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1巻
1-2
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「あなたは私達から謝罪の言葉を、国王陛下や王子としての言葉を欲しいわけではありませんよね?」
「……私は、謝罪の言葉などかけていただきたいのではありません。ただ皆様に心から笑っていただきたいのです。関係ないだなんて、そんな寂しいことをおっしゃらないでください。私はサイモン・アルドレード伯爵が娘であり、この王国の民です。私達が今日も幸せに平和で生きていられるのは皆様のおかげです、それならば、王族の皆様をお守りするのは私達王国の民の務めです」
この王国の行く末は、この人達の未来そのものでもある。
国を背負うなんてプレッシャーは私には想像もつかないけど、これはモブからの精一杯の感謝とエールだ。
そして、細かいことはまた別の機会にしようと話がまとまった。
お父様とお母様はとんでもないと、これまた大慌てだったが、王家の方々全員で私達を見送ってくれるのだとか。
そんな両親を横目に、私はオリオン王子と目が合うと笑みを零していた。
笑ったらダメだったのかな……?
「……スピカ嬢!!」
「は、はい!? あ、何で、しょうか……オリオン殿下」
「話がしたい、今すぐ!!」
* * *
もう全てが疑問だらけで、俺の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
俺はまだ子どもだから、こんな心の内を家族に、兄上に聞かれるのが、とてもイヤだった。
けど、この少女の言葉を聞くと心の中のモヤモヤが一気にこみ上げてきて、俺は黙っていられなかった。
理由はわからないけど、この少女のことを知りたい、近づきたいと思った。
父上やサイモンの引き止める声を無視して、俺はスピカ・アルドレードを城の中庭に半ば強引に連れて行った。
「あ、ああの、オリオン殿下?」
「なぜだ」
「は、はい?」
「なぜ誰も気付かなかったのに、暗殺のことがわかった、危険とわかっていて飛び込んだ理由を教えろ」
「……うわー、ゲームと同じ俺様」
「何か言ったか?」
「いえ、あの!! 先程とは随分とご様子が違うなと……」
「そんなことはどうでもいい、俺の質問に答えろ」
「……お言葉ですが、オリオン殿下? 答えろと言って、いつも答えが返ってくると思ったら大間違いですよ?」
「何だと?」
「だいたい、それを聞いてどうするんです? 私を暗殺者の仲間だと?」
「そんなこと思っていない!!」
「え……」
「そんなことは絶対に思わない!! どんなに感謝しても足りないくらいだ……」
「オリオン殿下?」
昔からそうだった。
素直になりたいのに、いつも本心とは正反対のことを言ったりやってしまう。
そのことで、どれだけの大切な人間を傷つけてしまったか、もうわからない。
だから、いつも素直で周りに人が絶えない兄上が羨ましくて、妬ましくて……
俺はその中心になることはないから。
「すまない、嫌な思いをさせたな……」
「いえ、とんでもないことです……私に本当は何を聞きたかったんですか?」
「……なぜ、そんな満足そうに笑う」
「あなた様が、また笑ってくれたからです」
「は?」
「私はあなた様の心の底から笑う顔がとても素敵だと思いました」
「なっ……何を!? いつだ!?」
「それは言えません、けど、その笑顔を曇らせるようなことは絶対にしたくないと、私は思いました」
「今日会ったばかりなのにか?」
「遠いようで近いですよ? あなた様はこの王国になくてはならない存在です」
「それはないな……兄上がいるだけで王国は成り立つはずだ」
「どうして、そんなにご自分のことを卑下されるんですか!? オリオン殿下はこの王国に必要です、シリウス殿下にとっても」
「卑下ではない!! 事実だ!!」
「もしそうなら、その事実は真実ではありません!! シリウス殿下には確かに人を惹きつける力があります、けど、オリオン殿下には先を読む力があります」
「先を読む力だと?」
「きっと、お二人は共にいることで一つになれる偉大な存在です。お二人が力を合わせれば、戦争が決して起きない平和な王国となるはずです」
「……できるだろうか」
「きっと、できます!! それに、世界中の人がオリオン殿下を孤独に陥れても、私がその度に引っ張り上げてみせます」
「何だそれは……いや、それはいい、兄上を救ってくれて本当にありがとう」
「それはさっきも聞きましたよ?」
「もう一度言いたくなった……。スピカは王国の平和を望むか?」
「……はい、もちろんです!」
どれくらいぶりだろうか、久しぶりに心の底から笑ったのではないだろうか。
兄上への劣等感が完璧に消えたわけではないが、この変な少女と出会って俺は抱えていたものが軽くなった。
そこから大人達が捜しに来るまで、俺達は星空が照らし出す中庭で会話をして笑い合った。
スピカは俺に人生の目標をくれた。
俺を独りにはしないと言った、お前のその言葉はずっと俺を支えてくれる。
お前が望むなら、平和で幸せな王国を築くことくらい叶えてやる。
今度は俺がお前の笑顔を守る。
スピカは、俺にはもったいないくらいまっすぐで美しい人間だ。
こんなに美しい人間のことを俺は他に知らないし、きっともう見つからない。
この出会いは俺の一生の宝物、忘れられない思い出となるだろう。
* * *
私は自宅でアダムとシャーロットの報告を受けていた。
「それじゃあ、今回もフリード家は欠席ということ?」
「はい、そのようです」
アダムとシャーロットにベルンハルトの実家であるフリード家のことを調べてもらって、もう一か月半が経った。
フリード家は公爵の爵位を持つ四大貴族の一つであり、由緒正しいお家柄だ。
この世界の貴族は週に三回はパーティーを開いている。八歳の私でさえ、顔馴染みだけならもう百人は超えているだろう。
私はその公の場でベルンハルトと接点を持とうと思っていたのだが……
「私と同い年なのよね? それなのに社交界デビューもまだだなんて……」
「この先も、ベルンハルト様が公の場に姿を現す予定はないようです」
「まさか、ここまでとは……」
ゲーム中に明かされるベルンハルトの幼少期は、ただただ孤独だった。
とはいえ、四大貴族のフリード家が、跡取りを公の場に出さないなんてことはないだろうと思っていたのに……
こんな幼少期を過ごせば、嫌でもねじ曲がった性格になる。
ベルンハルト・フリードはフリード公爵家の長男で、ゲーム内の攻略対象者の一人である。
しかし、ベルンハルトはフリード家と血が繋がってはいない。
五歳の時に、遠い辺境の地の教会から引き取られた養子なのだ。
天涯孤独だったベルンハルトは、自分にも家族ができると希望で胸いっぱいにしてフリード家にやってきたが、想像通りにはいかなかった。
「シャーロット、これは監禁とはまた違うのよね?」
「はい、まったくそのような気配は……」
「それどころか、よく屋敷を一人で抜け出しては街で遊んでいるようです」
「公爵家の長男が護衛もなしに?」
「おかしいとは思いますけど、特別な事情があるといえばありますし……」
「まあ、いずれにしても俺達には理解できない事情なんですかね~」
ゲーム内では、彼はひたすらに愛を求めるというキャラクターだった。
誰より家族というものを切望していた彼に、義理の両親がした扱いはとても無情なものだった。
両親は引き取ったベルンハルトを一度も抱き締めることなく避け続け、挙句に離婚してしまう。
彼は愛を求めるあまり、素行が悪くなり、女遊びが目立つようになる。
ヒロインと恋に落ちれば、愛し愛される喜びを知って幸せな家庭を築くのだが、悲恋エンドになれば、愛する人が目の前で殺されてしまう。
「動物が好きなんでしょうか? よく街の野良猫と遊ぶ姿を目にします」
「あー、確かにな! 馬で街に来てたりしますからね」
「動物が好きか……」
しかし、一番の悲劇はベルンハルトと義理の両親がすれ違い続けてしまったことである。
ベルンハルトは養子だ、ただし、それは表向きの話。
実は、ベルンハルトは公爵家の本当の血の繋がった息子である。
幼く記憶もろくにない頃に誘拐され、辺境の地に売られたのだ。
王国では貴族の子どもの誘拐など、そう珍しいものではない。
しかし公爵家の、しかも四大貴族のフリード家の嫡男が誘拐されたことがわかると、王国中に衝撃が走った。
とんでもない人数を動員して捜索が行われたが、三か月経っても何一つ情報は得られなかった。
それでも両親は根気強く捜し続けた。
その結果、とうとう息子を見つけ、養子として引き取ったのだ。
なぜ実子ではなく、養子としたのか。
この真実を、ベルンハルトはヒロインとずっと後に知ることになる。
今日も私は、ベルンハルト・フリード改め、ベルを馬で追いかける。
寂しい屋敷を飛び出した独りぼっちの男の子を、私は追いかけていた。
ここはアルドレード家の領地の境い目で、どこまでも続く草原。
「ベルー!! 今日こそは、絶対に私と競争してもらうからね!?」
「何度も言うけど、興味ない! 君って本当にしつこいよね!?」
「君じゃない、スピカです!」
ベルは相棒の白いたてがみが立派な馬のジェニファーと、よくここに来てる。
ベル達はここで何をするでもなく、雲を眺めたり、草原を散歩したり……
「いい加減、名前覚えてくれません?」
「あのね? 別に名前がわからないから呼ばないわけじゃないよ……」
「そうなの? 記憶喪失かと」
すると、ベルは整った顔を一瞬にしてこれでもかというほど歪めた。
あ、会話するだけ時間の無駄だって言いたそうな顔してる。
ベルとの出会いは、私には計算違いの事故のようなものだった。
私はシャーロットとアダムの、ベルが動物、特に馬が好きらしいという報告を基にして、ある作戦を立てた。
馬が好きなベルに親しみを持ってもらおうと、私も我が家の黒い馬に乗って、草原を駆け抜けたのだ。
作戦では、私はスマートに颯爽と馬を乗りこなしてベルの前に降り立ち、その流れで友達になる。
そんな、第一印象を大切にした出会いをする予定だったのだ。
しかし、我が家の馬は茂みから飛び出したウサギに驚き、私の言うことを聞かない暴走馬と化してしまった。
まずいと思った私は、咄嗟に遠くに見えたベルに叫んだ。
「馬の止め方知ってる!?」
「何て!?」
「だーかーらー!! うおっ、馬の止め方だってば!!」
とんでもない攻防の末、ジェニファーに乗ったベルは私の乗る馬の横につけてくれた。
そして、何とか手網を握ってもらう。
怖くない、大丈夫、何度もベルが呼びかけてやっと馬は止まってくれた。
正直、生きた心地がしなかったね!
その時のベルはどこか落ち着かない様子だったけど、私は改めてベルの整った顔を確認するように凝視していた。
涼しげな目元がルビーのような赤い瞳を引き立たせる。唇も形が綺麗だ。
同い年のはずなのに、もう既に上品で落ち着いた容姿に思えるのは、まだ肩につかないぐらいのセンター分けされた銀髪のせいかな?
「えっと、何かな……」
「あ、ごめんなさい! それと、ありがとう! 私、馬に乗るの久しぶりで、運動神経はいい方だから大丈夫かなって思ったんだけど、よくよく考えたら一人で乗るのは初めてだったな~って」
「あ、そうなんだ……気を付けてね」
まあ、当初の目的の第一印象については結果は残したね……残しすぎだけど。
それから私は、一日も欠かさずに私の黒い馬と共にベル達の元を訪れた。
シャーロットとアダムとみっちり乗馬の稽古をしたおかげで、私の乗馬テクニックは最初の頃と比べ物にならないほどに上達した。
そして、ベルに馬で競走しろと言い続けているわけだ。
「そんなに僕と勝負がしたいの?」
「もちろん!」
「どうして? 何か理由があるよね」
「うん、教えてほしいんだ」
「何を?」
「ベルからお悩みを」
「え、僕!? お悩みって……」
「あるでしょ? じゃなきゃ、こんな何もない草原で毎日馬と二人きりでいるわけないもの、私が勝ったら教えて」
「僕が勝ったら?」
「何でも願いを叶えてあげる」
「……じゃあ、もうここには来ないで」
「ベルが勝ったらね……」
こうして、苦節数週間で私とベルはそれぞれの願いを叶えるために勝負をすることになった。
ベルは、生まれた時も、これから先も、自分は一人だと思っているんだろう。
そんな残酷な現実をこんな小さな体で受け止めるなんて、絶対にダメ。
私から離れたがるのは、きっと他人から与えられる情に期待しないためだろう。
ねえ、簡単に諦めたりしないで……?
問題の勝負はシンプルで、草原の丘にある木に相手より早くたどり着くこと。
私達は一斉にスタートした。
「じゃあ、約束だからね?」
「はあ、はあ……信じられない、いつの間にあんなに……」
「私って努力家なんだよね!」
「君は、いったい何者?」
「その答えは、ベルと友達になりたい通りすがりの子……とかになるのかな」
「……真面目に答えてよ」
「いやいや、大真面目だって……」
「そんなわけないだろ!!」
「ベル? どうし……」
「もうやめてくれ!!」
ゴールに少し遅れて着いたベルは顔を真っ赤にして必死に泣くのをこらえていた。
これが、一生一人で生きていくという少年の悲しい覚悟だろうか。
家族を切望して、やっと手に入れたのにそこは空っぽ。
ベルは、愛していると他の両親が子どもにするように抱き締められたかっただけ。
けれど、ベルの両親は愛するどころかベルを見てすらくれない。
あの広すぎる屋敷は、今のベルには棺桶の中と同じだったんだろうね……
ようやく、心の中をぶつけてくれた。
「もう愛されるって期待をして、裏切られるのなんて嫌なんだ! 耐えられないんだ!!」
「私は裏切らないよ」
「そんなのわからない!!」
「わかる!! ベル、あなたは幸せになる権利があるんだよ? そのためなら、私は何でもする」
「何が、できるのさ……」
「じゃあ、ついてきてよ」
「どうし、て……!?」
まさか自分の家に導かれるとは思わなかったのだろう。
私の予想通り、ベルはただただ立ち尽くしていた。
私は驚いているベルの様子なんて気にもせず、門番に話しかけた。
「すみません、公爵様とご夫人は本日ご在宅ですか?」
「……失礼ですが、どちら様ですか?」
「あ、失礼いたしました、スピカ・アルドレードと申します」
「え、アルドレード!?」
ベルは目を見開いた。
「失礼いたしました、アルドレード家のご令嬢とは知らず、ご無礼をお許しください」
「構いません、それで、中には入れていただけますか?」
「今、確認を取りに行かせましたので、少々お待ちいただけますか?」
「はい、もちろんです」
ほどなくして、公爵から許可が降りたというので、私は屋敷に入っていく。
ベルは黙ってそれについてきた。
執事に通された部屋は、おそらく屋敷の中の一番広い客間で、中にはフリード公と公爵夫人が揃っていた。
「お初にお目にかかります」
私を見てから一度、後ろにいるベルを見てもう一度、二人はとても驚いている。
「スピカ・アルドレードと申します。本日は事前にご連絡もせずに、突然の訪問をお許しください」
馬に乗って草原を駆け回る私が、自由に草まみれになり遊ぶ私が、まるで貴族の令嬢のように挨拶をしているのに隣のベルは驚いている。
実際、伯爵令嬢なんだけどね?
サイモン・アルドレード伯爵、宰相の娘として、納得のいくものだったかな?
まあ、これから話す内容で保ってた伯爵令嬢の体裁も台無しだけどね……
「少し驚いたが、構わないよ? それより、どういう目的で我が家に?」
公爵は鷹揚に答えた。
「……私が、こんなことを言うのは大変恐れ多いことです、ですが! どうか私のお願いを聞いていただきたいのです!」
「どういうことだい?」
「ベルに……ベルンハルト様に、真実をお話しになってはいかがですか?」
「真実?」
「アルドレード嬢、何を……」
「お二人のお気持ちは私には想像もできません。しかし、せっかくまた家族が巡り会えたのです、こんなに素晴らしいことなのに、なぜお二人はそんなに悲しそうなんです?」
「待って、スピカ? 何の……」
「勇気を出してください。お二人はとても苦しんだことでしょう、これ以上、苦しむことは無意味です。お二人は何も悪くなんてありません、むしろ今こうして頑なに真実を黙っていることこそが、何よりもの罪です」
「ねえ、スピカ!」
「ベル、聞いて? 黙っていたことは本当にごめんなさい、けれど、あなたと仲良くなる方法が他に思いつかなかったの」
「いやまあ、聞きたいことは山のようにあるけど、家族が巡り会えたって……」
「うん」
「意味がわからないよ……知っているかもしれないけど、僕は捨て子で、ずっと教会で……」
「誘拐だ」
フリード公が口を開いた。
まっすぐと、ベルの目を見てフリード公は言葉を続ける。
フリード公の、父親の口から次々と告げられるそれらの真実は、とても簡単に受け入れられるものではないだろう。
ベルは驚きと混乱の中で、そっと目を閉じた。
「それは……本当なの……?」
「真実だ、黙っていてすまなかった」
「そんな……」
「ベル、言って?」
「え?」
「自分の気持ちを言って?」
「……わかりません、なぜですか? なぜ、あなた達は僕をまるで空気のように扱うのですか!?」
「ベルンハルト……」
「僕は嬉しかったんだ、夢に見ていた家族を手に入れられると! けど、あなた達は僕に興味を抱かないどころか、目を合わせてもくれない、なぜなんですか!? どうして、今まで僕に本当のことを言ってくれなかったのですか!?」
「ベルンハルト、それは……!!」
勢いに任せて、ベルは今まで心の中に溜め込んでいたものを一気に吐き出すように言葉を重ねた。
すると、俯いて黙っていた公爵夫人がベルをまっすぐ見た。
「怖かったのです」
ベルの両親は、やっと彼と向き合ったのだ。
ベルの銀髪はフリード公に、赤い瞳は公爵夫人に、やっぱりそっくりだ。
しかし、目を合わせた公爵夫人はベルを見て涙を流していた。
「三年と四日です、あなたを失ってから一日だって忘れた日はありません、またあなたに会える日を希望に、ずっと生きていました……けれど、いざ再会すると私はあなたに対する罪悪感に襲われ、どうして守ってくれなかったと、責められるのが怖くなりました」
「私達は真実を隠した……そして、お前とどう接していいかわからなくなった、結果がこれだ……」
「ベルンハルト、あなたを!! もう二度と失いたくはないの、二度も失って、耐えていける自信はもうないの……」
「……私は、謝罪の言葉などかけていただきたいのではありません。ただ皆様に心から笑っていただきたいのです。関係ないだなんて、そんな寂しいことをおっしゃらないでください。私はサイモン・アルドレード伯爵が娘であり、この王国の民です。私達が今日も幸せに平和で生きていられるのは皆様のおかげです、それならば、王族の皆様をお守りするのは私達王国の民の務めです」
この王国の行く末は、この人達の未来そのものでもある。
国を背負うなんてプレッシャーは私には想像もつかないけど、これはモブからの精一杯の感謝とエールだ。
そして、細かいことはまた別の機会にしようと話がまとまった。
お父様とお母様はとんでもないと、これまた大慌てだったが、王家の方々全員で私達を見送ってくれるのだとか。
そんな両親を横目に、私はオリオン王子と目が合うと笑みを零していた。
笑ったらダメだったのかな……?
「……スピカ嬢!!」
「は、はい!? あ、何で、しょうか……オリオン殿下」
「話がしたい、今すぐ!!」
* * *
もう全てが疑問だらけで、俺の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
俺はまだ子どもだから、こんな心の内を家族に、兄上に聞かれるのが、とてもイヤだった。
けど、この少女の言葉を聞くと心の中のモヤモヤが一気にこみ上げてきて、俺は黙っていられなかった。
理由はわからないけど、この少女のことを知りたい、近づきたいと思った。
父上やサイモンの引き止める声を無視して、俺はスピカ・アルドレードを城の中庭に半ば強引に連れて行った。
「あ、ああの、オリオン殿下?」
「なぜだ」
「は、はい?」
「なぜ誰も気付かなかったのに、暗殺のことがわかった、危険とわかっていて飛び込んだ理由を教えろ」
「……うわー、ゲームと同じ俺様」
「何か言ったか?」
「いえ、あの!! 先程とは随分とご様子が違うなと……」
「そんなことはどうでもいい、俺の質問に答えろ」
「……お言葉ですが、オリオン殿下? 答えろと言って、いつも答えが返ってくると思ったら大間違いですよ?」
「何だと?」
「だいたい、それを聞いてどうするんです? 私を暗殺者の仲間だと?」
「そんなこと思っていない!!」
「え……」
「そんなことは絶対に思わない!! どんなに感謝しても足りないくらいだ……」
「オリオン殿下?」
昔からそうだった。
素直になりたいのに、いつも本心とは正反対のことを言ったりやってしまう。
そのことで、どれだけの大切な人間を傷つけてしまったか、もうわからない。
だから、いつも素直で周りに人が絶えない兄上が羨ましくて、妬ましくて……
俺はその中心になることはないから。
「すまない、嫌な思いをさせたな……」
「いえ、とんでもないことです……私に本当は何を聞きたかったんですか?」
「……なぜ、そんな満足そうに笑う」
「あなた様が、また笑ってくれたからです」
「は?」
「私はあなた様の心の底から笑う顔がとても素敵だと思いました」
「なっ……何を!? いつだ!?」
「それは言えません、けど、その笑顔を曇らせるようなことは絶対にしたくないと、私は思いました」
「今日会ったばかりなのにか?」
「遠いようで近いですよ? あなた様はこの王国になくてはならない存在です」
「それはないな……兄上がいるだけで王国は成り立つはずだ」
「どうして、そんなにご自分のことを卑下されるんですか!? オリオン殿下はこの王国に必要です、シリウス殿下にとっても」
「卑下ではない!! 事実だ!!」
「もしそうなら、その事実は真実ではありません!! シリウス殿下には確かに人を惹きつける力があります、けど、オリオン殿下には先を読む力があります」
「先を読む力だと?」
「きっと、お二人は共にいることで一つになれる偉大な存在です。お二人が力を合わせれば、戦争が決して起きない平和な王国となるはずです」
「……できるだろうか」
「きっと、できます!! それに、世界中の人がオリオン殿下を孤独に陥れても、私がその度に引っ張り上げてみせます」
「何だそれは……いや、それはいい、兄上を救ってくれて本当にありがとう」
「それはさっきも聞きましたよ?」
「もう一度言いたくなった……。スピカは王国の平和を望むか?」
「……はい、もちろんです!」
どれくらいぶりだろうか、久しぶりに心の底から笑ったのではないだろうか。
兄上への劣等感が完璧に消えたわけではないが、この変な少女と出会って俺は抱えていたものが軽くなった。
そこから大人達が捜しに来るまで、俺達は星空が照らし出す中庭で会話をして笑い合った。
スピカは俺に人生の目標をくれた。
俺を独りにはしないと言った、お前のその言葉はずっと俺を支えてくれる。
お前が望むなら、平和で幸せな王国を築くことくらい叶えてやる。
今度は俺がお前の笑顔を守る。
スピカは、俺にはもったいないくらいまっすぐで美しい人間だ。
こんなに美しい人間のことを俺は他に知らないし、きっともう見つからない。
この出会いは俺の一生の宝物、忘れられない思い出となるだろう。
* * *
私は自宅でアダムとシャーロットの報告を受けていた。
「それじゃあ、今回もフリード家は欠席ということ?」
「はい、そのようです」
アダムとシャーロットにベルンハルトの実家であるフリード家のことを調べてもらって、もう一か月半が経った。
フリード家は公爵の爵位を持つ四大貴族の一つであり、由緒正しいお家柄だ。
この世界の貴族は週に三回はパーティーを開いている。八歳の私でさえ、顔馴染みだけならもう百人は超えているだろう。
私はその公の場でベルンハルトと接点を持とうと思っていたのだが……
「私と同い年なのよね? それなのに社交界デビューもまだだなんて……」
「この先も、ベルンハルト様が公の場に姿を現す予定はないようです」
「まさか、ここまでとは……」
ゲーム中に明かされるベルンハルトの幼少期は、ただただ孤独だった。
とはいえ、四大貴族のフリード家が、跡取りを公の場に出さないなんてことはないだろうと思っていたのに……
こんな幼少期を過ごせば、嫌でもねじ曲がった性格になる。
ベルンハルト・フリードはフリード公爵家の長男で、ゲーム内の攻略対象者の一人である。
しかし、ベルンハルトはフリード家と血が繋がってはいない。
五歳の時に、遠い辺境の地の教会から引き取られた養子なのだ。
天涯孤独だったベルンハルトは、自分にも家族ができると希望で胸いっぱいにしてフリード家にやってきたが、想像通りにはいかなかった。
「シャーロット、これは監禁とはまた違うのよね?」
「はい、まったくそのような気配は……」
「それどころか、よく屋敷を一人で抜け出しては街で遊んでいるようです」
「公爵家の長男が護衛もなしに?」
「おかしいとは思いますけど、特別な事情があるといえばありますし……」
「まあ、いずれにしても俺達には理解できない事情なんですかね~」
ゲーム内では、彼はひたすらに愛を求めるというキャラクターだった。
誰より家族というものを切望していた彼に、義理の両親がした扱いはとても無情なものだった。
両親は引き取ったベルンハルトを一度も抱き締めることなく避け続け、挙句に離婚してしまう。
彼は愛を求めるあまり、素行が悪くなり、女遊びが目立つようになる。
ヒロインと恋に落ちれば、愛し愛される喜びを知って幸せな家庭を築くのだが、悲恋エンドになれば、愛する人が目の前で殺されてしまう。
「動物が好きなんでしょうか? よく街の野良猫と遊ぶ姿を目にします」
「あー、確かにな! 馬で街に来てたりしますからね」
「動物が好きか……」
しかし、一番の悲劇はベルンハルトと義理の両親がすれ違い続けてしまったことである。
ベルンハルトは養子だ、ただし、それは表向きの話。
実は、ベルンハルトは公爵家の本当の血の繋がった息子である。
幼く記憶もろくにない頃に誘拐され、辺境の地に売られたのだ。
王国では貴族の子どもの誘拐など、そう珍しいものではない。
しかし公爵家の、しかも四大貴族のフリード家の嫡男が誘拐されたことがわかると、王国中に衝撃が走った。
とんでもない人数を動員して捜索が行われたが、三か月経っても何一つ情報は得られなかった。
それでも両親は根気強く捜し続けた。
その結果、とうとう息子を見つけ、養子として引き取ったのだ。
なぜ実子ではなく、養子としたのか。
この真実を、ベルンハルトはヒロインとずっと後に知ることになる。
今日も私は、ベルンハルト・フリード改め、ベルを馬で追いかける。
寂しい屋敷を飛び出した独りぼっちの男の子を、私は追いかけていた。
ここはアルドレード家の領地の境い目で、どこまでも続く草原。
「ベルー!! 今日こそは、絶対に私と競争してもらうからね!?」
「何度も言うけど、興味ない! 君って本当にしつこいよね!?」
「君じゃない、スピカです!」
ベルは相棒の白いたてがみが立派な馬のジェニファーと、よくここに来てる。
ベル達はここで何をするでもなく、雲を眺めたり、草原を散歩したり……
「いい加減、名前覚えてくれません?」
「あのね? 別に名前がわからないから呼ばないわけじゃないよ……」
「そうなの? 記憶喪失かと」
すると、ベルは整った顔を一瞬にしてこれでもかというほど歪めた。
あ、会話するだけ時間の無駄だって言いたそうな顔してる。
ベルとの出会いは、私には計算違いの事故のようなものだった。
私はシャーロットとアダムの、ベルが動物、特に馬が好きらしいという報告を基にして、ある作戦を立てた。
馬が好きなベルに親しみを持ってもらおうと、私も我が家の黒い馬に乗って、草原を駆け抜けたのだ。
作戦では、私はスマートに颯爽と馬を乗りこなしてベルの前に降り立ち、その流れで友達になる。
そんな、第一印象を大切にした出会いをする予定だったのだ。
しかし、我が家の馬は茂みから飛び出したウサギに驚き、私の言うことを聞かない暴走馬と化してしまった。
まずいと思った私は、咄嗟に遠くに見えたベルに叫んだ。
「馬の止め方知ってる!?」
「何て!?」
「だーかーらー!! うおっ、馬の止め方だってば!!」
とんでもない攻防の末、ジェニファーに乗ったベルは私の乗る馬の横につけてくれた。
そして、何とか手網を握ってもらう。
怖くない、大丈夫、何度もベルが呼びかけてやっと馬は止まってくれた。
正直、生きた心地がしなかったね!
その時のベルはどこか落ち着かない様子だったけど、私は改めてベルの整った顔を確認するように凝視していた。
涼しげな目元がルビーのような赤い瞳を引き立たせる。唇も形が綺麗だ。
同い年のはずなのに、もう既に上品で落ち着いた容姿に思えるのは、まだ肩につかないぐらいのセンター分けされた銀髪のせいかな?
「えっと、何かな……」
「あ、ごめんなさい! それと、ありがとう! 私、馬に乗るの久しぶりで、運動神経はいい方だから大丈夫かなって思ったんだけど、よくよく考えたら一人で乗るのは初めてだったな~って」
「あ、そうなんだ……気を付けてね」
まあ、当初の目的の第一印象については結果は残したね……残しすぎだけど。
それから私は、一日も欠かさずに私の黒い馬と共にベル達の元を訪れた。
シャーロットとアダムとみっちり乗馬の稽古をしたおかげで、私の乗馬テクニックは最初の頃と比べ物にならないほどに上達した。
そして、ベルに馬で競走しろと言い続けているわけだ。
「そんなに僕と勝負がしたいの?」
「もちろん!」
「どうして? 何か理由があるよね」
「うん、教えてほしいんだ」
「何を?」
「ベルからお悩みを」
「え、僕!? お悩みって……」
「あるでしょ? じゃなきゃ、こんな何もない草原で毎日馬と二人きりでいるわけないもの、私が勝ったら教えて」
「僕が勝ったら?」
「何でも願いを叶えてあげる」
「……じゃあ、もうここには来ないで」
「ベルが勝ったらね……」
こうして、苦節数週間で私とベルはそれぞれの願いを叶えるために勝負をすることになった。
ベルは、生まれた時も、これから先も、自分は一人だと思っているんだろう。
そんな残酷な現実をこんな小さな体で受け止めるなんて、絶対にダメ。
私から離れたがるのは、きっと他人から与えられる情に期待しないためだろう。
ねえ、簡単に諦めたりしないで……?
問題の勝負はシンプルで、草原の丘にある木に相手より早くたどり着くこと。
私達は一斉にスタートした。
「じゃあ、約束だからね?」
「はあ、はあ……信じられない、いつの間にあんなに……」
「私って努力家なんだよね!」
「君は、いったい何者?」
「その答えは、ベルと友達になりたい通りすがりの子……とかになるのかな」
「……真面目に答えてよ」
「いやいや、大真面目だって……」
「そんなわけないだろ!!」
「ベル? どうし……」
「もうやめてくれ!!」
ゴールに少し遅れて着いたベルは顔を真っ赤にして必死に泣くのをこらえていた。
これが、一生一人で生きていくという少年の悲しい覚悟だろうか。
家族を切望して、やっと手に入れたのにそこは空っぽ。
ベルは、愛していると他の両親が子どもにするように抱き締められたかっただけ。
けれど、ベルの両親は愛するどころかベルを見てすらくれない。
あの広すぎる屋敷は、今のベルには棺桶の中と同じだったんだろうね……
ようやく、心の中をぶつけてくれた。
「もう愛されるって期待をして、裏切られるのなんて嫌なんだ! 耐えられないんだ!!」
「私は裏切らないよ」
「そんなのわからない!!」
「わかる!! ベル、あなたは幸せになる権利があるんだよ? そのためなら、私は何でもする」
「何が、できるのさ……」
「じゃあ、ついてきてよ」
「どうし、て……!?」
まさか自分の家に導かれるとは思わなかったのだろう。
私の予想通り、ベルはただただ立ち尽くしていた。
私は驚いているベルの様子なんて気にもせず、門番に話しかけた。
「すみません、公爵様とご夫人は本日ご在宅ですか?」
「……失礼ですが、どちら様ですか?」
「あ、失礼いたしました、スピカ・アルドレードと申します」
「え、アルドレード!?」
ベルは目を見開いた。
「失礼いたしました、アルドレード家のご令嬢とは知らず、ご無礼をお許しください」
「構いません、それで、中には入れていただけますか?」
「今、確認を取りに行かせましたので、少々お待ちいただけますか?」
「はい、もちろんです」
ほどなくして、公爵から許可が降りたというので、私は屋敷に入っていく。
ベルは黙ってそれについてきた。
執事に通された部屋は、おそらく屋敷の中の一番広い客間で、中にはフリード公と公爵夫人が揃っていた。
「お初にお目にかかります」
私を見てから一度、後ろにいるベルを見てもう一度、二人はとても驚いている。
「スピカ・アルドレードと申します。本日は事前にご連絡もせずに、突然の訪問をお許しください」
馬に乗って草原を駆け回る私が、自由に草まみれになり遊ぶ私が、まるで貴族の令嬢のように挨拶をしているのに隣のベルは驚いている。
実際、伯爵令嬢なんだけどね?
サイモン・アルドレード伯爵、宰相の娘として、納得のいくものだったかな?
まあ、これから話す内容で保ってた伯爵令嬢の体裁も台無しだけどね……
「少し驚いたが、構わないよ? それより、どういう目的で我が家に?」
公爵は鷹揚に答えた。
「……私が、こんなことを言うのは大変恐れ多いことです、ですが! どうか私のお願いを聞いていただきたいのです!」
「どういうことだい?」
「ベルに……ベルンハルト様に、真実をお話しになってはいかがですか?」
「真実?」
「アルドレード嬢、何を……」
「お二人のお気持ちは私には想像もできません。しかし、せっかくまた家族が巡り会えたのです、こんなに素晴らしいことなのに、なぜお二人はそんなに悲しそうなんです?」
「待って、スピカ? 何の……」
「勇気を出してください。お二人はとても苦しんだことでしょう、これ以上、苦しむことは無意味です。お二人は何も悪くなんてありません、むしろ今こうして頑なに真実を黙っていることこそが、何よりもの罪です」
「ねえ、スピカ!」
「ベル、聞いて? 黙っていたことは本当にごめんなさい、けれど、あなたと仲良くなる方法が他に思いつかなかったの」
「いやまあ、聞きたいことは山のようにあるけど、家族が巡り会えたって……」
「うん」
「意味がわからないよ……知っているかもしれないけど、僕は捨て子で、ずっと教会で……」
「誘拐だ」
フリード公が口を開いた。
まっすぐと、ベルの目を見てフリード公は言葉を続ける。
フリード公の、父親の口から次々と告げられるそれらの真実は、とても簡単に受け入れられるものではないだろう。
ベルは驚きと混乱の中で、そっと目を閉じた。
「それは……本当なの……?」
「真実だ、黙っていてすまなかった」
「そんな……」
「ベル、言って?」
「え?」
「自分の気持ちを言って?」
「……わかりません、なぜですか? なぜ、あなた達は僕をまるで空気のように扱うのですか!?」
「ベルンハルト……」
「僕は嬉しかったんだ、夢に見ていた家族を手に入れられると! けど、あなた達は僕に興味を抱かないどころか、目を合わせてもくれない、なぜなんですか!? どうして、今まで僕に本当のことを言ってくれなかったのですか!?」
「ベルンハルト、それは……!!」
勢いに任せて、ベルは今まで心の中に溜め込んでいたものを一気に吐き出すように言葉を重ねた。
すると、俯いて黙っていた公爵夫人がベルをまっすぐ見た。
「怖かったのです」
ベルの両親は、やっと彼と向き合ったのだ。
ベルの銀髪はフリード公に、赤い瞳は公爵夫人に、やっぱりそっくりだ。
しかし、目を合わせた公爵夫人はベルを見て涙を流していた。
「三年と四日です、あなたを失ってから一日だって忘れた日はありません、またあなたに会える日を希望に、ずっと生きていました……けれど、いざ再会すると私はあなたに対する罪悪感に襲われ、どうして守ってくれなかったと、責められるのが怖くなりました」
「私達は真実を隠した……そして、お前とどう接していいかわからなくなった、結果がこれだ……」
「ベルンハルト、あなたを!! もう二度と失いたくはないの、二度も失って、耐えていける自信はもうないの……」
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