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第二章 悪徳地上げ屋ルナちゃん爆誕
EP 1
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魔王と詐欺師の地上げ計画
魔王城、玉座の間。
世界の命運を賭けた戦いは、俺の悲痛な叫びで幕を閉じたはずだった。
「だ・か・ら! 現金が足りないってどういうことだぁぁぁ!!」
俺は魔王ヴァーミリオンの胸ぐら(高級なマント)を掴んで揺さぶっていた。
目の前には、魔王が差し出した財宝の山がある。
金貨、宝石、骨董品……。
しかし、ネギオの超高速鑑定(電卓)が弾き出した合計額は――。
「……評価額、〆て約10億ゴールドですね」
ネギオが冷徹に告げる。
「じゅ、10億……? あと90億足りないじゃないか!」
「仕方あるまい! 不景気なのだ!」
魔王ヴァーミリオンが、涙目で弁明する。
「最近は人間界の経済制裁がきつくてな……。資産の大半は『魔界暗号通貨(マコイン)』で持っていたのだが、先週暴落して紙屑になったのだ」
「魔王が投資で失敗してんじゃねーよ!」
俺は頭を抱えた。
10億。大金だが、ゴルド商会の借金100億には遠く及ばない。
これを持って帰ったところで、「残りの90億はどうする?」と詰められ、結局は鉱山送りだ。
「詰んだ……。せっかく魔王城まで来たのに……」
俺が膝から崩れ落ちると、ルナが横からポンと肩を叩いた。
「リカル様、元気出してくださいな。お金がないなら、魔王さんを売ればいいのでは?」
「ひぃッ!? 臓器売買はやめてくれ!」
魔王が怯えて玉座の裏に隠れる。
だが、その時。魔王の目がキラリと怪しい光を帯びた。
彼は俺たちを見回し――特に、城の結界を指一本で粉砕したルナと、親衛隊をゴミのように掃討したネギオを見て、何かを計算し始めたのだ。
「……待て、人間よ。名はなんという?」
「リカルだ」
「リカルよ。貴様、金が欲しいのだな? それも、桁外れの額が」
「当たり前だ! 借金があるんだよ!」
魔王はニヤリと笑い、マントを翻して立ち上がった。
「ならば、余と手を組まぬか?」
「は? 手を組む?」
「そうだ。余には『知恵』と『土地鑑』がある。貴様らには『圧倒的な武力(暴力)』がある。この二つが揃えば、100億など容易く生み出せるぞ」
魔王は懐から一枚の古びた地図を取り出し、テーブルに広げた。
指差したのは、人間界と魔界の境界付近にある、広大な未開の地。
「ここだ。通称『虹の渓谷』」
「ただの荒地に見えるが?」
「フフフ……表向きはな。だが余の調査によれば、この地下には極上の『魔力温泉脈』が眠っている。開発すれば、大陸一のリゾート地になる。その価値、正しく評価すれば1000億は下らん」
1000億。
俺の喉がゴクリと鳴った。
「だ、だが、そんな凄い土地なら、なんで誰も開発してないんだ?」
「所有者が厄介でな。代々ここを守っている頑固な地主がおるのだ。それに、今の相場でも土地代だけで50億はする。余の全財産(10億)でも買えん」
魔王は悪い顔で、声を潜めた。
「そこでだ、リカル。貴様らの力を使う」
「力?」
「そうだ。この土地に……『呪い』をかけるのだ」
魔王の作戦はこうだ。
1. ルナの規格外の魔法生物(ゴーレム等)を使い、夜な夜なこの土地を徘徊させる。
2. 「あそこは呪われた土地だ」「魔界の蓋が開いた」と噂を流す(風評被害)。
3. 地価を大暴落させる。
4. ゴミ同然になった土地を、魔王が10億で買い叩く。
5. その後、温泉リゾートとして開発し、巨万の富を得る。
完全なる「地上げ」だった。
「ど、どうだリカル? 悪魔的な計画だろう?」
「……犯罪の匂いがプンプンするぞ」
「背に腹は代えられまい? 借金を返すか、正義を貫いて死ぬか……選べ」
俺は葛藤した。
俺は元々、地味に薬草を摘んで生きていきたかった男だ。こんな大規模な詐欺・地上げ行為に手を染めていいのか?
「あら、楽しそうですわ!」
ルナが地図を覗き込んで、無邪気に笑った。
「ここにお城(ホテル)を建てるんですね! 私、素敵なお庭を造りたいです!」
「計算終了」
ネギオが電卓を弾き終える。
「雑草(リカル)。この計画の成功率は98%。初期投資を差し引いても、リターンは莫大です。……倫理観さえドブに捨てれば、ですが」
「うぐぐ……」
俺は拳を握りしめた。
脳裏に浮かぶのは、ゴルド商会の怖いお兄さんたちの顔と、鉱山での強制労働の未来。
「……やる」
「ほう?」
「やってやるよ! 毒を食らわば皿までだ! 魔王だろうが悪魔だろうが、利用できるもんは全部利用して、100億返してやる!!」
俺は魔王の手をガシッと握った。
魔王の手は冷たかったが、その笑顔は商売人のそれだった。
「契約成立だな、リカル君」
「ああ、よろしく頼むぜ、ヴァーミリオン社長」
こうして、世界最悪の業務提携が結ばれた。
『魔王&勇者(偽) 悪徳不動産連合』の爆誕である。
「ではルナ殿、早速だが今夜から仕事をしてくれ」
「はい! 何をすればいいんですか?」
「なに、簡単だ。その辺のゴーレムを使って、夜のお散歩をするだけでいい」
魔王は知らなかった。
ルナに「適度なお散歩」を頼むことが、どれほどの「大災害」を招くかを。
魔王城、玉座の間。
世界の命運を賭けた戦いは、俺の悲痛な叫びで幕を閉じたはずだった。
「だ・か・ら! 現金が足りないってどういうことだぁぁぁ!!」
俺は魔王ヴァーミリオンの胸ぐら(高級なマント)を掴んで揺さぶっていた。
目の前には、魔王が差し出した財宝の山がある。
金貨、宝石、骨董品……。
しかし、ネギオの超高速鑑定(電卓)が弾き出した合計額は――。
「……評価額、〆て約10億ゴールドですね」
ネギオが冷徹に告げる。
「じゅ、10億……? あと90億足りないじゃないか!」
「仕方あるまい! 不景気なのだ!」
魔王ヴァーミリオンが、涙目で弁明する。
「最近は人間界の経済制裁がきつくてな……。資産の大半は『魔界暗号通貨(マコイン)』で持っていたのだが、先週暴落して紙屑になったのだ」
「魔王が投資で失敗してんじゃねーよ!」
俺は頭を抱えた。
10億。大金だが、ゴルド商会の借金100億には遠く及ばない。
これを持って帰ったところで、「残りの90億はどうする?」と詰められ、結局は鉱山送りだ。
「詰んだ……。せっかく魔王城まで来たのに……」
俺が膝から崩れ落ちると、ルナが横からポンと肩を叩いた。
「リカル様、元気出してくださいな。お金がないなら、魔王さんを売ればいいのでは?」
「ひぃッ!? 臓器売買はやめてくれ!」
魔王が怯えて玉座の裏に隠れる。
だが、その時。魔王の目がキラリと怪しい光を帯びた。
彼は俺たちを見回し――特に、城の結界を指一本で粉砕したルナと、親衛隊をゴミのように掃討したネギオを見て、何かを計算し始めたのだ。
「……待て、人間よ。名はなんという?」
「リカルだ」
「リカルよ。貴様、金が欲しいのだな? それも、桁外れの額が」
「当たり前だ! 借金があるんだよ!」
魔王はニヤリと笑い、マントを翻して立ち上がった。
「ならば、余と手を組まぬか?」
「は? 手を組む?」
「そうだ。余には『知恵』と『土地鑑』がある。貴様らには『圧倒的な武力(暴力)』がある。この二つが揃えば、100億など容易く生み出せるぞ」
魔王は懐から一枚の古びた地図を取り出し、テーブルに広げた。
指差したのは、人間界と魔界の境界付近にある、広大な未開の地。
「ここだ。通称『虹の渓谷』」
「ただの荒地に見えるが?」
「フフフ……表向きはな。だが余の調査によれば、この地下には極上の『魔力温泉脈』が眠っている。開発すれば、大陸一のリゾート地になる。その価値、正しく評価すれば1000億は下らん」
1000億。
俺の喉がゴクリと鳴った。
「だ、だが、そんな凄い土地なら、なんで誰も開発してないんだ?」
「所有者が厄介でな。代々ここを守っている頑固な地主がおるのだ。それに、今の相場でも土地代だけで50億はする。余の全財産(10億)でも買えん」
魔王は悪い顔で、声を潜めた。
「そこでだ、リカル。貴様らの力を使う」
「力?」
「そうだ。この土地に……『呪い』をかけるのだ」
魔王の作戦はこうだ。
1. ルナの規格外の魔法生物(ゴーレム等)を使い、夜な夜なこの土地を徘徊させる。
2. 「あそこは呪われた土地だ」「魔界の蓋が開いた」と噂を流す(風評被害)。
3. 地価を大暴落させる。
4. ゴミ同然になった土地を、魔王が10億で買い叩く。
5. その後、温泉リゾートとして開発し、巨万の富を得る。
完全なる「地上げ」だった。
「ど、どうだリカル? 悪魔的な計画だろう?」
「……犯罪の匂いがプンプンするぞ」
「背に腹は代えられまい? 借金を返すか、正義を貫いて死ぬか……選べ」
俺は葛藤した。
俺は元々、地味に薬草を摘んで生きていきたかった男だ。こんな大規模な詐欺・地上げ行為に手を染めていいのか?
「あら、楽しそうですわ!」
ルナが地図を覗き込んで、無邪気に笑った。
「ここにお城(ホテル)を建てるんですね! 私、素敵なお庭を造りたいです!」
「計算終了」
ネギオが電卓を弾き終える。
「雑草(リカル)。この計画の成功率は98%。初期投資を差し引いても、リターンは莫大です。……倫理観さえドブに捨てれば、ですが」
「うぐぐ……」
俺は拳を握りしめた。
脳裏に浮かぶのは、ゴルド商会の怖いお兄さんたちの顔と、鉱山での強制労働の未来。
「……やる」
「ほう?」
「やってやるよ! 毒を食らわば皿までだ! 魔王だろうが悪魔だろうが、利用できるもんは全部利用して、100億返してやる!!」
俺は魔王の手をガシッと握った。
魔王の手は冷たかったが、その笑顔は商売人のそれだった。
「契約成立だな、リカル君」
「ああ、よろしく頼むぜ、ヴァーミリオン社長」
こうして、世界最悪の業務提携が結ばれた。
『魔王&勇者(偽) 悪徳不動産連合』の爆誕である。
「ではルナ殿、早速だが今夜から仕事をしてくれ」
「はい! 何をすればいいんですか?」
「なに、簡単だ。その辺のゴーレムを使って、夜のお散歩をするだけでいい」
魔王は知らなかった。
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