モブでも認知ぐらいしてほしいと思ったのがそもそもの間違いでした。

行倉宙華

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シックザール学園 第三章

四大貴族が勢揃いしました

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 ダムレボ三大ミステリーの謎は今日で一気に解決しそうだ。
 同姓同名なんて、四大貴族ともなればそうそういないだろうよ。


 ニコラス・ケンドリック。

 「キングダム・レボリューション」のどのルートを選択しても、必ずプレイ初期に出現するお助けキャラ。
 詳しい情報は一切不明で、分かってることは名前くらい。
 しかし、容姿は白に近い金髪で常に前髪に隠れて片目は見えないけど、肌は白くて、瞳は綺麗な濃い緑の瞳とすごく整っている。
 無表情で決して笑わず、淡々とヒロインの手助けをしてくれるニコラスにファンは相当多かった。
 ネットでは、あの子は誰!? 本当にお助けキャラで終わるの!? と、ニコラスのルート開設を希望する声はそれは非常に多かった。


「まさか、そんな近くにいたとは……」
「リリーとリオン、それにスピカもニコラスに会うのは初めてだよね?」
「そうです! 初めましてです!」
「元気がいいですわね……?」
「はあ……また何か企んでんだろ」
「失礼な!? 私は純粋に偽りなくニコラス様にお会いするのが楽しみなの!」
「ニコラス様って社交界にほとんど出席しないし、学園でも一歳下だから会う機会ないんだよね~」
「ええ!? ニコラス様って、もう学園に通ってるの!?」


 みんなからの何言ってんだ……という突き刺さる視線は無視する。
 嘘でしょう!?
 一年も同じ学園に通って同じ寮で暮らしてたの!?
 外見は同じはずよね? このダムレボ大好きな私が気付かないなんて……
 絶対に途中で編入してくるとかだと思ってたのに、まさかの!?
 そうこうしてるうちに、バルトがもう王宮に着いたらしい。


「バルト、早かったな!」
「他ならぬ君達からのお呼びだからね」


 そして、バルトに今世界に起きてることを包み隠さず話していく。
 話を進めていくほど、バルトの笑顔が曇っていくのが分かっていたけど。


「信じられないけど……本当なんだね」
「協力してくれる?」
「もちろん、僕とエレノアの華々しい未来を守らなきゃね?」
「はいはい……」
「失礼致します」
「どうした?」
「ニコラス・ケンドリック様が、ご到着なさりました」
「通せ」


 バルトのエレノア至上主義は変わらず健在である。
 そして、いよいよ、ニコラス・ケンドリック様とご対面である。
 あの無表情ながら隠しきれない優しさに生で触れたい! 静かに囁くように頑張ったねって言われたい!
 あの雰囲気が年下とは未だにびっくりしてるけどね……


「ニコラス、急に呼び立てて悪かった」
「……ふんっ!」


(かわいい~!! けど、あれ?)


 部屋に入ってきたニコラス様は女の子と見間違えるほどに可愛かった。
 身長も同世代の子達に比べると、少し小さいみたいだ。
 けど、ダムレボのお助けキャラの雰囲気とは違うような?
 白に近い金髪は同じだけど、前髪で目は隠れてないし、あ、でも、両目ともパッチリ二重で可愛い!
 白い肌というより、小麦色か? 健康的ですごくいいと思うよ!
 あと、無表情は気のせいかな? 若干怒ってるように見えるんだけど……


「言ったよな? 俺は、お前らなんかとは話をしたくない、顔も見たくないと言ったよな? 理解出来なかったのか!?」
「待て待て、ニコラス落ち着け!」
「俺の名前を呼ぶな!! 王子ってだけで調子にのるな!!」
「ニコラス、世界が大変なんですのよ」
「とりあえず座ってよ?」
「話を聞いて、それからゆっくり……」
「は? 世界だ? 勘違いするな、俺は無理矢理ここに連れてこられたんだ! 同じ四大貴族だからって、お前らと馴れ合う気は一切ない!!」


(え、何これ? あれは誰?)


「ねえ、あれがニコラス様?」
「そうに決まってんだろ……」
「止めた方がいいんでしょうか?」
「セドリック! 何とかしてよ!」
「俺には絶対に無理無理! 最初から敵意むき出しで、話通じねえし!」


 待ってよ、待ってよ!? ダムレボのニコラス様と違いすぎるでしょ!?
 どういうこと!? ねえ! どういうことなの!?
 性格変わりすぎ! 無表情は!? 感情出しまくってるんですけど!?
 絶対、あんなんでお助けなんてしてくれないでしょ!?
 私は目の前のことに絶望していた。
 しかし、私が現実逃避をしてる間にニコラス様の怒りの矛先は、いつの間にか私達に向かっていたらしい。


「お前ら!! コソコソ気に入らん!!」
「え?」
「その背高いのは見たことあるな?」
「騎士団の訓練所で……」
「そこのブス三人は初めて見るな、名を名乗れ!!」


 は、ブス?誰が? 一人は私だろう。
 けど、数が合わない。
 ニコラス様が見る方には、私、セドリック、リリー、リオンしかいない。
 セドリックはニコラス様と会ったことあるらしいし、ブスは私だけだ。
 ニコラス様は疲れてる? 私が三人に見えてるとか?
 ブス三人は初めて見る? 初めて?


(リリーとリオン!?!?)


「失礼致しました、ターメリック侯爵が次男、リオン・ターメリックです」
「キャメロン伯爵が娘、リリー・キャメロンと申します」
「ふんっ! お前は?」
「……こが……!!」
「あ?」
「どこがブスなのよ、どこが!? しっかり見てみなさいよ、この顔立ちを! 社交界でも学園でも評判の美人なのよ? リリーとリオンは!!」
「スピカ様!?」
「何言ってんの!?」
「俺、もう知らね……」
「は? 何だと?」
「私はしょうがないわ! けど、リリーとリオンがブス!? あ、照明ね? 照明のせいで顔色が悪く見えるのよ!! 向こうの明るい所で見て!!」
「スピカ!! あなたは……もう!!」
「オリオン、裁判でスピカを守ってね」
「俺に丸投げか!?」
「スピカは格が違うね~」
「お前、俺にそんな口をきいてただで済むと思うなよ!!」
「そんなことより! リリーとリオンをブス呼ばわりしたことを取り消して!!」
「なっ!? お前は何なんだ!?」


 この時の私は、全てのことを忘れて無我夢中でした。
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