​拾った卵が始祖竜だった!通販スキルで育てる為、竜王とラーメン屋を始めたら、最強の3柱と契約してしまい世界が平和になった件

月神世一

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EP 13

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パンデミックと『魔法の薬(カプセル)』
​翌日。
帝都グロリアの下層街(スラム)は、昨日とは打って変わって、重苦しい沈黙に包まれていた。
​「……ゲホッ、ゲホッ!」
「あつい……水……」
​路地のあちこちで、人々が苦しげに咳き込み、地面にうずくまっている。
昨日、リーザのライブで盛り上がっていた子供たちも、顔を真っ赤にしてぐったりとしている。
​「おいご主人、こいつは妙だぞ。ただの風邪じゃねぇ」
​狼王フェンリルが、手ぬぐい(通販)で口元を覆いながら警告した。
​「邪悪な瘴気を感じる。……『流行り病』だ」
​佐藤太郎は、倒れている老人の額に手を当てた。火傷しそうなほどの高熱。
さらに、全身の関節痛と悪寒、急激な発症。
現代日本人の知識を持つ太郎には、その病名がすぐにピンときた。
​(インフルエンザだ……しかも、タチの悪い型だな)
​この世界にワクチンはない。衛生状態の悪いスラムで広がれば、体力の低い老人や子供から命を落としていく。
まさにパンデミック(感染爆発)の危機だった。
​「どうしよう……みんな、私の歌を聞いてくれた人たちなのに……!」
​リーザが蒼白な顔で立ち尽くしている。
彼女は海中国家の王女だが、治癒魔法は使えない。ただオロオロと、苦しむ人々を見つめることしかできなかった。
​その時、一人の男がふらりと立ち上がり、リーザに掴みかかろうとした。
​「おい……お前のせいじゃねぇのか……!」
「えっ?」
「昨日、お前が変な歌を歌ってから、みんなおかしくなったんだ! 疫病神め! 出て行け!」
​恐怖は怒りへと変わる。
「そうだ! 出て行け!」と、石を拾おうとする者まで現れた。
理不尽な八つ当たりだが、極限状態の彼らを責めることはできない。
​フェンリルが殺気を放って前に出ようとしたが、太郎がそれを手で制した。
​「……リーザさん」
「は、はい……!」
「君の歌の『歌詞』を覚えていますか?」
「もちろん! ルチアナ様に教わった、病魔を退ける聖なる呪文……」
​太郎は真剣な眼差しで、彼女の肩を掴んだ。
​「歌ってください。君の歌声に合わせて、僕が『魔法』を使います」
「魔法……?」
「ええ。君はただ、みんなを救いたいと強く願って歌えばいい。あとは僕に任せて」
​太郎の力強い言葉に、リーザは大きく頷いた。
彼女は震える足で、再びみかん箱の上に立った。
​「やめろ! また呪いをかける気か!」
「違う! 私は……みんなを元気にしたいの!」
​リーザは大きく息を吸い込み、叫ぶように歌い出した。
​「ガンガンガン! アタマガガン! 視界が回るよ 39度!」
​透き通るような美声が、淀んだ空気を切り裂く。
その瞬間、太郎は電子ボードを高速連打した。
​『購入:総合感冒薬(カプセルタイプ・即効性重視)』
『購入:冷却ジェルシート(お徳用100枚入り)』
『購入:スポーツドリンク(粉末タイプ)』
『購入:ミネラルウォーター(2リットル×50本)』
​(インフルエンザに特効薬はないが、異世界人の免疫力なら、地球の強力な対症療法薬で症状を抑え込めば勝てる!)
​「フェンリル! あの箱の中身を配れ! 超スピードでだ!」
「チッ、人使いの荒いご主人だぜ! 『神速(アクセル)』!」
​フェンリルの姿が銀色の疾風と化した。
​リーザのサビに合わせて、作戦が開始される。
​「今だ! 必殺! タミフルパーンチ!!」
​シュパパパッ!
フェンリルが目にも止まらぬ速さで、苦しむ人々の口に赤と白の鮮やかな『カプセル(風邪薬)』を放り込み、水を含ませる。
​「コウ・セイ・ザイ! ビーム!(キラッ☆)」
​ペタペタペタッ!
太郎が人々の額に、青く輝く『冷却シート』を貼り付けていく。
​「な、なんだこれは!? 冷たくて気持ちいい!?」
「飲み込んだ玉から、力が湧いてくる……!?」
​地球の製薬会社が総力を挙げて開発した薬の効果は、この世界の人々にとって未知の魔法そのものだった。
さらに、太郎が作った濃いめのスポーツドリンクが、脱水症状の体に染み渡る。
​「お熱が下がれば ハッピー・ターン!」
​歌が終わる頃には、うめき声は驚きの声へと変わっていた。
​「……体が、軽い?」
「熱が……引いたぞ!」
「母ちゃんの顔色が戻った!」
​劇的すぎた。
本来なら数日かかる回復が、異世界補正とプラシーボ効果、そして地球の薬の化学反応によって、わずか数分で症状が沈静化したのだ。
​広場に静寂が落ち、そして爆発的な歓声が上がった。
​「すげぇ……! 本当に歌で治しやがった!」
「聖女様だ! 深海の聖女様だ!」
「疑ってすまねぇ! ありがとう、ありがとう!」
​人々は涙を流し、みかん箱の上のリーザを拝み始めた。
リーザ自身も、信じられないものを見る目で自分の手を見つめ、そして涙を溢れさせた。
​「私……本当に……歌えた……!」
(いや、薬のおかげなんだけどね)
​太郎は心の中で突っ込みつつ、満足げに頷いた。
これで彼女は「ただの痛い家出少女」から、「スラムを救った聖女アイドル」へとクラスチェンジしたわけだ。
​「よし、フェンリル。仕事は終わりだ。撤収するぞ」
「へいへい。……たく、とんでもねぇマッチポンプだな」
​二人は英雄扱いされるリーザを置いて、こっそりとその場を離れた。
あくまで手柄は全て、彼女のものにするために。
​          ◇
​一方、その光景を遠く離れた海底神殿から『遠見の水晶』で見ていた海王リヴァイアサン。
​「ウッ……ウゥッ……!」
​「女王様、いかがされましたか!? やはり地上軍を差し向けますか!?」
​側近が慌てる中、リヴァイアサンは滝のような涙を流しながら叫んだ。
​「違うのよぉぉ! あの子が……あんなに立派になって……! 民を救うなんて、王族の鑑だわぁぁ!!」
​そして、その横に映る黒髪の青年(太郎)を見つめ、彼女は胸を押さえた。
​「そしてあの殿方……! あの子の歌に合わせて、見えない速さで『神の秘薬』を配っていたわ……! 影に徹して娘を支えるなんて、なんて奥ゆかしいの……!」
​リヴァイアサンの中で、太郎の評価が『娘の恩人』から『理想の婿養子候補』へと垂直上昇していた。
​「決めたわ。近々、あのお店にお礼に行かなくちゃ。……最高級の『黒真珠』を持ってね」
​こうして、スラムのパンデミックは収束し、太郎の元に新たな(そして重たい)常連客が確定したのだった。
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