​異世界転移した俺のスキルは『丼マスター』!? 善行ポイントで牛丼を召喚して、最強の胃袋を支配する――勘違い聖人のグルメ無双、開店!

月神世一

文字の大きさ
15 / 21

EP 15

しおりを挟む
​村の広場に特設された巨大な生け簀。その水面を前に、ルナは1.5メートルほどある鋼鉄の槍を構え、じっと目を凝らしていた。
​「え、えっとぉ……」
一方の良樹は、手渡された無骨な長槍をへっぴり腰で構えたまま、ガタガタと膝を震わせている。
​バシャァァァッ!!
​突如、水面が爆発した。水しぶきを上げて空中に飛び出してきたのは、丸々と太った魚型魔獣・ピラダイ。凶悪な牙をカチカチと鳴らしながら、時速40キロの猛スピードで宙を舞う。
​「シュッ!」
ルナは一切の躊躇なく、腰のバネを使って手にした槍を空のピラダイに向かって全力で投擲した。
​ドスゥッ!!
鈍い音と共に、ルナの放った槍は見事にピラダイの眉間を貫き、地面に突き刺さった。
​「おぉ、やりまんなぁ。見事な急所突きやで、ルナはん」
生け簀の横でロードが感心したように太い尻尾を揺らす。
​「ヒィィィッ! い、異世界人、怖いでござるぅ!」
良樹は完全に腰を抜かしかけていた。可憐な美少女が、空飛ぶ人食い魚を槍投げで冷静に串刺しにする。ファンタジーという名の過酷な生態系を前に、中二病の装甲はあっさりと剥がれ落ちる。
​「ほら、ヨシキ。よそ見してんじゃないよ。お前の『槍が引いてる』ぞ」
隣に立っていたモウラが、ニヤニヤと笑いながら良樹の背中をバンッと力強く叩いた。
​「や、槍が引いてるって表現もおかしいでござる! 釣り竿じゃないんでござるから、引くわけが……」
良樹が抗議の声を上げようと水面に向き直った、その瞬間。
​ザバァァァァッ!!
​良樹の目の前の水面が割れ、通常の倍はあろうかという巨大なピラダイが、鋭い牙に涎を引かせながら良樹の顔面を目掛けて一直線に飛び出してきたのだ。
​「あ……」
良樹は恐怖のあまり声も出ず、完全にフリーズした。死ぬ。異世界に来て、魚の餌になって死ぬ。
​「よっと。ほら、ヨシキはん。しっかり握っときなはれ」
背後から、ぬるりとした太い腕が良樹の両腕を包み込んだ。ロードだ。
関西弁の賢竜は、良樹の手ごと長槍を強引に持ち上げ、飛び出してきたピラダイの軌道上へと鋭く切っ先を向けた。
​ズブゥッ!!
​「ギギャァァッ!?」
自らの突進の勢いが仇となり、巨大なピラダイは良樹(とロード)が構えた槍の先端から真っ直ぐに串刺しになった。重たい肉の塊が、良樹の腕にズシリと圧しかかる。
​「……えっ?」
良樹が呆然としていると、モウラが豪快に笑いながら良樹の肩をバシバシと叩いた。
​「ギャハハ! やるじゃねぇか、ヨシキ! なかなか肝の据わった構えだったぜ!」
「むぐっ……! し、死ぬかと思ったでござる……!」
​その光景を見ていたルナの顔が、むすっと不機嫌そうに膨らんだ。
「よぉし……! 私だって、負けないんだから!」
ルナは新たな槍を手に取り、先ほどよりもさらに鋭い殺気(対抗心)を水面へと放ち始めた。
​「もぅ……! 負けるとか勝つとか、どうでも良いでござるよ! 拙者はもう疲れたでござる、安全な家に帰らせてぇぇ!!」
良樹の悲痛な叫びは、次々と飛び出すピラダイの水音と、狩りに熱狂する異世界人たちの歓声にかき消されていった。
​数時間後。
広場の端に設けられた焚き火の周りには、香ばしい脂の焦げる匂いが充満していた。
あれだけ凶悪だったピラダイたちは、粗塩をたっぷりとまぶされ、こんがりと黄金色に焼き上げられていた。
​「んん~っ……! 美味しいぃっ!」
ルナが、熱々のピラダイの身を一口かじり、満面の笑みを浮かべた。パリッとした皮の下から、熱々の肉汁と上質な脂が溢れ出す。
​「最高やな! 骨ごとバリバリ出来まっせ!」
ロードは串ごと丸呑みにし、バキバキと頭の骨から噛み砕いていく。
​良樹も、まだ手が少し震えながらも、自分の串に刺さったピラダイを恐る恐る口に運んだ。
サクッ。
強烈な塩気と、それに負けないほどの魚の旨味が舌の上で爆発した。地球の高級魚すら霞むほどの、野性味溢れる濃密な味だった。
​「……美味い。結構旨いでござる、これ」
良樹は目を見開き、中二病のポーズも忘れて無我夢中でピラダイの身に齧り付いた。
​「だろぅ? これが旨いんだ。命懸けで獲った獲物の味は、どんな高級料理にも勝るってもんさ」
モウラが串の半分を一口で食いちぎりながら、ニカッと笑いかけた。
​「ふむ……確かに、この味を知ってしまえば、あの恐怖もスパイスというわけでござるな」
良樹はすっかり膨れたお腹をさすりながら、満足げに息をついた。
​釣り堀ののんびりした休日など存在しない。恐怖とサバイバルの果てにある、最高の美食。
良樹は、この『アナステシア』という世界の持つパワフルな魅力に、確実に胃袋を掴まれ始めていたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

死んだ土を最強の畑に変える「土壌神の恵み」〜元農家、異世界の食糧難を救い、やがて伝説の開拓領主になる〜

黒崎隼人
ファンタジー
土を愛し、土に愛された男、アロン。 日本の農家として過労死した彼は、不作と飢饉に喘ぐ異世界の貧しい村の少年として転生する。 そこは、栄養を失い、死に絶えた土が広がる絶望の土地だった。 だが、アロンには前世の知識と、土の状態を見抜き活性化させる異能『土壌神の恵み』があった! 「この死んだ土地を、世界で一番豊かな畑に変えてみせる」 一本のスコップと規格外の農業スキルで、アロンは大地を蘇らせていく。 生み出されるのは、異世界人がかつて味わったことのない絶品野菜と料理の数々。 飢えた村人を救い、病弱な公爵令嬢を元気にし、やがてその評判は国をも動かすことに――。 食で人々を繋ぎ、戦わずして国を救う。 最強の農家による、痛快異世界農業ファンタジー、ここに開幕!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

​『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』

月神世一
ファンタジー
マンションの5階でカレーを作っていたら、なぜかトラックが突っ込んできた件。 ​外科医を目指す医学生・中村優太(24)は、特製の絶品バターチキンカレーを食べる寸前、マンションの「5階」に突撃してきた理不尽なトラックによって命を落としてしまう。 ​目を覚ますと、そこはコタツでカップ麺を啜るジャージ姿の駄女神・ルチアナの部屋だった。 「飲み会があるから定時で帰りたい」と適当な理由で異世界転移をさせられそうになる優太だったが、怒りのガラポン抽選でユニークスキル【地球ショッピング】と【女神ルチアナこき使い権】を引き当てる! ​かくして、ポンコツ女神を強制連行して剣と魔法の世界『アナステシア』に降り立った優太。 しかし、彼にはただのチートスキルだけではない、元SEALs直伝の「CQB(近接戦闘術)」、有段者の「薙刀術」、そして何より「現代医療の知識」があった――! ​降り立った辺境のポポロ村で彼を待っていたのは、クセが強すぎる住人たち。 ​キャルル: マッハの飛び蹴りを放つ、ファミレス大好きなウサ耳村長。 ​リーザ: タダ飯とポイ活に命を懸ける、図太すぎる地下アイドル人魚。 ​ルナ: 善意で市場や生態系を破壊する、歩く大災害の天然エルフ。 ​ルチアナ: 優太のポイントでソシャゲ課金と酒を目論む、労働拒否の駄女神。 ​優太は【地球ショッピング】で召喚した現代物資と、自身のサバイバル能力&薙刀術で野盗や魔物を無双! さらには特製のスパイスカレーで異世界人の胃袋を完全に掌握していく。 ​そして、村人に危機が迫った時。 優太の「絶対に命を救う」という善意の心が、奇跡の黄金ガチャを引き起こす……! ​「俺は医者だ。この村の命も、平和な日常も、俺の戦術(スキル)で全部守り抜く!」 ​現代の【医療・戦術・料理】×【理不尽ギャグ】×【異世界サバイバル】! 凶悪な「ワスプ薙刀」を振るい、ヤバすぎる仲間たちと送る、最強医学生のドタバタ辺境防衛ライフが今始まる!

『異世界味噌料理人』〜腹を満たす一杯から、世界は動き出す〜

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
事故をきっかけに異世界へ転移した料理人タクミ。流れ着いた小さな村で彼が目にしたのは、味も栄養も足りない貧しい食事だった。 「腹が満ちれば、人は少しだけ前を向ける。」 その思いから、タクミは炊事場を手伝い、わずかな工夫で村の食卓を変えていく。やがて彼は、失われた発酵技術――味噌づくりをこの世界で再現することに成功する。 だが、保存が利き人々を救うその技術は、国家・商人・教会までも動かす“戦略食料”でもあった。 これは、一杯の料理から始まる、食と継承の長編異世界物語。 【更新予定】 現在ストックがありますので、しばらくの間は毎日21時更新予定です。 応援いただけると更新ペースが上がるかも?笑

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

処理中です...