『異世界でSWAT隊長になったが、部下が無職のドラゴンと婚活ウサギしか居ない件について〜 裁けぬ悪は、357マグナムとカツ丼で解決します〜』

月神世一

文字の大きさ
16 / 17
第二章 未来を見る犯罪集団ナンバーズ

EP 6

しおりを挟む
エネルギープラント防衛戦
​ 深夜。王都の北区画に位置する『第1魔導エネルギープラント』。
 巨大なパイプが複雑に絡み合い、魔力光(マナ・ライト)が脈打つこの施設は、太郎国の心臓部とも言える重要施設だ。
​ その正門前に、4つの影が現れた。
 仮面の集団、ナンバーズだ。
​「……ここが、私の覇道の礎となる場所か」
​ リーダーのゼロは、巨大なプラントを見上げて板チョコを齧った。
 龍魔呂に刻まれたトラウマは深かったが、この作戦さえ成功させれば、世界を書き換える力を手に入れられる。そうすれば、あんな化け物など恐れる必要はない。
​「ワン。道を開けろ」
「ヒャハハハ! 了解だボスゥ!!」
​ 巨漢のワンが前に出る。
 彼は分厚いミスリル合金製の防護壁に手を触れた。
​「壊レロォォォ!!」
​ ドォォォォォンッ!!
​ 衝撃波一閃。
 戦車の砲撃すら防ぐ防護壁が、まるで砂細工のように崩れ去った。
 警報が鳴り響く中、ナンバーズは悠々と敷地内へ侵入する。
​「敵襲! 敵襲ゥゥ!」
「魔法が効かない! ぐあああっ!」
​ 駆けつけた警備兵たちが次々と吹き飛ばされていく。
 ワンの暴力的な破壊力と、スリーのテレポートによる撹乱、フォーの千里眼による索敵。
 そして何より、ゼロの指揮が完璧すぎた。
​「……右からファイアボール。伏せろ」
「2秒後、足元から地雷魔法。スリー、転移だ」
​ ゼロはまるで台本を読んでいるかのように指示を出し、警備兵の攻撃を全て回避させていく。
​「退屈だね。……ん?」
​ ゼロがふと足を止めた。
 未来予知の視界に、紅蓮の炎と、音速の影が映ったからだ。
​「……ようやくお出ましだ」
​ ***
​「オラァァァ!! テロリスト共! そっから先は通行止めだァ!!」
​ 夜空から、炎を纏ったイグニスが急降下してきた。
 プラントの広場に着地すると同時に、巨大なクレーターを作る。
​「お待ちどうさま! 残業代稼ぎに来たわよ!」
​ 続いて、火花を散らしながらキャルルが高速で滑り込んでくる。
 そして最後に、ハンドガンを構えた鮫島が、瓦礫の陰から姿を現した。
​「……T-SWAT到着だ。全員、武器を捨てて投降しろ」
​ 鮫島の警告に、ゼロは肩をすくめた。
​「投降? ナンセンスだね。……君たちこそ、今すぐ回れ右をして帰るのが賢明だ。この先の未来、君たちには『敗北』しか用意されていない」
「やかましい! 未来なんて燃やせば変わらァ!!」
​ イグニスが吼え、グレートアクスを振りかぶる。
 真正面からのフルスイング。単純だが、それゆえに回避困難な暴力。
​「……2秒後。縦斬り。右へ半歩」
​ ゼロが呟く。
 ワンが指示通りに半歩だけ右に動いた。
 ブンッ!!
 イグニスの斧が、ワンの鼻先数センチを空振りし、地面を砕く。
​「なっ!? また避けやがった!?」
「隙ありィッ!」
​ イグニスの攻撃で生じた死角から、キャルルが飛び出す。
 音速の回し蹴りが、ゼロの側頭部を捉える――はずだった。
​「……左ハイキック。しゃがめ」
​ ゼロはその場にしゃがみ込み、靴紐を結び直すような動作をした。
 キィィィン!
 キャルルの蹴りが頭上を通過し、空気を切り裂く音だけを残す。
​「うそでしょ!? 私の速度が見えるわけないのに!」
「見えているのではない。『知っている』のだよ」
​ ゼロは立ち上がりながら、無防備になったキャルルの腹部に手をかざした。
​「ワン。衝撃波だ」
「ヒャハッ!」
​ ワンがゼロの背後から手を突き出し、キャルルに向けて衝撃波を放つ。
 ドォンッ!!
 至近距離での直撃。
​「きゃあああああッ!?」
​ キャルルが木の葉のように吹き飛ばされ、パイプの山に激突した。
 ルチアナ製の防護スーツのおかげで即死は免れたが、ダメージは深い。
​「キャルル!! ……チッ!」
​ 鮫島は即座にトリガーを引いた。
 狙うはゼロの眉間。だが、ゼロはすでにスリーの能力でその場から消えていた。
​「後ろだ、隊長さん」
​ 背後からの声。
 鮫島が振り返るより速く、見えない力が彼を弾き飛ばした。
​「ぐっ……!?」
​ 鮫島は地面を転がり、受け身を取って立ち上がる。
 目の前には、余裕の笑みを浮かべるゼロと、傷一つないナンバーズの面々。
 こちらの攻撃は一発も当たらない。
 あちらの攻撃は必中。
 これが『未来予知』のある戦場か。
​「無駄だと言ったはずだ。……君が次に撃つ弾丸の軌道も、そのトカゲが吐く炎の範囲も、全て私の脳内では『終わった過去』なのだよ」
​ ゼロは両手を広げ、プラントの中枢を指差した。
​「我々はこれから、あそこで魔力を回収する。……指をくわえて見ているといい。どう足掻いても、結果は変わらない」
​ 圧倒的な絶望感。
 イグニスが悔しげに地面を叩き、キャルルが苦悶の声を上げて蹲る。
 鮫島は口の中のキャンディを噛み砕き、冷や汗を拭った。
​(……クソッ。どうする? 物理も速度も通じない。予知の裏をかく? いや、裏をかこうとする思考すら読まれている……)
​ 万事休すかと思われた、その時。
​「おーい! 鮫島くーん! 奇遇だねぇ!」
​ 緊迫した空気をぶち壊す、間延びした声が響いた。
 全員が視線を向ける。
 プラントの入り口付近に、ジャージ姿の男が一人、ふらりと立っていた。
 手にはコンビニ袋。そして背後には、護衛のライザ騎士団長が青ざめた顔で控えている。
​「た、太郎王!? なぜこのような危険な場所に!」
「いやー、夜食のカップ麺を買いに出たら、なんか花火みたいな音したからさー」
​ この国の王、佐藤太郎だ。
 彼は戦場のど真ん中を、散歩コースのように歩いてくる。
​「……ん? なにあの仮面の人たち。劇団?」
​ ゼロの眉がピクリと動いた。
 未来予知には、この男の乱入など映っていなかった。
​「……誰だ、貴様は」
「俺? 太郎だよ。……あ、もしかしてテロリストさん? やだなー、深夜に騒音立てちゃダメだよ?」
​ 空気が凍りつく。
 だが、この予測不能な「異物」の乱入が、確定していたはずの未来を、大きく狂わせようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...