美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

家族の話が何よりも

　薬を止めてから三か月ほどで二人目の妊娠が発覚した。
　例によってつわりは重く、しかし一度体験していたからか以前よりは若干軽い気が……するような気もする。夫たちも経験を活かし役割分担しながら私と、そしてユウの面倒を見てくれていた。

「ん……これ美味しい……」
「良かった！沢山あるから食べれる分食べてお腹に溜めとこ」

　嬉しそうに頷いたラグトさんはちょうどいい量を新しくよそってくれる。
　一日の中でどれだけのご飯を準備してくれていることだろうか。料理という凝ったものでは無いにしても、ありとあらゆる食材を用意して食べやすいように調理し出してくれる。

「ラグトさん……お水……」
「うん」

　水を一口飲むにしても背とコップを持つ手を支えてくれるのだから安心感が凄い。

「かあしゃんいないー！！」
「……サキ、ユウが会いたがっていて」

　ミスカさんが泣きわめくユウを抱えて部屋にやって来た。

「ユウ……おいで」

　ベッドに乗せられたユウは、横になる私の傍に来て小さな手で顔に触れてくる。

「ふふ……励ましてくれてるの？ありがとう」
「かあしゃー」

　私のお腹の上に乗ろうとするからミスカさんが慌てて取り上げる。

「母さんは今大変だから、父さんと遊ぼう」
「やー！」
「黒騎士団の方に遊びに行くか」
「くよきし！いく！」

　急に意見を変えたユウは大人しくミスカさんに連れて行かれた。
　お母さんより黒騎士団の方が良いと言われるのは若干悲しいけれど、色んな人と交流してくれるのは良いことだ。

「ユウに会えると元気出るなぁ……」
「そっか！ユウもすぐに母さんに会いたいって言うし、無理ない程度で構ってあげて」
「うん」

　体調が良くて動けそうな日はベッドの上でユウとおもちゃで遊んだ。しかし私が寝込んでいるのを見るとユウも何か分かるようで、心配そうな顔もしていた。

「だいじょぶ？」
「大丈夫だよ……。ユウいっぱい話せて偉いね……」

　また今日も横になりながら、ベッドの隣に立つユウの頭を撫でる。

「最近お絵描きも上手になったんだ。ほら」

　ハインツさんが見せてくれた黒と白と肌色を見て何となく思いつく。

「黒騎士団の制服……？」
「制服というより……」
「よーくん！」
「私たちよりヨルアノが先に描かれてしまった……」

　それは何とも不憫なことだ。夫一同とても落ち込んでいるらしい。

「お母さんの……絵はないの？」
「こえかいた」
「ん？さっき描いていたものか」

　先程もお絵描きしていたそうで、新しい絵を見せてくれる。

「これお母さん？」
「ん！」

　肌色と緑色。これは……。

「エプロン姿を描いてくれたの……凄く上手」
「そうか、ご飯の時によくキッチンの前まで来て待ってるからな」

　色も認識してクレヨンの中から選べるなんて大きな進歩だ。ちょっと前まではリンゴを紫色で描いていたのに。

「この絵、ヨルアノくんに……プレゼントしたら？」
「ぷえれんと？」
「どうぞって渡すの。きっといっぱい喜んでくれるよ」

　ハインツさんは微妙な顔をしていたがユウが頷いたので、後日渡しに行ったらしい。ヨルアノくんが嬉しすぎて五十回くらい飛び跳ねてたとも聞いた。
　前回よりも長かったつわりの期間、ユウの前では涙を堪えながら、彼らの楽しい話のお陰で気持ちを保つことができた。