​拾った卵が始祖竜だった!通販スキルで育てる為、竜王とラーメン屋を始めたら、最強の3柱と契約してしまい世界が平和になった件

月神世一

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EP 12

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スラムの歌姫とペンライト
​ルミナス帝国の帝都、グロリア。
人間族の繁栄を象徴するこの巨大都市は、光と影が明確に分かれている。
貴族たちが住む煌びやかな「上層街」と、その日暮らしの貧民たちが身を寄せる「下層街(スラム)」だ。
​「うへぇ……臭ぇな、ここは。腐ったドブと絶望の匂いがしやがる」
​狼王フェンリルが、鼻をヒクつかせて顔をしかめた。
彼は人間の姿(銀髪の青年)に化けているが、その野性的な勘は誤魔化せない。
​「我慢してよ、フェンリル。人探しはこっちのエリアだって聞いてるから」
​佐藤太郎はリュックを背負い、雑然とした路地裏を歩いていた。
海王リヴァイアサンからの情報によれば、家出した娘・リーザは、このスラムの一角で活動しているらしい。
​しばらく歩くと、どこからともなく奇妙な歌声が聞こえてきた。
​「~♪ ガンガンガン! アタマガガン! 視界が回るよ 39度!」
​「……なんだ? 呪いの儀式か?」
​フェンリルが耳を塞ぐ。
音程は外れていないが、歌詞が不穏すぎる。
​太郎は音の発生源へと向かった。
そこは、崩れかけたレンガ壁に囲まれた小さな広場だった。
​「インフルエンザ大魔王(ウィルス) やっつけろ!」
​広場の中央、腐った木箱(みかん箱)の上に、一人の少女が立っていた。
透き通るような青い髪。泥で薄汚れているが、隠しきれない真珠のような肌。
間違いなく、海王の娘リーザだ。
​しかし、その姿はあまりにも痛々しかった。
衣装は、海藻を干したものと、ボロボロの布切れを継ぎ接ぎした手製のドレス。
観客は、あくびをしている野良猫が三匹と、鼻水を垂らした貧民街の子供が二人だけ。
​「今だ! 必殺! タミフルパーンチ!!」
​リーザは必死に拳を突き出しているが、通り過ぎる大人たちは「頭のおかしい娘だ」という目で見て見ぬふりをしている。
​「……なぁご主人。あれ、本当に王女様か? 俺には餌を待ってる小鳥にしか見えねぇぞ」
「……うん。素材(ルックス)はSランクだけど、プロデュースがEランクだね」
​太郎は冷静に分析した。
彼女の声質は悪くない。透き通るようなソプラノは、さすが人魚族の血統だ。
問題は、TPOと演出、そして何より「歌詞の意味不明さ」にある。
​歌が終わると、リーザは肩で息をしながら、期待に満ちた目で子供たちを見た。
​「ど、どうかな? 元気出た?」
「ねーちゃん、お腹すいたー」
「……そう」
​リーザは悲しげに眉を下げ、ポケットから黒ずんだパンの耳を取り出した。
自分の昼食なのだろう。それを子供たちに分け与えようとして――。
​「ストップ」
​太郎が二人の間に割って入った。
​「きゃっ!? だ、誰!?」
「通りすがりのファンです。素晴らしい歌でしたよ」
​太郎は営業スマイルを浮かべ、リュックから通販で買った『高級幕の内弁当』を取り出した。
​「これ、差し入れです。子供たちと一緒に食べてください」
「えっ、こ、こんな豪華な……いいの?」
「ファンの務めですから」
​リーザと子供たちは、弁当の蓋を開けた瞬間、目を輝かせて貪り食った。
その様子を眺めながら、太郎は電子ボードを展開した。
​(さて……海王様から頂いた報酬分くらいは、働きますか)
​太郎の脳内でスイッチが切り替わる。
コンビニバイト時代、売れない新商品をPOP広告と陳列の工夫だけで完売させた、**【プロデューサー・タロウ】**の覚醒だ。
​「リーザさん。君の歌は素晴らしい。でも、少し『光』が足りない」
「光……?」
「ええ。アイドルには、観客を導く光が必要なんです」
​太郎はボードを高速でタップした。
​『購入:高輝度サイリウム(100本セット・業務用)』
『購入:ポータブルBluetoothスピーカー(大音量・重低音モデル)』
『購入:コスプレ衣装(魔法少女風・フリル多め・フリーサイズ)』
​ポトン、ポトンと箱が落ちてくる。
​「フェンリル、これ着て」
「あァ!? なんで俺が『ハッピ』なんか着なきゃなんねぇんだ!」
「賄いの肉、ランク下げるよ?」
「……チッ。着りゃいいんだろ、着りゃ!」
​太郎はフェンリルに『親衛隊』と書かれたハッピを着せ、両手にサイリウムを持たせた。
そして、リーザにはフリフリの衣装を渡す。
​「これを着てください。さっきの布切れより、君の肌の色に合います」
「か、可愛い……! これ、本当に私が着ていいの!?」
「もちろんです。さあ、第二部の開演だ」
​数分後。
スラムの広場に、重低音のビートが響き渡った。
太郎がスピーカーから流した伴奏データだ。
​「えっ、なに? すごい音!」
​着替えたリーザが戸惑うが、太郎は客席(地面)から大声で叫んだ。
​「さあ皆さん! 深海の歌姫、リーザちゃんの登場だァァッ!」
​太郎は子供たちにもサイリウムを配り、「こうやって振るんだ!」と教えた。
薄暗いスラムに、色とりどりの化学の光が舞う。
​「き、綺麗……」
​リーザの瞳が潤んだ。
今まで、誰にも見向きもされなかった。
でも今、目の前には光の海があり、一番前では銀髪の強面(フェンリル)と、黒髪の青年(太郎)が、必死に棒を振って応援してくれている。
​「歌わなきゃ……私の歌で、みんなを元気にするの!」
​リーザはマイク(通販のダミー)を握りしめ、高らかに歌い出した。
​「コウ・セイ・ザイ! ビーム!(キラッ☆)」
​伴奏がついたことで、歌声に厚みが出る。
そして何より、サイリウムの光に釣られて、路地裏から人々が顔を出し始めた。
「なんだなんだ?」「祭りか?」
集まってきた浮浪者や日雇い労働者たちに、太郎はすかさず『栄養ドリンク(リポビタン的なもの)』を配り歩く。
​「リーザちゃんからの差し入れだ! 飲んで応援してくれ!」
「おおっ、なんだこれ! 力が湧いてくるぞ!」
「リーザ! リーザ!」
​栄養ドリンクで元気になった観客たちが、サイリウムに合わせてコールを始める。
いつしか広場は、数百人の熱狂的なライブ会場と化していた。
​「ありがとう……! みんな大好きーっ!!」
​曲の最後、リーザが満面の笑みで手を振ると、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
その光景を見ながら、太郎は汗を拭い、満足げに頷いた。
​「よし。掴みはOKだ」
​「……おいご主人。俺、一生分の恥をかいた気がするんだが」
「何言ってるのフェンリル。君のキレキレのオタ芸、最高だったよ」
​こうして、スラムの歌姫リーザは、太郎という敏腕プロデューサー(兼パトロン)を得て、伝説への第一歩を踏み出した。
だが太郎はまだ知らない。
この「インフル・バスター」というふざけた歌が、翌日、本物のパンデミックを救う奇跡の聖歌になることを。
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