美醜逆転の異世界で騎士様たちに愛される

志季彩夜

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母の力

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 黒髪に水色の瞳。私たちが思い描いていた子が実際に生まれてきてくれてそれはもう嬉しい限りだった。
 勿論どんな髪色でも瞳の色でも愛する気持ちに差は無いけれど、彼と同じ水色の瞳はとても美しい。
 退院してお家に帰った後、名前が決められた。

「ミアはどうだ?」
「ミア……!良いと思う!可愛い!」

 皆もリュークに続きミスカさんに賛同し、満場一致で「ミア」になった。

「みあ、みあ」
「うん、ミア。ユウお兄ちゃんだよーって」
「おにいちゃんだよー」

 ベビーベッドに寝ているミアに、ラグトさんに抱っこされたユウが話しかけている。

「ミアないちゃった!」
「泣いちゃった!ちょっとユウ降りてね」

 ユウを下に降ろしミアを抱っこするラグトさん。

「ユウ」
「かあさーん」

 こちらに来たユウを持ち上げて膝の上に乗せる。

「重たくなったね。ユウもちょっと前まであんなに小さかったんだよ」
「ぼくあかちゃん?」
「そうそう、ユウも二歳だからまだ赤ちゃんなのかな……もう幼児かな?」

 この世界の子はやっぱり成長が早いと思う。二歳でもうこんなに話せるようになるんだなぁってびっくりする。

「サキちゃん、ミアお願いして良い?お腹空いてるのかも……」

 なかなか泣き止まないミアを代わり、ユウとラグトさんはおやつを取りに行った。

「皆お腹空く時間ですね」
「サキちゃんも、はい」
「ありがとうございます」

 彼の手からクッキーを食べさせてもらった。

「かあさん、はい!」

 私の足元に立つユウも真似して差し出してくれる。
 笑ったラグトさんはユウを抱えて小さな手を私の口元に近づける。

「ん!美味しいね!ユウありがとう」
「どーいたちまして」

 言葉噛んでるの可愛い~!
 私がクッキーを食べ終わるとミアも母乳を飲み終わったそうで、げっぷもさせてすっかり泣き止んだ。

「ただいま」
「おかえりなさい、ハインツさん」
「ハインツとうさん!」
「ユウ、ただいま。おやつを食べていたのか」
「うん!おいしい!」
「そうか!私も頂こうかな」

 ハインツさんが帰ってきて三人になったので余裕もでき、ラグトさんは家事の方を進める。
 子供が二人になるとそれぞれ見ていないといけないので以前と同じ二人体制だとなかなか家のことが疎かになる。

「ユウを一人で居させるのはまだ心配だな……」
「そうですね……。過保護かもしれないけど、ミアにいっぱいで構ってあげられなくなるのも嫌ですし……」

 人とのコミュニケーションが大切な時期に一人にさせるのは精神的にも良くないだろう。

「明日はヴェルストリアが休みだから、ユウを町に連れて行ってもらおうと思っているんだが」
「また行きたいって言ってましたもんね」

 以前私とヴェルくんでユウをサロディーアに連れて行った時に一人友達になった子が居たのだ。寮から町まで距離は少しあるけれど何度か会いに行って、今でも仲良くできているらしい。
 住んでいる場所が場所なので正直不安はあったのだが一安心だ。

「ミアねてる?」
「うん、ユウもお昼寝するでしょ?赤ちゃんはもっといっぱいするの」
「ぼくもねるー」

 自分の膝にゴロンと寝転がったユウの腹を、ハインツさんは嬉しそうにくすぐる。

「お昼寝ばっかりはよくないぞー」
「きゃはは!」

 ハインツさんとユウの可愛いじゃれ合いを微笑ましく見守った。

 生まれてからしばらくの間大変なのは夜中の授乳だ。三時間起きに夫に起こしてもらって母乳を飲ませなければならない。

「サキ……ごめんね」
「……ううん、大丈夫」

 リュークは申し訳なさそうにするけれどこれは必要なことだし、彼らはその他の家事育児はほぼ全てやってくれている。これも分業というものだ。

「短い時間だと眠れなかったりもするから……ミアの面倒見てたほうが安心するかも」
「……そっか」

 私の傍に寄った彼が後ろからそっと肩を抱いてくれる。

「夜中に起きたらお腹空くよね、温かいものも用意しとこっか」
「リュークが作ってくれるの?」
「……ミスカ呼んでくる」
「ふふ、ミスカさんのスープ美味しいよね」

 ユウの時もそうだったが体が慣れてきたら決まった時間に自然と目が覚めるようになってくる。
 母の体は凄いものだ。赤ちゃんを産んだら育てる為の仕様になるのだから。
 そう思うとやっぱり私とこの世界の女性たちは若干体の違いがあるのかもしれない。女の子が生まれにくいのも……なんて、それは考えすぎかな。
 しかし以前王宮に……ミアを妊娠する前に実は二度目の訪問をしていたのだが、その際に子供のことについても話を聞いた。
 女性が少ないことに加え各家庭での出産人数は夫の数より少ない所が多い。つまり少子化が着実に進んでいるということだ。
 一人の女性が何度も妊娠出産することは実際とても大きな負担だし、女性全員が必ず子供を産めるとは限らない。根本的に女性を増やすことが必要だと王様は深刻な表情で仰っていた。
 いずれこの国が、この世界が無くなってしまうかもしれない。私たちの子供、孫が幸せに暮らせる世界が続いてほしいと思えばこれは他人事では無い。
 ……一回話だけでもしてみよう。他の世界から来た私にしか出来ないこともある。王様はそれを望んでいるのだから。

「お母さんが……ミアの未来も守るから」

 母になった私は、この子たちの為ならきっと誰よりも強い。
 小さな手で私の指を掴み眠るミアがほんの少し微笑んだ気がした。
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