『F-35B、ミッドウェーに降臨す ~超エリート空自パイロット、一回限りの『魔法』で歴史を覆す~』

月神世一

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第二章 マリアナ攻略

EP 11

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『未来』の『教科書』
1943年8月1日 - 呉工廠・坂上執務室
室内に、重苦しい沈黙が満ちていた。
坂上真一は、トラック島から緊急召集した山本五十六(彼は「死の運命」を回避し、健在だった)に対し、スマートフォンの「年表」を突きつけていた。
『1943年11月20日 - ガルヴァニック作戦(タラワ上陸)』
「……タラワ」
山本は、海図上の、太平洋に浮かぶ「点」に過ぎないギルバート諸島の環礁を指差した。
「坂上君。ここは、マリアナ(本命)ではない。
米軍の『陽動』か、あるいは『足がかり』に過ぎん。
我々の『切り札(ジェット)』は、マリアナ(サイパン)の決戦まで、温存すべきだ」
「その通りです」
坂上は、即答した。
「『秋水』も『VT信管』も、タラWA(ここ)では、絶対に、使わない」
「……では、見捨てるのかね?」
「いいえ」
坂上は、山本と、同席していた海軍陸戦隊(タラWA防衛部隊)の高級参謀を、冷徹に見据えた。
「――『地獄』を、作ります」
「……地獄?」
「俺の『プロジェクト』は、まだ、完成していない。
タイムリミットは、1944年夏。
米軍が、タラワ(11月)の『次』、マーシャル(1944年1月)を、史実通りの『速度』で、突破した場合、
――我々は、間に合わない」
坂上は、立ち上がった。
「米軍の『足』を、タラワ(ここ)で、止める。
『勝利』しなくていい。
だが、
米軍(マリーン)の『血』を、
この『点(タラワ)』に、流し尽くさせる。
ニミッツ(米司令部)に、
『この"飛び石"作戦は、コスト(人命)が、かかりすぎる』
と、
『ためらわせる』。
――その『時間』こそが、
俺が、今、
最も『欲しい』ものだ」
1943年8月15日 - 呉工廠・陸戦隊作戦室
坂上は、タラワ防衛部隊の司令官(史実の柴崎恵次少将)に送るための、「作戦要綱」を作成していた。
それは、呉で開発中の「未来兵器」のデータではなかった。
彼がスマホの「歴史(ウィキペディア)」から、
皮肉にも、
『"史実"のタラワの戦い』
の「戦訓(バトル・レポート)」
そのものを、
抜き出した、『未来の教科書』だった。
「第一条:『敵』」
「敵は、1943年11月20日、早朝、来襲する。
上陸主力は、米海兵隊・第2師団」
「第二条:『天佑(てんゆう)』」
「11月20日の、タラワ環礁の『潮位』は、『小潮(ネップ・タイド)』である。
敵の上陸用舟艇(ヒギンズ・ボート)の大半は、
環礁(リーフ)に『座礁』し、
水深1.5メートルの『浅瀬』で、立ち往生する」
「第三条:『弱点』」
「敵の新型上陸用装甲車(LVT "アリゲーター")のみが、リーフを越える。
だが、その『装甲』は、
我が軍の『30ミリ機関砲』で、
『貫通』可能である」
「第四条:『戦術』」
「――『水際(みずぎわ)』を、捨てろ」
「……なっ!」
作戦室にいた陸戦隊の参謀が、声を上げた。
「水際撃滅こそが、我が陸戦隊の『教義』だぞ!」
「その『教義』は、米軍の『艦砲射撃』で、粉砕される」
坂上は、史実の「写真」――
B-29の空襲写真とは違う、
タラワの、
「艦砲射撃」によって、
文字通り「消し飛ばされた」、
日本軍の「水際陣地」の「残骸」を、
叩きつけた。
「……ひ」
参謀は、息を呑んだ。
そこには、彼らが「最強」と信じた「要塞」の、「死体」が、写っていた。
「いいか、よく聞け」
坂上は、「新しい戦術」を、叩き込んだ。
「敵の『艦砲射撃』が、終わるまで、
全兵力は、
『地下(バンカー)』に、『狸寝入り』しろ。
敵に、『日本軍は、全滅した』と、誤認させろ」
「そして」
坂上は、海図の、「リーフ(環礁)」と「砂浜」の「中間地点」を、
赤く、塗りつぶした。
「敵の『第一波』が、
リーフで『座礁』し、
『安心』して、
腰まで水に浸かりながら、
『歩いて』、
砂浜に、たどり着こうとする、
――その『瞬間(モーメント)』を、
狙え」
「全火器(モーター、機関砲、野砲)の『照準』を、
『砂浜』ではなく、
この『赤い海(キルゾーン)』に、
あらかじめ、
『固定(プリセット)』しておけ」
「敵(マリーン)が、
最も『無防備』になる、
『海の上』で、
――『皆殺し』に、しろ」
それは、
「未来」の『秋水』や『VT信管』とは、
全く違う、
「過去(このじだい)」の兵器だけで、
「未来」の『知識(データ)』を、
使い、
構築された、
完璧な「迎撃システム(キルゾーン)」だった。
「……神」
陸戦隊の参謀は、
震えていた。
「……貴官は、
『未来』の兵器だけでなく、
『未来』の『戦い方』そのものを、
……『予知』しているのか」
「予知ではない。『歴史(データ)』だ」
坂上は、その『未来の教科書(作戦要綱)』を、
タラワに、
「最重要機密」として、
潜水艦で、輸送させた。
1943年10月1日 - 呉工廠・航空試験場
坂上が「過去(タラワ)」の戦争を、仕込んでいる間。
呉の「未来(プロジェクト)」もまた、
着実に、進んでいた。
「――行くぞ!」
西沢広義が、
『秋水・一型改(いちがたかい)』
の、操縦桿を、握った。
笹井の「恐怖(しっぱい)」を、
分析(データ)し、
坂上の「ヒント(後退翼、皿リベット)」
を、
堀越と手島が「実装」した、
「改良型」だった。
キィィィィン!!
西沢は、
笹井が「恐怖」した、
「音の壁(800キロ)」を、
あっさりと、
「突き破った」。
「……すごい」
西沢は、
コックピットの中で、
笑っていた。
「……笹井が『壁』と言っていた、
あの『振動(バイブレーション)』が、
……『無い』。
まるで、
薄い『紙』を、
破るように、
……『滑らか』だ」
速度計の針は、
『時速900キロ』を、
振り切ろうとしていた。
「第二班(VT信管)も、続くぞ!」
同時期、
坂上の『統計的品質管理(QC)』
を、
導入した「工場」では、
『VT信管』の「不良品率」が、
『97%』から、
『10%』台へと、
劇的に、
改善していた。
「……坂上顧問の、
『数字(データ)』通りだ」
技術者たちは、
「気合」ではなく、
「グラフ(管理図)」を、
崇拝(すうはい)するように、
なっていた。
「――『秋水』に、
搭載する、
『三式・30ミリ機関砲弾(VT信管搭載型)』、
『量産第一号』、
完成です!」
「槍(ジェット)」は、「音の壁」を超え、
「弾(VT信管)」は、「量産」に入った。
「目(ゴジラ・ネット)」は、マリアナの地下で、「網」を張っている。
坂上の「プロジェクト」は、
「完成」した。
あとは、
「敵(B-29)」が、
「来る」のを、
待つ、
だけだった。
だが、
その「前」に。
1943年11月19日 - タラワ環礁・沖合
水平線を、
埋め尽くす、
米軍の「大艦隊」が、
現れた。
地下壕の「潜望鏡」から、
それを、
確認した、
柴崎司令官は、
坂上の『教科書(マニュアル)』を、
握りしめた。
「……来たか」
「……本当に、
『11月20日(あした)』、
『小潮(こしお)』の、
『朝』に、
……来た」
柴崎は、
全軍に、
「最後の命令」を、
下した。
「――全軍、
『狸寝入り』、
開始。
……『赤い海(キルゾーン)』で、
『宴(うたげ)』を、
開くぞ」
坂上の「未来知識」と、
米軍の「圧倒的物量」が、
「歴史(タイムライン)」の、
「分岐点(タラワ)」で、
今、
激突しようとしていた。
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