​【元三ツ星シェフの裏稼業】転生した最強の少年は、ヤバすぎるクラスメイト(竜・天使・人魚)の胃袋を料理で掌握し、学園の影の支配者となる

月神世一

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第二章 ルナミス少年探偵団

EP 2

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 腹ペコ王女の不審な舞、ターゲットは警察署
​翌日の放課後。
太郎国警察・第3分署の前にある植え込みの陰に、俺たち『ルミナス少年探偵団』は潜伏していた。
​「……おいリアン。本当にあんな作戦で上手くいくのか?」
​隣で茂みをかき分けているクラウスが、不安げに尋ねる。
俺は双眼鏡(ネット通販で購入)を覗きながら、静かに頷いた。
​「心配するな。警察官、特にベテランの刑事というのは『違和感』に敏感な生き物だ。街の風景に馴染まない異分子がいれば、職業病として声をかけずにはいられない」
「異分子っていうか……あれはただの不審者じゃねぇか?」
​イグニスが呆れた声を出す。
俺たちの視線の先――警察署の正面玄関前には、とんでもない格好をしたリーザが立っていた。
​制服の上に、ボロボロのトレンチコート(どこで拾った?)を羽織り、顔には100均で買った真っ黒なサングラス。
そして、なぜか手には「虫取り網」を持っている。
​「作戦開始だ。……行け、リーザ!」
​俺がインカム(魔導通信機)で指令を出すと、リーザが動き出した。
​「ふふふ……。ここが権力の犬小屋……いえ、正義の砦ですわね……」
​リーザはサングラス越しに警察署を睨みつけると、突然、奇妙な動きを始めた。
​シュバッ! シュバッ!
​左右への反復横跳びだ。
しかも、ただの横跳びではない。着地のたびに地面を凝視し、落ちている小銭がないか確認する貧乏ムーブ付きだ。
​「ハッ! 何も落ちてませんわ! 異常なし! ……シュバッ!」
​通行人たちがギョッとして道を空ける。
子供の手を引いた母親が、「見ちゃいけません!」と子供の目を覆って足早に去っていく。
​『おいリーザ! 動きが怪しすぎる! もっとこう、ハードボイルドにだ!』
『は、ハードボイルド……!? わ、分かりましたわ!』
​リーザは動きを止めると、コートの襟を立て、電柱の陰にサッと身を隠した(隠れきれていない)。
そして、通りがかった警察官(モブ)に向かって、わざとらしい大声で独り言を呟いた。
​「あー! お腹が空いたなぁー! 事件の匂いがするなぁー! カツ丼の出汁の匂いもするなぁー!」
​「…………」
​警察官が二度見して、スルーした。
関わってはいけないタイプだと判断されたらしい。
​「くっ……! 無視されましたわリアン様! 作戦失敗ですか!?」
『諦めるな。もっと心の叫びをぶつけろ』
『心の叫び……!』
​リーザはサングラスをずらし、警察署の自動ドアに向かって、悲痛な叫びを上げた。
​「お巡りさぁぁん! 私です! 私がやりましたぁぁ! 無銭飲食(未遂)の犯人は私ですぅぅ! だからカツ丼を! 取り調べ室のあの輝く丼をぉぉ!」
​もはや自首だ。
というか、ただの食い逃げ未遂の告白だ。
​「……あいつ、馬鹿なのか?」
「うん。知ってた」
​キャルルとルナが冷静にツッコミを入れる中、ついにその時が来た。
​ウィィィン……。
​警察署の自動ドアが開き、一人の男が出てきた。
無精髭に、気怠げな目つき。口にはコーヒーキャンディを含み、手には火のついていない赤マル(タバコ)を持っている。
T-SWAT隊長、鮫島勇護だ。
​「…………」
​鮫島は、目の前で「カツ丼!」と叫びながら反復横跳びをする不審な少女を見下ろし、深く深いため息をついた。
​「……おい」
「ひゃいっ!?」
​鮫島の低い声に、リーザが直立不動になる。
​「そこのパンの耳。……こんなところで何をしている」
「えっ、あ、えっと……! わ、私は怪しい者ではありません! 通りすがりの……えっと、グルメライターです!」
「グルメライターが虫取り網を持って交番の前で反復横跳びをするか」
​鮫島は呆れたように頭を掻いた。
​「通報が入ってんだよ。『サングラスをかけた小学生が、警察署の前で銀玉を探している』ってな」
「銀玉ではありません! 500円玉を探していたのです!」
「どっちでもいい。……とにかく、邪魔だ。補導されたいのか?」
​鮫島の鋭い眼光。
普通ならここで怯んで逃げ出すところだが、リーザは違った。
彼女にとって「補導」とは、すなわち「署内への招待状」なのだ。
​リーザはサングラスを投げ捨て、鮫島のコートの裾をガシッと掴んだ。
​「補導! はい、補導してください! 私、悪い子なんです! 昨日も賞味期限が1時間切れた牛乳を飲みました! 極悪人です!」
「…………」
「だから! 連行してください! あの、噂の『カツ丼が出る部屋』へ!」
​リーザの瞳は、空腹と欲望でギラギラと輝いている。
鮫島はその凄まじいプレッシャーに、一瞬たじろいだように見えたが、すぐに諦めたように肩を落とした。
​「……はぁ。腹が減ってるのか」
「ペコペコです! 背中とお腹がくっついて、もはや一枚皮です!」
「嘘をつけ。……ったく、今日は厄日か」
​鮫島は懐から1000円札……ではなく、署内の「食堂利用券」のようなものを取り出し、ヒラヒラと振った。
​「ついて来い。……少し話を聞かせてもらう」
「!!!」
​リーザの顔が、太陽のように輝いた。
​「はいっ! 喜んで自白しますわ! カツ丼! カツ丼!」
​鮫島の後ろをついて、スキップしながら警察署へ吸い込まれていくリーザ。
その背中を見送りながら、俺は茂みの中でガッツポーズをした。
​「……よし。接触成功だ」
「すげぇ……。本当に補導されやがった」
「あのおじさん、リーザちゃんの圧に負けましたねぇ」
​イグニスとルナが感心したように呟く。
​「さあ、ここからはリーザの仕事だ。俺たちも場所を移すぞ」
「どこへ?」
「警察署の裏口だ。……カツ丼で満たされたリーザが、『お土産(事件)』を持って出てくるのを待つ」
​俺は双眼鏡をしまい、ニヤリと笑った。
​釣れた魚(鮫島)はデカい。
これで俺たちの探偵団も、いよいよ初仕事といこうじゃないか。
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