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EP 6
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安息の夜、あるいはドラゴンの夢
セーラに紹介された「木漏れ日の宿」は、喧騒から少し離れた路地裏にあった。
年季は入っているが手入れが行き届いた、落ち着く雰囲気の宿だ。
「若いのに大したもんだ! 街の恩人だからな、宿代はまけておくよ!」
陽気な主人に肩を叩かれ、リュウは通された部屋のベッドに倒れ込んだ。
「ふぁ~……疲っかれた……」
清潔なシーツの匂い。柔らかいマットレス。
途端に、全身の細胞が悲鳴を上げた。
慣れない長旅、命がけの戦闘、そして新しい環境への高揚感。
張り詰めていた糸が切れ、リュウの意識は泥沼のような眠りへと引きずり込まれていった。
◇
夢を見た。
そこは、赤茶けた大地が広がる、不毛の荒野だった。
草木も生えず、風だけが乾いた音を立てて吹き抜ける。
リュウは一人、その荒野に立っていた。
手には、いつもの投石器(スタッフ・スリング)を握りしめている。
(俺は、ここで何をしている?)
漠然とした不安が胸をよぎる。
レベルは上がった。スキルも覚えた。
でも、本当にこの世界で通用するのか? たかが石ころ一つで?
その時――空が割れた。
『グルゥゥゥゥ……!』
地響きのような唸り声と共に、巨大な影が降り立つ。
漆黒の鱗、天を突く巨躯、そして全てを焼き尽くす紅蓮の瞳。
ドラゴンだ。
ファンタジー最強の象徴が、蟻でも見るような目でリュウを見下ろしている。
『矮小なる人間よ。その小枝で、我に挑むつもりか?』
「くそっ! やるしかない!」
リュウは投石器を振るった。
渾身の一撃。だが――
カィンッ!
硬質な金属音。
石はドラゴンの鱗に傷一つつけられず、虚しく弾かれた。
当然だ。鋼鉄よりも硬い竜鱗に、石ころなど豆鉄砲にもならない。
『無駄だ』
ドラゴンが大きく口を開ける。
喉の奥で、地獄の業火が渦巻くのが見えた。
「うわあぁぁぁぁっ!?」
迫り来る灼熱の奔流。
視界が赤く染まり、リュウは絶望の中で叫んだ。
◇
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
ガバッと跳ね起きる。
心臓が早鐘を打ち、全身が冷や汗でぐっしょりと濡れていた。
窓の外からは朝日が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえる。
「ゆ、夢か……」
リュウは荒い呼吸を整えながら、自分の手を見つめた。
まだ震えている。
あの圧倒的な無力感が、生々しく残っていた。
(石じゃ……無理だ)
ゴブリンやスライム相手なら何とかなる。
だが、あの夢のように硬い敵、巨大な敵が現れたら?
接近戦に持ち込まれたら?
投石器など、何の役にも立たない棒切れだ。
「もっと……選択肢が必要だ」
リュウは着替えを済ませ、食堂へ降りた。
焼きたてのパンとスープを口に運びながらも、思考は昨夜の悪夢に囚われていた。
(俺のスキルは『投石使い』じゃない。『武器使い』だ)
その名の通りなら、あらゆる武器を扱えるはずだ。
剣、槍、斧、弓。
それぞれの武器には、それぞれの強みがある。
石ころ一本槍に拘るのは、スキルの無駄遣いであり、自殺行為だ。
「よし、決めた」
リュウは最後のパンをスープに浸して飲み込むと、力強く立ち上がった。
「まずは装備を整えよう。俺のスキルを最大限に活かせる、『本物の武器』を探しに行くんだ」
腰の投石器を撫でる。
これまで命を繋いでくれた相棒だ。だが、これからは「頼れる武器の一つ」として使い分ける時が来た。
リュウは宿を出て、朝の光に満ちたアルクスの街へと歩き出した。
目指すは、武器屋。
新たな相棒との出会いを求めて。
セーラに紹介された「木漏れ日の宿」は、喧騒から少し離れた路地裏にあった。
年季は入っているが手入れが行き届いた、落ち着く雰囲気の宿だ。
「若いのに大したもんだ! 街の恩人だからな、宿代はまけておくよ!」
陽気な主人に肩を叩かれ、リュウは通された部屋のベッドに倒れ込んだ。
「ふぁ~……疲っかれた……」
清潔なシーツの匂い。柔らかいマットレス。
途端に、全身の細胞が悲鳴を上げた。
慣れない長旅、命がけの戦闘、そして新しい環境への高揚感。
張り詰めていた糸が切れ、リュウの意識は泥沼のような眠りへと引きずり込まれていった。
◇
夢を見た。
そこは、赤茶けた大地が広がる、不毛の荒野だった。
草木も生えず、風だけが乾いた音を立てて吹き抜ける。
リュウは一人、その荒野に立っていた。
手には、いつもの投石器(スタッフ・スリング)を握りしめている。
(俺は、ここで何をしている?)
漠然とした不安が胸をよぎる。
レベルは上がった。スキルも覚えた。
でも、本当にこの世界で通用するのか? たかが石ころ一つで?
その時――空が割れた。
『グルゥゥゥゥ……!』
地響きのような唸り声と共に、巨大な影が降り立つ。
漆黒の鱗、天を突く巨躯、そして全てを焼き尽くす紅蓮の瞳。
ドラゴンだ。
ファンタジー最強の象徴が、蟻でも見るような目でリュウを見下ろしている。
『矮小なる人間よ。その小枝で、我に挑むつもりか?』
「くそっ! やるしかない!」
リュウは投石器を振るった。
渾身の一撃。だが――
カィンッ!
硬質な金属音。
石はドラゴンの鱗に傷一つつけられず、虚しく弾かれた。
当然だ。鋼鉄よりも硬い竜鱗に、石ころなど豆鉄砲にもならない。
『無駄だ』
ドラゴンが大きく口を開ける。
喉の奥で、地獄の業火が渦巻くのが見えた。
「うわあぁぁぁぁっ!?」
迫り来る灼熱の奔流。
視界が赤く染まり、リュウは絶望の中で叫んだ。
◇
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
ガバッと跳ね起きる。
心臓が早鐘を打ち、全身が冷や汗でぐっしょりと濡れていた。
窓の外からは朝日が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえる。
「ゆ、夢か……」
リュウは荒い呼吸を整えながら、自分の手を見つめた。
まだ震えている。
あの圧倒的な無力感が、生々しく残っていた。
(石じゃ……無理だ)
ゴブリンやスライム相手なら何とかなる。
だが、あの夢のように硬い敵、巨大な敵が現れたら?
接近戦に持ち込まれたら?
投石器など、何の役にも立たない棒切れだ。
「もっと……選択肢が必要だ」
リュウは着替えを済ませ、食堂へ降りた。
焼きたてのパンとスープを口に運びながらも、思考は昨夜の悪夢に囚われていた。
(俺のスキルは『投石使い』じゃない。『武器使い』だ)
その名の通りなら、あらゆる武器を扱えるはずだ。
剣、槍、斧、弓。
それぞれの武器には、それぞれの強みがある。
石ころ一本槍に拘るのは、スキルの無駄遣いであり、自殺行為だ。
「よし、決めた」
リュウは最後のパンをスープに浸して飲み込むと、力強く立ち上がった。
「まずは装備を整えよう。俺のスキルを最大限に活かせる、『本物の武器』を探しに行くんだ」
腰の投石器を撫でる。
これまで命を繋いでくれた相棒だ。だが、これからは「頼れる武器の一つ」として使い分ける時が来た。
リュウは宿を出て、朝の光に満ちたアルクスの街へと歩き出した。
目指すは、武器屋。
新たな相棒との出会いを求めて。
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