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第三章 マルストア領へ
EP 33
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楽園の海と海神の怒り
ギルドが用意した討伐船は、勇太たちが乗ってきた優雅な帆船とは違い、質実剛健な造りだった。船体は鉄で補強され、甲板には巨大なバリスタが備え付けられている。一行は、シレーナ島の沖合、クラーケンが出没するという海域で、その姿を待っていた。
「それにしても、静かですね……。クラーケンは、一体どこにいるんでしょう?」
キャルルが、不気味なほど静かな海面を見つめながら、不安そうに呟く。
「ちっ、じれってえな! つまらんぜ~! おい、デキそこないのイカ野郎! さっさと姿を見せやがれ! 俺様が叩き斬ってやる!」
待ちくたびれたイグニスが、海に向かって大声で挑発した。その直後だった。
ゴゴゴゴゴ……!
船の真下から、巨大な何かが突き上げてくるような、不気味な振動が走った。
ドォォンッ!!
次の瞬間、船全体が、まるで木の葉のように軽々と持ち上げられる。激しい衝撃が一行を襲い、立っているのもままならない。
「うわっ!」
「きゃっ!」
「イグニス! あなたが余計な事を言うからよ!」
体勢を立て直したリーシャが、即座にイグニスを睨みつける。
「お、俺のせいじゃねえだろ!? たぶん!」
その口論の最中、キャルルが叫んだ。
「下から来ます! 大きいのが、たくさん!」
彼女の言葉通り、船の周囲の海面が盛り上がり、巨大な何本もの触手が姿を現した。それは、家屋のように太く、ヌメヌメとした粘液に覆われ、船体をギチギチと締め付け始める。
「てめぇ!」
イグニスは、一番近くにあった触手に向け、渾身の力で戦斧を振り下ろした。だが、刃は分厚い粘液に阻まれ、ぬるり、と滑るだけで、全くダメージを与えられない。
「なっ……! 刃が通らねえだと!?」
「イグニス、退いて! 物理攻撃は相性が悪いわ!」
リーシャが叫ぶと同時に、その杖の先端に、灼熱の魔力が収束する。
「炎よ、奴を貫け! フレイム・バースト!!」
放たれたのは、もはや魔法というより、炎でできた一本の槍だった。それは、触手の粘液を蒸発させながら、その本体を深々と貫いた。
ギュオオオオオッ!
クラーケンは、苦悶の叫びを上げ、船に絡みついていた触手を解くと、堪らず海底深くへと潜っていく。
だが、安堵したのも束の間、今度は船全体が、下から激しく揺さぶられ始めた。見えない深海から、船を転覆させようとしているのだ。
「くっ……! このままじゃ、まずい。何か考えないと!」
勇太は、激しく揺れる甲板に足を踏ん張りながら、仲間たちに叫んだ。
海中に潜む、見えない巨大な敵。
伝説の海獣クラーケンとの死闘は、まだ始まったばかりだった。
ギルドが用意した討伐船は、勇太たちが乗ってきた優雅な帆船とは違い、質実剛健な造りだった。船体は鉄で補強され、甲板には巨大なバリスタが備え付けられている。一行は、シレーナ島の沖合、クラーケンが出没するという海域で、その姿を待っていた。
「それにしても、静かですね……。クラーケンは、一体どこにいるんでしょう?」
キャルルが、不気味なほど静かな海面を見つめながら、不安そうに呟く。
「ちっ、じれってえな! つまらんぜ~! おい、デキそこないのイカ野郎! さっさと姿を見せやがれ! 俺様が叩き斬ってやる!」
待ちくたびれたイグニスが、海に向かって大声で挑発した。その直後だった。
ゴゴゴゴゴ……!
船の真下から、巨大な何かが突き上げてくるような、不気味な振動が走った。
ドォォンッ!!
次の瞬間、船全体が、まるで木の葉のように軽々と持ち上げられる。激しい衝撃が一行を襲い、立っているのもままならない。
「うわっ!」
「きゃっ!」
「イグニス! あなたが余計な事を言うからよ!」
体勢を立て直したリーシャが、即座にイグニスを睨みつける。
「お、俺のせいじゃねえだろ!? たぶん!」
その口論の最中、キャルルが叫んだ。
「下から来ます! 大きいのが、たくさん!」
彼女の言葉通り、船の周囲の海面が盛り上がり、巨大な何本もの触手が姿を現した。それは、家屋のように太く、ヌメヌメとした粘液に覆われ、船体をギチギチと締め付け始める。
「てめぇ!」
イグニスは、一番近くにあった触手に向け、渾身の力で戦斧を振り下ろした。だが、刃は分厚い粘液に阻まれ、ぬるり、と滑るだけで、全くダメージを与えられない。
「なっ……! 刃が通らねえだと!?」
「イグニス、退いて! 物理攻撃は相性が悪いわ!」
リーシャが叫ぶと同時に、その杖の先端に、灼熱の魔力が収束する。
「炎よ、奴を貫け! フレイム・バースト!!」
放たれたのは、もはや魔法というより、炎でできた一本の槍だった。それは、触手の粘液を蒸発させながら、その本体を深々と貫いた。
ギュオオオオオッ!
クラーケンは、苦悶の叫びを上げ、船に絡みついていた触手を解くと、堪らず海底深くへと潜っていく。
だが、安堵したのも束の間、今度は船全体が、下から激しく揺さぶられ始めた。見えない深海から、船を転覆させようとしているのだ。
「くっ……! このままじゃ、まずい。何か考えないと!」
勇太は、激しく揺れる甲板に足を踏ん張りながら、仲間たちに叫んだ。
海中に潜む、見えない巨大な敵。
伝説の海獣クラーケンとの死闘は、まだ始まったばかりだった。
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