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第二章 悪徳地上げ屋ルナちゃん爆誕
EP 4
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50億の土下座と悪魔の契約書
大陸経済の中心地、王都ルミナス。
その一等地にそびえ立つ、純金でコーティングされた趣味の悪い超高層ビル――ゴルド商会本社ビル。
その最上階、プレジデント・ルーム。
革張りの重厚なソファに沈み込むように座っていたのは、ゴルド商会総帥、プレジデント・ゴルドだ。
「……ほう。逃げ回っていたネズミが、自ら猫の腹の中に入ってくるとはな」
会長が葉巻をくゆらせながら、ギロリと俺たちを睨む。
部屋の周囲には、Sランク級の私兵団がズラリと並び、剣や杖を構えている。
少しでも動けば、俺(Fランク)は一瞬で挽肉だ。
「へ、へへ……。会長様にお会いできて光栄です……」
俺は脂汗をダラダラと流しながら、引きつった愛想笑いを浮かべた。
隣には、ニコニコと部屋の装飾(金ピカ)を眺めているルナと、無表情でスーツを着こなすネギオ。
「それで? 命乞いに来たのか? それとも、100億ゴールドを持ってきたのか?」
会長が机をバン! と叩く。
「金が無いなら、今すぐその娘(ルナ)の魔力を発電所に繋いで、死ぬまで電気を作らせるぞ」
「ひぃッ!? そ、それだけは!」
俺はネギオに目配せをした。
ネギオが無言で前に進み出て、背負っていた巨大な風呂敷包みを、会長のデスクの上にドスンと置く。
「……なんだ、これは?」
「手付金です」
俺が叫ぶと同時に、ネギオが風呂敷を解いた。
ジャララララッ……!!
部屋中の照明を反射して、眩い光が溢れ出した。
最高純度の魔石、オリハルコンの塊、伝説の勇者の武具、古代王朝の宝冠……。
魔王が300年かけて集めた「闇の財宝」が、山となって現れた。
「なっ……!?」
「こ、これは……!!」
会長の目が点になり、周囲の兵士たちが息を呑む。
さすがの大富豪も、これほどの現物資産を一度に見たことはないだろう。
「ざっと見積もって50億ゴールド相当です! これを……借金の半額返済として受け取ってください!」
俺は叫んだ。そして、人生で一番美しいフォームで――
ズザァァァァァァァッ!!
床を滑りながらの、ジャンピング・スライディング土下座を決めた。
「お願いします! 残りの50億は分割払いで! 殺さないでくださいぃぃぃ!!」
静寂が部屋を支配した。
会長は葉巻を落とし、震える手でオリハルコンの延べ棒を手に取った。
「……本物だ。しかも、市場に出回っていない極上品……」
会長の目が、値踏みをする商人の目(¥マーク)に変わる。
「おい小僧。これだけの財宝、どこで手に入れた? まさか、本当に魔王城から盗んできたのか?」
「そ、それは企業秘密ということで……!」
「ふん、まあいい。金に色はついていないからな」
会長はニヤリと笑い、財宝の山を手で囲い込んだ。
「よかろう。この50億は受け取ってやる。……だがな」
空気が一変した。
会長の殺気が膨れ上がり、俺の肌を刺す。
「残り50億。これをどう返すつもりだ? 今の貴様は無職の住所不定無職だろう?」
「そ、それは……じ、事業を始めようかと……」
「事業だと?」
「はい! 温泉リゾートです! 土地はもう確保しました!」
俺は必死に説明した。
虹の渓谷で湧き出た魔力温泉のこと。そこに一大レジャーランドを作る計画のこと。
「……ほう。あの『呪われた土地(お前らが呪った)』を安く買い叩き、開発する気か。……悪くない商才だ」
会長が少しだけ感心したように頷く。
だが、すぐに冷酷な宣告を下した。
「だが、待てん。私の忍耐は高価でな」
会長は懐から一枚の羊皮紙を取り出し、羽根ペンでサラサラと何かを書き込んだ。
「期限は一ヶ月だ」
「は? 一ヶ月!?」
「そうだ。一ヶ月後の今日までに、その温泉ランドを完成させ、グランドオープンさせろ。そして、初月の売上で利益10億を出せ」
無理だ。絶対に無理だ。
あそこはまだ更地だぞ? 建設して、客を呼んで、10億稼ぐ?
Fランクの俺にできるわけがない。
「できなければ……この契約書通り、貴様らの全臓器と魂を没収する。サインしろ」
悪魔の契約書が目の前に突きつけられる。
「リカル様、サインしましょう!」
横からルナが能天気に口を挟んだ。
「おじさん、お金だけじゃなくて、魂も好きなんですね! 欲張りさんですわ!」
「黙れ小娘! ……どうするリカル? ここで死ぬか、一ヶ月あがいてみるか?」
選択肢なんてなかった。
俺は震える手でペンを取り、契約書にサインをした。
『リカル・シンフォニア(ルナが勝手に籍を入れたことになっている)』
「よし、契約成立だ! 失せろ!」
◇
【ゴルド商会ビル・出口】
「はぁ……はぁ……生き返った……」
ビルの外に出た瞬間、俺はその場にへたり込んだ。
寿命が30年くらい縮んだ気がする。
「やりましたわリカル様! これでまた美味しいご飯が食べられます!」
「呑気だなルナ……。あと一ヶ月だぞ? あと一ヶ月で、あの荒野に城を建てて、客を呼ばなきゃならないんだぞ?」
絶望的なミッションだ。
だが、やるしかない。
「帰りましょう、リカル様。魔王さんが穴を掘って待ってますわ」
「……ああ。帰ろう、俺たちの『王国(温泉ランド)』へ」
こうして、俺は50億の借金を背負ったまま、魔王と手を組み、地獄の突貫工事へと挑むことになった。
この時の俺はまだ知らなかった。
ルナが温泉を掘りすぎて「地獄の釜(マグマ溜まり)」をぶち抜くことも。
ネギオが「魔王軍の乗っ取り」を画策していることも。
一ヶ月後、俺がなぜか「魔王」として世界にお披露目されることも。
運命のグランドオープンまで、あと30日。
大陸経済の中心地、王都ルミナス。
その一等地にそびえ立つ、純金でコーティングされた趣味の悪い超高層ビル――ゴルド商会本社ビル。
その最上階、プレジデント・ルーム。
革張りの重厚なソファに沈み込むように座っていたのは、ゴルド商会総帥、プレジデント・ゴルドだ。
「……ほう。逃げ回っていたネズミが、自ら猫の腹の中に入ってくるとはな」
会長が葉巻をくゆらせながら、ギロリと俺たちを睨む。
部屋の周囲には、Sランク級の私兵団がズラリと並び、剣や杖を構えている。
少しでも動けば、俺(Fランク)は一瞬で挽肉だ。
「へ、へへ……。会長様にお会いできて光栄です……」
俺は脂汗をダラダラと流しながら、引きつった愛想笑いを浮かべた。
隣には、ニコニコと部屋の装飾(金ピカ)を眺めているルナと、無表情でスーツを着こなすネギオ。
「それで? 命乞いに来たのか? それとも、100億ゴールドを持ってきたのか?」
会長が机をバン! と叩く。
「金が無いなら、今すぐその娘(ルナ)の魔力を発電所に繋いで、死ぬまで電気を作らせるぞ」
「ひぃッ!? そ、それだけは!」
俺はネギオに目配せをした。
ネギオが無言で前に進み出て、背負っていた巨大な風呂敷包みを、会長のデスクの上にドスンと置く。
「……なんだ、これは?」
「手付金です」
俺が叫ぶと同時に、ネギオが風呂敷を解いた。
ジャララララッ……!!
部屋中の照明を反射して、眩い光が溢れ出した。
最高純度の魔石、オリハルコンの塊、伝説の勇者の武具、古代王朝の宝冠……。
魔王が300年かけて集めた「闇の財宝」が、山となって現れた。
「なっ……!?」
「こ、これは……!!」
会長の目が点になり、周囲の兵士たちが息を呑む。
さすがの大富豪も、これほどの現物資産を一度に見たことはないだろう。
「ざっと見積もって50億ゴールド相当です! これを……借金の半額返済として受け取ってください!」
俺は叫んだ。そして、人生で一番美しいフォームで――
ズザァァァァァァァッ!!
床を滑りながらの、ジャンピング・スライディング土下座を決めた。
「お願いします! 残りの50億は分割払いで! 殺さないでくださいぃぃぃ!!」
静寂が部屋を支配した。
会長は葉巻を落とし、震える手でオリハルコンの延べ棒を手に取った。
「……本物だ。しかも、市場に出回っていない極上品……」
会長の目が、値踏みをする商人の目(¥マーク)に変わる。
「おい小僧。これだけの財宝、どこで手に入れた? まさか、本当に魔王城から盗んできたのか?」
「そ、それは企業秘密ということで……!」
「ふん、まあいい。金に色はついていないからな」
会長はニヤリと笑い、財宝の山を手で囲い込んだ。
「よかろう。この50億は受け取ってやる。……だがな」
空気が一変した。
会長の殺気が膨れ上がり、俺の肌を刺す。
「残り50億。これをどう返すつもりだ? 今の貴様は無職の住所不定無職だろう?」
「そ、それは……じ、事業を始めようかと……」
「事業だと?」
「はい! 温泉リゾートです! 土地はもう確保しました!」
俺は必死に説明した。
虹の渓谷で湧き出た魔力温泉のこと。そこに一大レジャーランドを作る計画のこと。
「……ほう。あの『呪われた土地(お前らが呪った)』を安く買い叩き、開発する気か。……悪くない商才だ」
会長が少しだけ感心したように頷く。
だが、すぐに冷酷な宣告を下した。
「だが、待てん。私の忍耐は高価でな」
会長は懐から一枚の羊皮紙を取り出し、羽根ペンでサラサラと何かを書き込んだ。
「期限は一ヶ月だ」
「は? 一ヶ月!?」
「そうだ。一ヶ月後の今日までに、その温泉ランドを完成させ、グランドオープンさせろ。そして、初月の売上で利益10億を出せ」
無理だ。絶対に無理だ。
あそこはまだ更地だぞ? 建設して、客を呼んで、10億稼ぐ?
Fランクの俺にできるわけがない。
「できなければ……この契約書通り、貴様らの全臓器と魂を没収する。サインしろ」
悪魔の契約書が目の前に突きつけられる。
「リカル様、サインしましょう!」
横からルナが能天気に口を挟んだ。
「おじさん、お金だけじゃなくて、魂も好きなんですね! 欲張りさんですわ!」
「黙れ小娘! ……どうするリカル? ここで死ぬか、一ヶ月あがいてみるか?」
選択肢なんてなかった。
俺は震える手でペンを取り、契約書にサインをした。
『リカル・シンフォニア(ルナが勝手に籍を入れたことになっている)』
「よし、契約成立だ! 失せろ!」
◇
【ゴルド商会ビル・出口】
「はぁ……はぁ……生き返った……」
ビルの外に出た瞬間、俺はその場にへたり込んだ。
寿命が30年くらい縮んだ気がする。
「やりましたわリカル様! これでまた美味しいご飯が食べられます!」
「呑気だなルナ……。あと一ヶ月だぞ? あと一ヶ月で、あの荒野に城を建てて、客を呼ばなきゃならないんだぞ?」
絶望的なミッションだ。
だが、やるしかない。
「帰りましょう、リカル様。魔王さんが穴を掘って待ってますわ」
「……ああ。帰ろう、俺たちの『王国(温泉ランド)』へ」
こうして、俺は50億の借金を背負ったまま、魔王と手を組み、地獄の突貫工事へと挑むことになった。
この時の俺はまだ知らなかった。
ルナが温泉を掘りすぎて「地獄の釜(マグマ溜まり)」をぶち抜くことも。
ネギオが「魔王軍の乗っ取り」を画策していることも。
一ヶ月後、俺がなぜか「魔王」として世界にお披露目されることも。
運命のグランドオープンまで、あと30日。
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