​異世界転移した俺のスキルは『丼マスター』!? 善行ポイントで牛丼を召喚して、最強の胃袋を支配する――勘違い聖人のグルメ無双、開店!

月神世一

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EP 14

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「う~ん……最近、私たち働きすぎよね」
ルナが、屋台のカウンターで頬杖をつきながら大きく伸びをした。
​「そうでんなぁ」
横でロードも、疲れ切ったように太い尻尾をだらりと下げている。
連日の大盛況。村人たちの胃袋を満たし、さらに噂を聞きつけた近隣の冒険者までが『丼亭よしき』に列をなすようになったため、良樹の善行ポイント稼ぎ(過酷なドブ掃除と医療行為)は限界に達しつつあった。
​「よっしゃ! じゃあ今日は店を休みにして、パーッと魚突きでもしに行こうぜ!」
いつものように特盛カツ丼を平らげたモウラが、ドカッと背中を叩いて提案した。
​「魚突き? ……魚釣り、でござるか? 拙者、地球でも釣りは好きだったでござる。楽しみでござるな」
良樹が『釣り』という平和なレジャーを想像し、ホッと息をつく。のんびりと糸を垂らして、夕暮れの川辺で過ごすのも悪くない。
​「やった~! 私、子供の頃から魚突きが得意だったの! お父さんに特訓してもらったんだから! 行きましょ!」
ルナがパァッと顔を輝かせて立ち上がった。
​「楽しみですなぁ。ワイ、あの脂の乗った身が大好物なんですわ」
ロードも涎を垂らしている。
​「ふむ……イントネーションの違いでござろうか。まぁ、郷に入っては郷に従え、でござるな。魚釣り、腕が鳴るでござる」
良樹はルンルン気分でエプロンを外し、三人と共に村のはずれにあるという『魚突き会場』へと向かった。
​しかし、良樹の平和な妄想は、会場に到着した瞬間に粉々に打ち砕かれた。
​「はい~、いらっしゃい! 一槍、500円だよ!」
村の広場に特設された巨大な生け簀。その前で、ねじり鉢巻をした村のオヤジが威勢よく叫んでいる。
そして、彼が良樹たちに手渡してきたのは、しなやかな釣り竿でも、ルアーでもなかった。
​全長1.5メートル、先端が鋭く尖った、鋼鉄の『槍』である。
​「……あの、これは?」
良樹は手渡された重い槍と、オヤジの顔を交互に見比べた。
「さ、魚釣り……ですよね? 釣り竿は? 糸は? 何故、拙者はこのような凶器を持たせられているのでござるか?」
​「何を寝惚けた事言ってるの、ヨシキさん」
ルナが不思議そうに首を傾げた。その手には、自前の使い込まれた短い槍がしっかりと握られている。
「今から、あの生け簀の中から『ピラダイ』が時速40キロで飛び出してくるのよ? それを空中で、この槍を投げて突き刺して獲るの! それがマンルシア大陸の『魚突き』でしょ?」
​「……」
良樹は絶句した。
​「突き立てのピラダイは、脂が乗ってて最高に旨いですからなぁ。ヨシキはんも、牛丼ばっかりやのうて、たまには新鮮な魚の味を覚えなはれ」
ロードが槍の石突きを器用に尻尾で転がしながら笑う。
​「アタイは塩焼きにして、頭から骨ごとバリバリ食べるのが好きさ! さぁ、ヨシキ、お前の腕前を見せてみろ!」
モウラが豪快に笑い、自分の背丈ほどもある長槍を片手で軽々と振り回した。
​ザバァァァァッ!!
​その時、生け簀の水面が爆発したように弾け飛んだ。
「ピギャァァァッ!!」
中から飛び出してきたのは、地球のピラニアを三回りほど大きくし、さらに凶悪な牙を生やした魚型魔獣――ピラダイの群れだった。
それらは文字通り、弾丸のような速度で空中に飛び出し、鋭い牙をカチカチと鳴らしながら見物客の頭上を飛び交っている。
​「そっかぁ……。釣りじゃなくて……魚突きか。フフフ……失敬、失敬……」
良樹は、空を飛ぶ凶悪な人食い魚の群れと、手元の長槍を交互に見つめ、乾いた笑いを漏らした。
​そして、次の瞬間。
​「って、そんなレジャーがあるかああああああぁぁぁッ!!!」
​良樹の悲鳴が、ダーナ村の青空に木霊した。
​「ヨシキさん! 左から来るわ!」
ルナが叫ぶと同時に、彼女は凄まじい身のこなしで宙を舞い、飛来したピラダイの眉間を短い槍で正確に貫いた。
「よっ、と! これで一匹!」
​「ギャハハ! アタイの獲物だ!!」
モウラは鎖を振るうように長槍を一閃させ、空中で三匹のピラダイをまとめて串刺し(バーベキュー状態)にしてみせた。
​「ひぃぃぃっ! こっちに来るなでござる! 拙者の魔眼(乱視)では捉えきれないでござるぅぅ!」
良樹は、時速40キロで迫り来る牙の塊から逃げ惑い、広場を縦横無尽に走り回っていた。
釣り堀ののんびりした休日など、この『アナステシア』世界には存在しない。あるのは常に、命懸けのサバイバル(と美味しいご飯)だけである。
​「ヨシキはん! そこや! 刺さんかい!」
「無理でござる! 拙者は牛丼屋の店長であって、槍兵ではないでござるよおおお!」
​ダーナ村の休日は、大漁のピラダイと、中二病青年の情けない悲鳴と共に、賑やかに過ぎていくのだった。
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