武器使いの成り上がり〜石ころから始める異世界無双譚〜〜社畜、女神に愛され最強の二刀流&投擲使いに覚醒す〜

月神世一

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EP 12

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巨獣の王、そして勝利の咆哮
​歓喜は、一瞬にして絶望へと変わった。
​ズゥゥゥゥン……!
​地響き。
燃え盛る家屋が、紙細工のように吹き飛ぶ。
炎と黒煙の向こうから現れたのは、巨大な「絶望」だった。
​体長5メートル超。
黒曜石のような強固な皮膚、捻じれた二本の角。
ゴブリンキング。
それはもはや小鬼の王などではない。人を喰らう巨獣だ。
​「嘘だろ……こんなの、聞いてないぞ」
​村人たちが腰を抜かし、再び悲鳴が上がる。
圧倒的な質量の暴力。存在そのものが周囲の空気を歪ませている。
​「グオオオオオオッ!」
​咆哮一閃。
近くの納屋が衝撃波だけで半壊した。
​「リュウ様……!」
​セーラが震えている。
だが、リュウの目は死んでいなかった。
昨夜の悪夢。ドラゴンの圧倒的な力。
あれに比べれば、こいつはまだ「生物」だ。殺せる。
​「セーラ、回復の準備を頼む! 俺が注意を引く!」
​「は、はい! どうかご無事で!」
​リュウは地を蹴った。
真っ向勝負などしない。
巨体ゆえの隙を突き、死角へ回り込む。
​「遅い!」
​王が丸太のような腕を振り回す。
風圧だけで吹き飛ばされそうになりながらも、リュウは『疾風』の名の通りに駆け抜けた。
​ザシュッ!
​足首の腱を斬る。
だが、硬い。岩を斬りつけたような手応えに、リュウは舌打ちした。
​(皮膚が分厚すぎる……! これじゃ致命傷にならない!)
​「グガアアッ!」
​苛立った王が、怒りに任せて暴れまわる。
踏みつけ、殴打、薙ぎ払い。
一つでも掠れば即死の猛攻。
リュウは紙一重で躱し続けるが、少しずつ、確実に体力が削られていく。
​「くっ……!」
​瓦礫の破片が頬を切り裂く。
だが、次の瞬間、温かな光が傷を塞いだ。
​『癒やし給え、聖なる光よ(ヒール)』
​セーラだ。
彼女は恐怖に震えながらも、一歩も引かず、必死にリュウを支え続けている。
彼女が後ろにいる限り、俺は倒れない。倒れるわけにはいかない。
​(ここだ……勝機は必ずある!)
​リュウは極限の集中力で観察した。
堅牢な鎧のような皮膚。だが、関節の内側や、目、口の中は柔らかいはずだ。
そして、奴が咆哮を上げる瞬間――最大の隙が生まれる。
​「グオオオオオオオッ!!」
​王が天を仰ぎ、大きく口を開けた。
今だ。
​リュウはバックステップで距離を取り、投石器(スタッフ・スリング)を構えた。
手には、拾っておいた中で最も硬く、重い石。
​「喰らえええええッ!!」
​全身全霊の投擲。
石は流星となって空を裂き、王の開かれた口腔内へ吸い込まれた。
​ドゴォッ!!
​湿った破裂音。
石は喉の奥を突き破り、延髄を破壊した。
​「ガ……ッ?」
​王の動きがピタリと止まる。
巨体がぐらりと傾き――
​ズドォォォォォン……!
​地響きと共に、黒い巨獣は沈黙した。
​「はぁ……はぁ……はぁ……っ」
​リュウはその場に膝をついた。
心臓が破裂しそうだ。全身の筋肉が悲鳴を上げている。
だが、勝った。
石ころと短剣、そして仲間の力で、あの怪物を倒したのだ。
​「リュウ様ぁぁぁっ!」
​セーラが泣きながら抱きついてくる。
その温もりを感じて、ようやくリュウの張り詰めた糸が緩んだ。
​「勝ったよ、セーラ。……俺たちの、勝ちだ」
​村人たちの歓声が、遠くから聞こえてくるようだった。
だが、リュウの胸にあるのは驕りではない。
もっと強くならなければ。
この世界には、あんな化け物がまだゴロゴロしているのだから。
​燃え上がる村の中心で、リュウは静かに拳を握りしめた。
それは、真の冒険者としての自覚が芽生えた瞬間だった。
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