​魔法少女ドジっ子ルナちゃん!愛の貢ぎ物が72時間で石に戻り、F級冒険者の僕が指名手配されました

月神世一

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第二章 悪徳地上げ屋ルナちゃん爆誕

EP 5

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魔界温泉ランド建設開始(地獄の着工)
 ゴルド商会との地獄の契約から数日後。
 俺たちは、自分たちで破壊し尽くして更地になった『虹の渓谷』に戻ってきていた。
「……ここにな、一ヶ月で城を建てるんだ」
 俺は乾いた笑いを浮かべた。
 目の前に広がるのは、見渡す限りの荒野。クレーター。瓦礫。
 ここにリゾート? 無理だろ。テントを張るのが関の山だ。
「甘いぞ、リカル! 諦めるにはまだ早い!」
 怒号と共に、作業着(ツナギ)を着て、頭に「安全第一」と書かれたヘルメットを被った男が現れた。
 元・魔王、現・現場監督のヴァーミリオンだ。
「余を見ろ! この日のために魔王軍工兵隊と、闇のルートで雇ったドワーフ建築団を連れてきたぞ!」
 魔王が指差す先には、数千体のオークやゴブリン、そして屈強なドワーフたちが整列していた。
 彼らの目は死んでいる。……いや、過労と恐怖でキマっている。
「いいか貴様ら! 休みなどないと思え! 眠くなったらポーションを飲め! 死んだらネクロマンシーで叩き起こして働かせる! わかったかぁぁぁ!!」
『イエッサー、魔王様(現場監督)!!』
 ブラックだ。真っ黒だ。
 だが、このブラック企業こそが今の俺たちの頼みの綱だった。
 ◇
 【建築フェーズ:ルナの「森」生成】
「まずは建材だ! 木材が足りん!」
「お任せください魔王さん! 私が植林しますわ!」
 ルナが荒野の中心に立ち、杖を掲げる。
「木よ、生えなさい! ……『インスタント・ジャングル(即席樹海)』!」
 ドゴゴゴゴゴゴッ!!
 地面が裂け、タケノコのような勢いで巨木が次々と生えてくる。
 数秒で、荒野が鬱蒼とした密林に変わった。
 ……が。
「おいルナ! これ、木が動いてねぇか!?」
「あ、活性化させすぎて『トレント(人食い植物)』になっちゃいました!」
「建材が人(作業員)を食ってるじゃねーか!!」
 現場は阿鼻叫喚となったが、ネギオが「間引き」と称してトレントを片っ端から切り倒し、結果として最高級の木材が確保された。
 ◇
 【掘削フェーズ:地獄の源泉】
「次はメインの温泉だ! 余の魔眼によれば、この地下深くに極上の源泉があるはずだ!」
 魔王が地面にバツ印をつける。
 本来なら数ヶ月かけて掘削する作業だが、我々には「ドリル」がいた。
「私にお任せを! 地面の底まで掘り進みますわ!」
「よしルナ、手加減しろよ? マントルまで行くなよ?」
「はい! ――『ギガ・ドリル・ブレイク(螺旋穿孔)』!!」
 ルナの杖の先端に、竜巻状の魔力ドリルが形成される。
 それは豆腐のように岩盤を貫き、地中深くへと潜っていった。
 ズドォォォォォォォォン!!
 数分後。
 ドリルの穴から、「プシューッ!」という音と共に、真っ赤な液体が天高く噴き上がった。
「で、出たぁぁぁ! 温泉だ!」
「……待てリカル。色が赤くないか?」
「熱湯か? ……いや、なんかドロドロしてないか?」
 噴き出したのは、透明なお湯ではなく、血のように赤い、そして毒々しい色の液体だった。
 硫黄の匂いと、ほのかな「魔界の瘴気」が漂っている。
「……マグマ溜まりと魔力溜まりを同時にぶち抜いたようだな」
 魔王が額の汗を拭う。
「これは『地獄の血の池』……いや、『極上の薬湯』だ!」
「ポジティブすぎるだろ! 人間が入って大丈夫なのか!?」
「実験台が必要だな」
 魔王とネギオの視線が、同時に俺に向いた。
「……え? 俺?」
「どうぞ、リカル様。一番風呂ですわ!」
 ドボンッ!
 俺は背中を押され、赤い池に突き落とされた。
「あ、あぢぢぢぢぢぃぃぃ!! 死ぬ! 溶ける!」
 全身に走る激痛。
 だが、数秒後。痛みが不思議な「爽快感」に変わっていくのを感じた。
「……あれ? 気持ちいい……?」
 恐る恐る湯から上がると、俺の肌はゆで卵のようにツルツルになり、虹色のオーラを放っていた。
 肩こりも腰痛も消え失せ、体の中に力がみなぎっている。
「す、すげぇ! 若返ったぞ!」
「成功だな。……ただし、魔素が濃すぎて、長時間入ると『角』が生えてくるかもしれんが」
「効能に『魔族化』って書いとけ!」
 こうして、メインコンテンツである**「地獄めぐりの湯(効能:超回復&魔族化)」**が完成した。
 ◇
 【建設フェーズ:一夜城】
 一週間後。
 不眠不休のドワーフと、ルナの魔法、ネギオの効率的すぎる現場指揮により、荒野には巨大な建造物がそびえ立っていた。
 黒曜石でできた外壁。
 毒々しいネオンで光る看板。
 屋根にはなぜか、巨大な「ルナの石像(杖を構えている)」が設置されている。
 名付けて、『スーパー・リゾート・魔王温泉ランド』。
「か、完成した……」
 俺はボロボロになったツナギ姿で、完成した城を見上げた。
 禍々しい。どう見てもラスボスの城だ。
 だが、中身は豪華絢爛なホテルと、世界最高(最恐)の温泉施設。
「クックック……素晴らしい。これなら人間どもから金を巻き上げられるぞ」
 魔王ヴァーミリオンも、泥だらけの顔で満足げに笑っている。
 あいつ、元魔王のくせに、この一週間で完全に「頼れる親方」になっていた。
「ネギオ、収支計算は?」
「初期投資、ほぼゼロ(現地調達と労働搾取のため)。維持費も、ルナ様の魔力供給で賄えます。……客さえ入れば、利益率は驚異の99%ですね」
「勝った……!」
 俺は拳を突き上げた。
 これなら、一ヶ月で10億の利益も夢じゃない。借金返済への道が開けた!
 だが、俺は気づいていなかった。
 ネギオが手帳に、不穏なメモを書き込んでいたことに。
 『業務日誌:魔王ヴァーミリオンの現場指揮能力は評価に値する。……が、経営者としての資質には疑問あり。組織改編(クーデター)の準備を進める』
 温泉ランドの完成と共に、魔王軍内部での「権力闘争」の幕が上がろうとしていた。
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