​拾った卵が始祖竜だった!通販スキルで育てる為、竜王とラーメン屋を始めたら、最強の3柱と契約してしまい世界が平和になった件

月神世一

文字の大きさ
2 / 13

EP 2

しおりを挟む
偏屈店主と、森の中のラーメン屋台
山の空気は澄んでいるが、腹の虫を黙らせる役には立たない。
太郎はリュックサックを背負い、獣道を下っていた。
リュックからは、小さな黒い頭――始祖竜のクロが顔を覗かせている。
「パパ、お腹すいた」
「さっきミルク飲んだだろ。我慢しなさい」
太郎は冷静に諭しながら、頭の中で計算盤を弾いていた。
初回のボーナスポイントは、先ほどのミルクセットと、自分の着替えや水で殆ど消えた。
クロの成長は早い。ミルク代、離乳食代、そしてオムツ代。
この世界で生きていくには、とにかく「善行ポイント」を稼がなければならない。
「ゴミ拾いでもするか……いや、まずは人里を見つけないと」
そう呟きながら、森の開けた場所に出た時だった。
ふわり。
森の草いきれに混じって、場違いな香りが鼻腔をくすぐった。
獣の骨を長時間煮込んだような、濃厚で野性味あふれる香り。
「……豚骨?」
太郎の足が止まる。
ラーメンマニアの鼻が、その正体を嗅ぎ分けていた。
異世界の大森林で、豚骨スープの匂いだと?
匂いを辿った先にあったのは、一軒の「屋台」だった。
赤い提灯が下がり、古ぼけた暖簾が風に揺れている。
どう見ても、日本の昭和の風景から切り取ってきたようなラーメン屋台だ。
「いらっしゃい」
暖簾をくぐると、店主が低い声で出迎えた。
ねじり鉢巻を頭に巻き、腕組みをした渋い中年男。
鋭い眼光と、全身から漂う圧倒的な強者のオーラ。
ただのラーメン屋の親父ではないことは一目瞭然だったが、太郎は動じなかった。
「やってますか」
「……客か。珍しいな」
店主――竜王デュークは、値踏みするように太郎を見た。
リュックから顔を出した始祖竜(クロ)を一瞥したが、興味なさそうに視線を外す。
彼にとって重要なのは、今、目の前の寸胴鍋の状態だけだった。
「ラーメン、一つ」
「あいよ」
太郎は丸椅子に座り、店主の手際を観察した。
麺を茹でる所作、スープを注ぐタイミング。
力強く、無駄がない。だが――。
「お待ち」
ドン、と置かれた丼。
茶濁した濃厚なスープに、極太の麺。具材は巨大なチャーシューが一枚。
太郎は割り箸を割り、まずはスープを一口啜る。
そして、麺を手繰り寄せ、ズズッと音を立てて啜り込んだ。
沈黙が流れる。
デュークが腕を組み、自信ありげに鼻を鳴らした。
「どうだ。我が数百年かけて辿り着いた、至高の味は」
太郎は箸を置き、静かに口を開いた。
「……惜しいな」
「あ?」
デュークの眉がピクリと動く。店内の空気が凍りつき、周囲の木々がざわめいた。
「スープの熱量が均一じゃない。寸胴の中で対流が上手くいってない証拠だ。それに、湯切りが甘い。麺のぬめりがスープの輪郭をぼやけさせてる」
太郎は淡々と、しかし容赦なく事実を告げた。
それはクレームではない。ラーメンを愛するがゆえの、純粋な分析だった。
「き、貴様……人間風情が、我のラーメンにケチをつける気か!」
デュークが激昂し、黄金の闘気が立ち上る。
並の人間なら気絶するプレッシャーだが、太郎はため息をつき、おもむろに立ち上がった。
「どいてください。俺がやります」
「なっ!?」
太郎は呆気に取られるデュークを押し退け、厨房に入った。
スキル【ネット通販】発動。
空中に現れたボードを素早くタップする。
『購入:業務用・特選魚粉パック、平ザル』
ポトンと落ちてきた魚粉の袋を開け、スープに投入する。
そして、茹で上がった麺を平ザルですくい上げると、弓道で培った「残心」の動きで、一滴の水滴も残さず湯を切った。
「スープの温度ムラは、魚介の風味で中和する。湯切りは力じゃなく、遠心力とキレだ」
チャッ、チャッ!
小気味良い音が森に響く。
再構築された一杯を、太郎はデュークの前に差し出した。
「食ってみてください」
デュークは悔しげに唸りながらも、レンゲでスープを口に運んだ。
その瞬間、竜王の目が大きく見開かれた。
「……!!」
豚骨の荒々しさを、魚粉が優しく包み込み、完璧な湯切りによって小麦の香りがダイレクトに伝わってくる。
雑味が消え、旨味だけが爆発していた。
「な、なんだこれは……これが、調和(ハーモニー)……!」
震える手で丼を置くと、デュークは太郎を凝視した。
そこには、怒りではなく、敬意の色が宿っていた。
「貴様……名は?」
「佐藤太郎です。今は無職ですが」
デュークはニヤリと凶悪な、しかし嬉しそうな笑みを浮かべた。
「面白い。貴様、見所があるな」
竜王はねじり鉢巻を締め直した。
「我の下で働け。給料は……そうだな、ここの残飯(チャーシュー)と、売上の一部でどうだ?」
太郎は計算した。
衣食住の確保。そして何より、この店主となら美味いラーメンが作れそうだ。
「交渉成立です、店長」
こうして、最強の竜王と、最強の主夫(兼コンビニ店員)による、伝説のラーメン屋経営が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...