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第二章 悪徳地上げ屋ルナちゃん爆誕
EP 3
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10億の買い物と50億の手付金
ルナの「ゴーレム・パレード」による破壊工作から一夜明けた、虹の渓谷。
かつての美しい景勝地は、巨大な足跡とクレーターだらけの荒野に変貌していた。
「ひぃぃぃ! 売ります! 売りますから助けてくれぇぇ!」
仮設テントの中、土地の所有者である強欲地主が、涙と鼻水を流して契約書にサインをしていた。
目の前には、変装した魔王ヴァーミリオン(胡散臭い不動産屋風)と、リカル(その助手)。
「うむ。賢明な判断だ。この『呪われた土地』を浄化できるのは我々だけだからな」
「いくらでもいい! 10億……いや、5億でもいいから買い取ってくれ!」
「ふん、足元を見おって。……まあ良かろう、10億ゴールドで手を打ってやる」
魔王が懐から、魔界の隠し口座から引き出した小切手を放り投げる。
地主はそれをひったくると、「これで逃げられるぅぅ!」と叫びながら、裸足で逃走していった。
「……チョロいもんだ」
魔王が悪党の顔で笑う。
これで、かつて50億以上の価値があった広大な土地が、たった10億で我々のものになった。
◇
「さあ、これで土地は確保した! ここに『魔界温泉ランド』を建設し、人間どもから金を搾り取ってやる!」
荒野の真ん中で、魔王が高らかに宣言する。
だが、俺(リカル)の顔は晴れなかった。
「……おい、ヴァーミリオン社長。土地は手に入ったが、一番の問題が残ってるぞ」
「なんだ?」
「ゴルド商会への借金だよ! 返済期限は明日だぞ!」
そう、俺の首には100億ゴールドの懸賞金がかかっている。
土地を買ったところで、ゴルド商会を黙らせる「現金」がなければ、明日には俺たちは鉱山送りだ。
「土地の権利書を担保にしても、今の評価額じゃ二束三文だ。……詰んだか?」
俺が絶望的な溜息をついた時、魔王が静かに口を開いた。
「……リカルよ。貴様らを見ていると、余の若き日を思い出すわ」
「は?」
「無謀で、馬鹿で、だが底知れぬ力を持っている。……昨夜のゴーレム行進を見て確信した。貴様らとなら、世界を取れるとな」
魔王は真剣な眼差しで、虚空に手を突き出した。
「――開け、『奈落の金庫(アビス・ヴォールト)』」
ズズズズズ……。
空間が歪み、漆黒の穴が開く。
そこから魔王が取り出したのは、巨大な宝箱だった。
「こ、これは……?」
「余が300年かけて貯めた、世界征服のための軍資金……通称『魔王のへそくり』だ」
パカッ。
宝箱が開かれる。
中に入っていたのは、目もくらむような大量の「最高級魔石」と、かつて勇者たちから奪い取った「伝説級の武具」の数々だった。
「ネギオ、鑑定せよ」
「……御意。希少金属オリハルコンの延べ棒、世界樹の雫、勇者アルヴァンの聖剣(本物)……。ざっと見積もって、現金化すれば50億ゴールドにはなりますね」
「ご、50億!?」
俺は叫んだ。100億の半分だ。
「これを使え、リカル」
「えっ? いいのか? これ、あんたの夢(世界征服)のための金だろ?」
「勘違いするな。これは投資だ」
魔王はニヤリと笑い、宝箱を俺たちの前にドンと置いた。
「この50億を『手付金』としてゴルド商会に叩きつけ、時間を稼げ。その間に、この土地で温泉リゾートを完成させ、残りの50億……いや、1000億を稼ぎ出すのだ!」
カッコいい。
悔しいが、今のこいつは魔王らしくてカッコいい。
「……わかった。預かるよ、パートナー」
俺は震える手で宝箱を受け取った。
これで首の皮一枚繋がった。
「あら、リカル様。お金がいっぱいですわね!」
「ああ、ルナ。これで殺されずに済むぞ」
「じゃあ、このお金で美味しいケーキを買いましょう!」
「買わねーよ! 全額返済に回すんだよ!」
◇
こうして軍資金を手に入れた俺たちは、すぐさま行動を開始した。
目指すは、ゴルド商会の本社ビル。
この50億という大金を武器に、あの強欲会長との「命を賭けた交渉(土下座)」に挑むのだ。
「行くぞネギオ、ルナ。……ここからが本当の戦いだ」
「御意。スーツの準備はできています」
「ピクニックですわね! お弁当持ちました!」
俺たちは、魔王に見送られながら荒野を後にした。
背後では、魔王がさっそくスコップを持って地面を掘り始めていた。
「……頼んだぞリカル! 余はここでトイレ予定地の穴を掘っておくからなー!」
……あいつ、意外と真面目だな。
しかし、俺たちは知らなかった。
ゴルド商会に50億を持っていけば、それで解決するほど甘くはないことを。
「怪しい金」を持ってきたことで、逆に会長の「強欲スイッチ」を押してしまうことを。
ルナの「ゴーレム・パレード」による破壊工作から一夜明けた、虹の渓谷。
かつての美しい景勝地は、巨大な足跡とクレーターだらけの荒野に変貌していた。
「ひぃぃぃ! 売ります! 売りますから助けてくれぇぇ!」
仮設テントの中、土地の所有者である強欲地主が、涙と鼻水を流して契約書にサインをしていた。
目の前には、変装した魔王ヴァーミリオン(胡散臭い不動産屋風)と、リカル(その助手)。
「うむ。賢明な判断だ。この『呪われた土地』を浄化できるのは我々だけだからな」
「いくらでもいい! 10億……いや、5億でもいいから買い取ってくれ!」
「ふん、足元を見おって。……まあ良かろう、10億ゴールドで手を打ってやる」
魔王が懐から、魔界の隠し口座から引き出した小切手を放り投げる。
地主はそれをひったくると、「これで逃げられるぅぅ!」と叫びながら、裸足で逃走していった。
「……チョロいもんだ」
魔王が悪党の顔で笑う。
これで、かつて50億以上の価値があった広大な土地が、たった10億で我々のものになった。
◇
「さあ、これで土地は確保した! ここに『魔界温泉ランド』を建設し、人間どもから金を搾り取ってやる!」
荒野の真ん中で、魔王が高らかに宣言する。
だが、俺(リカル)の顔は晴れなかった。
「……おい、ヴァーミリオン社長。土地は手に入ったが、一番の問題が残ってるぞ」
「なんだ?」
「ゴルド商会への借金だよ! 返済期限は明日だぞ!」
そう、俺の首には100億ゴールドの懸賞金がかかっている。
土地を買ったところで、ゴルド商会を黙らせる「現金」がなければ、明日には俺たちは鉱山送りだ。
「土地の権利書を担保にしても、今の評価額じゃ二束三文だ。……詰んだか?」
俺が絶望的な溜息をついた時、魔王が静かに口を開いた。
「……リカルよ。貴様らを見ていると、余の若き日を思い出すわ」
「は?」
「無謀で、馬鹿で、だが底知れぬ力を持っている。……昨夜のゴーレム行進を見て確信した。貴様らとなら、世界を取れるとな」
魔王は真剣な眼差しで、虚空に手を突き出した。
「――開け、『奈落の金庫(アビス・ヴォールト)』」
ズズズズズ……。
空間が歪み、漆黒の穴が開く。
そこから魔王が取り出したのは、巨大な宝箱だった。
「こ、これは……?」
「余が300年かけて貯めた、世界征服のための軍資金……通称『魔王のへそくり』だ」
パカッ。
宝箱が開かれる。
中に入っていたのは、目もくらむような大量の「最高級魔石」と、かつて勇者たちから奪い取った「伝説級の武具」の数々だった。
「ネギオ、鑑定せよ」
「……御意。希少金属オリハルコンの延べ棒、世界樹の雫、勇者アルヴァンの聖剣(本物)……。ざっと見積もって、現金化すれば50億ゴールドにはなりますね」
「ご、50億!?」
俺は叫んだ。100億の半分だ。
「これを使え、リカル」
「えっ? いいのか? これ、あんたの夢(世界征服)のための金だろ?」
「勘違いするな。これは投資だ」
魔王はニヤリと笑い、宝箱を俺たちの前にドンと置いた。
「この50億を『手付金』としてゴルド商会に叩きつけ、時間を稼げ。その間に、この土地で温泉リゾートを完成させ、残りの50億……いや、1000億を稼ぎ出すのだ!」
カッコいい。
悔しいが、今のこいつは魔王らしくてカッコいい。
「……わかった。預かるよ、パートナー」
俺は震える手で宝箱を受け取った。
これで首の皮一枚繋がった。
「あら、リカル様。お金がいっぱいですわね!」
「ああ、ルナ。これで殺されずに済むぞ」
「じゃあ、このお金で美味しいケーキを買いましょう!」
「買わねーよ! 全額返済に回すんだよ!」
◇
こうして軍資金を手に入れた俺たちは、すぐさま行動を開始した。
目指すは、ゴルド商会の本社ビル。
この50億という大金を武器に、あの強欲会長との「命を賭けた交渉(土下座)」に挑むのだ。
「行くぞネギオ、ルナ。……ここからが本当の戦いだ」
「御意。スーツの準備はできています」
「ピクニックですわね! お弁当持ちました!」
俺たちは、魔王に見送られながら荒野を後にした。
背後では、魔王がさっそくスコップを持って地面を掘り始めていた。
「……頼んだぞリカル! 余はここでトイレ予定地の穴を掘っておくからなー!」
……あいつ、意外と真面目だな。
しかし、俺たちは知らなかった。
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