインツさんはラグトさんとおもちゃを取りに二階へ上がって行った。

「団長、仕事中にユウに会えないってずっと嘆いてるんだ」
「……ちゃんとお仕事は出来てますか?」
「手だけは真面目に動いているな」

 ……それならいっか。
 ミスカさんからの情報によっては注意しないといけない。まあそんなことないのは分かってるんだけどね。
 会えない時間が長い分、会える時に沢山遊んであげたいのだろう。

「かあしゃー、ちゃんちゃ!」
「ユウ、お父さんと一緒嬉しいね。お座りできる部屋で遊んでくる?」
「やー」

 こちらに手を伸ばし私の服を掴もうとする不安定なユウをハインツさんがしっかり支える。

「サキと一緒に居たいんじゃないかな?」
「片付けはやっておくので大丈夫ですよ」
「ヴェルくん、ありがとう!じゃあ行こっか!」

 今日一歳になったユウは、いっぱい動いて話して遊んで、家族皆で楽しい時間を過ごしたのだった。
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