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第二章 悪徳地上げ屋ルナちゃん爆誕
EP 2
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百鬼夜行(ゴーレム・パレード)
深夜2時。
ターゲットとなる土地『虹の渓谷』を見下ろす丘の上に、俺と魔王ヴァーミリオンは潜伏していた。
「ククク……そろそろだな」
魔王が悪い顔で笑う。
「今のこの土地の相場は50億ゴールド。だが、今夜から毎晩『謎の地響き』や『不気味な影』が出没すれば、噂は瞬く間に広がる。一週間もすれば、住民は逃げ出し、買い手がつかない『呪われた土地』として暴落する寸法よ」
「……本当に大丈夫か? ルナに『お散歩』を頼んだだけだぞ?」
俺は不安だった。
あの天然娘に、適度な「脅かし」なんて器用な真似ができるとは思えない。
「案ずるな。所詮は人間の娘が作るゴーレムだ。せいぜい土人形が数体、ウロウロする程度だろう。可愛らしいものよ」
魔王は余裕綽々でワイン(安物)を傾けた。
その時だった。
ズゥゥゥゥゥン……。
地面が揺れた。
コップの中のワインが、ジュラシックな映画のように波紋を広げる。
「む? 地震か?」
「いや、違う……。あの足音のリズムは……」
ズシン!! ズシン!! ズシン!!
リズムに合わせて、木々がバキバキと薙ぎ倒される音が近づいてくる。
そして、闇の向こうから、明るい歌声が聞こえてきた。
「あ~るこ~♪ あ~るこ~♪ わたしはげんき~♪」
ルナだ。
彼女は渓谷の入り口を、楽しそうにスキップしていた。
問題は、彼女が引き連れている「ペット(ゴーレム)」たちだ。
「……おい、魔王」
「……なんだ、リカル」
「あれ、土人形か?」
俺たちが目にしたのは、月明かりに照らされた異形の行進だった。
先頭を歩くのは、身長30メートルはある「超重機動要塞型ゴーレム」。素材はまさかのミスリル製で、歩くたびに銀色の火花を散らしている。
その後ろには、首が三つある「ケルベロス型ゴーレム」。口から溶岩をヨダレのように垂らしている。
さらに上空には、石でできた「ガーゴイル編隊」が数百体、戦闘機のように旋回していた。
「……」
「……」
魔王がワイングラスを握りつぶした。
「軍隊だァァァァァ!! 呪いとかそういうレベルじゃねぇ! 侵略戦争だァァァァ!!」
「ルナァァァ! お前、素材どこから持ってきた!?」
俺の叫び声など届くはずもなく、ルナは楽しそうに指揮棒(世界樹の杖)を振る。
「さあポチ(要塞型)、タマ(ケルベロス型)! 元気に走りましょうね! かけっこですわ!」
グオォォォォォォン!!
ルナの号令と共に、ゴーレム軍団が全力疾走を開始した。
30メートルの巨体が走る。それはもはや天変地異だ。
渓谷の地形が変わる。川の流れが変わる。山が削れる。
◇
【渓谷の麓・地主の屋敷】
「ひ、ひぃぃぃ! な、なんだあれはぁぁぁ!」
この土地を所有する強欲な地主が、窓から外を見て腰を抜かしていた。
窓の外には、満月を背に咆哮するケルベロス(石)と、山を踏み砕く巨人(銀)のシルエット。
この世の終わりの光景だった。
「じ、地獄の蓋が開いたんだ! ここは呪われた土地なんかじゃない、魔界の最前線だぁぁぁ!」
「旦那様! 逃げましょう! 屋敷が揺れで倒壊しますぅぅ!」
使用人たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。
地主もまた、金庫の中身だけを掴んで裸足で逃げ出した。
「売る! 売ってやる! こんな土地、タダでもいらんわぁぁぁ!」
◇
翌朝。
そこには、綺麗に整地(破壊)された更地と、げっそりした俺たちがいた。
「……やりすぎだ」
「あら? 昨日はちょっと運動不足解消に走っただけですわよ?」
ルナは爽やかな笑顔で汗を拭っている。
その背後には、役目を終えて土に戻ったゴーレムたちの残骸(大量のミスリル鉱石を含む)が山となっていた。
「計算終了しました」
ネギオが被害状況を確認し、報告する。
「昨夜のパレード(大災害)により、周辺住民の退去率は100%。地主は『二度と戻りたくない』と精神崩壊を起こしています」
「……で、地価はどうなった?」
「暴落ですね。現在の評価額、推定5億ゴールド以下。もはや『土地』としての価値はなく、『危険区域』扱いです」
「下がりすぎだろ!!」
50億の土地が、一夜にして10分の1以下。
計画以上の成果(大暴落)だが、同時に「温泉リゾート」を作るための自然環境も半分くらい消し飛んでいた。
「くっくっく……」
魔王ヴァーミリオンが、震える肩を抑えて笑い出した。
「素晴らしい……! まさかこれほど完璧に破壊工作を行うとは! ルナ殿、貴様こそ真の魔王かもしれん!」
「あら、お褒めの言葉ですか? 照れますわ!」
「褒めてねぇよ! 皮肉だよ!」
俺はツッコんだが、魔王は既に商人の顔になっていた。
「よし、今が買い時だ! 地主が逃げ出した今、代理人を通じてこの土地を買い叩く! 10億あれば、土地代だけでなく周辺の山ごと買えるぞ!」
「あ、ああ……そうだな。これで第一段階はクリアか」
俺たちは、自分たちが引き起こした災害の跡地(更地)を見つめながら、次なるステップへと進むことにした。
そう、魔王のなけなしのヘソクリ10億を使って、このゴミ同然の土地を買い取り――そこから、ゴルド商会への返済金50億を捻出するという、自転車操業の始まりだ。
「リカル様、見てください! 地面からお湯が出てますわ!」
「……それ、お湯じゃないな。マグマだな」
前途多難。
だが、俺たちの「魔界温泉ランド計画」は、爆音と共に動き出したのだった。
深夜2時。
ターゲットとなる土地『虹の渓谷』を見下ろす丘の上に、俺と魔王ヴァーミリオンは潜伏していた。
「ククク……そろそろだな」
魔王が悪い顔で笑う。
「今のこの土地の相場は50億ゴールド。だが、今夜から毎晩『謎の地響き』や『不気味な影』が出没すれば、噂は瞬く間に広がる。一週間もすれば、住民は逃げ出し、買い手がつかない『呪われた土地』として暴落する寸法よ」
「……本当に大丈夫か? ルナに『お散歩』を頼んだだけだぞ?」
俺は不安だった。
あの天然娘に、適度な「脅かし」なんて器用な真似ができるとは思えない。
「案ずるな。所詮は人間の娘が作るゴーレムだ。せいぜい土人形が数体、ウロウロする程度だろう。可愛らしいものよ」
魔王は余裕綽々でワイン(安物)を傾けた。
その時だった。
ズゥゥゥゥゥン……。
地面が揺れた。
コップの中のワインが、ジュラシックな映画のように波紋を広げる。
「む? 地震か?」
「いや、違う……。あの足音のリズムは……」
ズシン!! ズシン!! ズシン!!
リズムに合わせて、木々がバキバキと薙ぎ倒される音が近づいてくる。
そして、闇の向こうから、明るい歌声が聞こえてきた。
「あ~るこ~♪ あ~るこ~♪ わたしはげんき~♪」
ルナだ。
彼女は渓谷の入り口を、楽しそうにスキップしていた。
問題は、彼女が引き連れている「ペット(ゴーレム)」たちだ。
「……おい、魔王」
「……なんだ、リカル」
「あれ、土人形か?」
俺たちが目にしたのは、月明かりに照らされた異形の行進だった。
先頭を歩くのは、身長30メートルはある「超重機動要塞型ゴーレム」。素材はまさかのミスリル製で、歩くたびに銀色の火花を散らしている。
その後ろには、首が三つある「ケルベロス型ゴーレム」。口から溶岩をヨダレのように垂らしている。
さらに上空には、石でできた「ガーゴイル編隊」が数百体、戦闘機のように旋回していた。
「……」
「……」
魔王がワイングラスを握りつぶした。
「軍隊だァァァァァ!! 呪いとかそういうレベルじゃねぇ! 侵略戦争だァァァァ!!」
「ルナァァァ! お前、素材どこから持ってきた!?」
俺の叫び声など届くはずもなく、ルナは楽しそうに指揮棒(世界樹の杖)を振る。
「さあポチ(要塞型)、タマ(ケルベロス型)! 元気に走りましょうね! かけっこですわ!」
グオォォォォォォン!!
ルナの号令と共に、ゴーレム軍団が全力疾走を開始した。
30メートルの巨体が走る。それはもはや天変地異だ。
渓谷の地形が変わる。川の流れが変わる。山が削れる。
◇
【渓谷の麓・地主の屋敷】
「ひ、ひぃぃぃ! な、なんだあれはぁぁぁ!」
この土地を所有する強欲な地主が、窓から外を見て腰を抜かしていた。
窓の外には、満月を背に咆哮するケルベロス(石)と、山を踏み砕く巨人(銀)のシルエット。
この世の終わりの光景だった。
「じ、地獄の蓋が開いたんだ! ここは呪われた土地なんかじゃない、魔界の最前線だぁぁぁ!」
「旦那様! 逃げましょう! 屋敷が揺れで倒壊しますぅぅ!」
使用人たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。
地主もまた、金庫の中身だけを掴んで裸足で逃げ出した。
「売る! 売ってやる! こんな土地、タダでもいらんわぁぁぁ!」
◇
翌朝。
そこには、綺麗に整地(破壊)された更地と、げっそりした俺たちがいた。
「……やりすぎだ」
「あら? 昨日はちょっと運動不足解消に走っただけですわよ?」
ルナは爽やかな笑顔で汗を拭っている。
その背後には、役目を終えて土に戻ったゴーレムたちの残骸(大量のミスリル鉱石を含む)が山となっていた。
「計算終了しました」
ネギオが被害状況を確認し、報告する。
「昨夜のパレード(大災害)により、周辺住民の退去率は100%。地主は『二度と戻りたくない』と精神崩壊を起こしています」
「……で、地価はどうなった?」
「暴落ですね。現在の評価額、推定5億ゴールド以下。もはや『土地』としての価値はなく、『危険区域』扱いです」
「下がりすぎだろ!!」
50億の土地が、一夜にして10分の1以下。
計画以上の成果(大暴落)だが、同時に「温泉リゾート」を作るための自然環境も半分くらい消し飛んでいた。
「くっくっく……」
魔王ヴァーミリオンが、震える肩を抑えて笑い出した。
「素晴らしい……! まさかこれほど完璧に破壊工作を行うとは! ルナ殿、貴様こそ真の魔王かもしれん!」
「あら、お褒めの言葉ですか? 照れますわ!」
「褒めてねぇよ! 皮肉だよ!」
俺はツッコんだが、魔王は既に商人の顔になっていた。
「よし、今が買い時だ! 地主が逃げ出した今、代理人を通じてこの土地を買い叩く! 10億あれば、土地代だけでなく周辺の山ごと買えるぞ!」
「あ、ああ……そうだな。これで第一段階はクリアか」
俺たちは、自分たちが引き起こした災害の跡地(更地)を見つめながら、次なるステップへと進むことにした。
そう、魔王のなけなしのヘソクリ10億を使って、このゴミ同然の土地を買い取り――そこから、ゴルド商会への返済金50億を捻出するという、自転車操業の始まりだ。
「リカル様、見てください! 地面からお湯が出てますわ!」
「……それ、お湯じゃないな。マグマだな」
前途多難。
だが、俺たちの「魔界温泉ランド計画」は、爆音と共に動き出したのだった。
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