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EP 15
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アイドル・リーザ、地獄の特設ステージで歌う
地下ダンジョン「天魔窟」の第50階層。
ここは本来、中間管理職的なボスモンスター「ギガント・ミノタウロス」が支配する、死と絶望のエリア……のはずだった。
「テステス、マイクの調子はどうかな~? 後ろの席のゴブリンちゃんたち、聞こえてる~?」
広大な鍾乳洞のドームに、可愛らしい声が響き渡る。
特設されたステージ(タローが100均の『レジャーシート』と『折りたたみテーブル』で作った)の上には、フリルの衣装を着たリーザが立っていた。
今日の彼女は、いつもの「ゴミ拾い」スタイルではない。
タローから支給された「お腹いっぱいのご飯」でエネルギーを充填し、アイドルとして輝いている。
「さあ、いよいよ開演だ。みんな準備はいいかー!」
ステージ袖で、タローが声を張り上げる。
彼の手には、ダンボール箱いっぱいの「棒状の物体」が握られていた。
「はい、応援グッズだよー。一本500円(銅貨5枚)ねー」
タローが配っているのは、パキッと折ると発光する『ケミカルライト(サイリウム)・極太高輝度タイプ』である。
原価100円のそれを5倍で売りつけるタローも大概だが、購入した冒険者たちの反応は真剣そのものだった。
「おぉ……! 折っただけで、魔力もなしに光り輝いたぞ!?」
「こ、これは伝説の『聖なる破魔の光棒(ホーリー・ロッド)』!?」
「この光を振れば、魔を祓い、推し(リーザ様)に祈りが届くというのか……!」
冒険者たちは涙を流してサイリウムを購入し、両手に掲げた。
会場は、赤、青、緑、ピンクの光の海となる。
そして――それを見ていたのは人間だけではない。
壁際に群がるゴブリンやオーク、そして玉座に座るボス・ギガントミノタウロスまでもが、その光景に圧倒されていた。
「グルァ……(なんだあの光は……神々しい……)」
知能の低い魔物たちには、その光が「威嚇」ではなく「祝祭」の灯火に見えたのだ。
「それでは聴いてください! 私の魂の叫び……新曲、『半額シールの向こう側 ~タイムセールの鐘が鳴る~』!!」
ズンチャ、ズンチャ!
タローがスマホ(スピーカー接続)で流した安っぽい打ち込み音源に合わせて、リーザが歌い出す。
♪ 閉店間際のスーパーで~
♪ 私が見つめる あのシール~
♪ 30パー(%)じゃまだ早い~ 半額まで待つのよ~
切実すぎる歌詞。
しかし、その歌声には、固有スキル【人魚の歌声(セイレーン・ボイス)】による強力な精神干渉(魅了)が乗っていた。
「うおおおおッ! リーザちゃん! 俺たちも待つよ! 半額まで!!」
「そうだ! 諦めるな! 弁当はまだ残ってる!」
冒険者たちがサイリウムを振り回し、統率の取れた動き(オタ芸)を始める。
シュッシュッ! キレッキレのロマンス!
その激しい動きに合わせて、サイリウムの光が残像を描き、魔法陣のような幾何学模様を空中に刻む。
すると、奇跡が起きた。
ボワァァァァ……!
数千本のサイリウムから放たれる「応援の想い(と化学発光)」が共鳴し、ドーム全体を浄化の光で満たしたのだ。
「グ、グオォォォォン……(心が……洗われる……)」
凶暴なギガント・ミノタウロスが、巨大な斧を取り落とした。
彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
日々の侵入者撃退業務に疲れていた彼の心に、リーザの歌声(貧乏生活の哀愁)が染み渡ったのだ。
「モォォォォッ!!(俺も! 応援する!)」
ミノタウロスは雄叫びを上げると、手近なオークをつかみ、サイリウム代わりにブンブンと振り回し始めた。
「「「ブヒィィィッ!?(目が回るぅぅ!?)」」」
オークが発光(物理的に摩擦熱で光る)しながら振り回される。
それを見た他の魔物たちも、松明や骨を振ってリズムに乗り始めた。
人間と魔物が、アイドルの歌の下に一つになった瞬間だった。
「ありがとうー! みんな大好きーっ!」
歌い終えたリーザが投げキッスをすると、ミノタウロスは鼻血を出して倒れた(幸福による気絶)。
ボス攻略、完了である。
◇ ◇ ◇
ライブ後。
グッズ売り場で、タローは売上金を数えてホクホク顔だった。
「いやー、サイリウム完売だわ。次は『タオル』と『Tシャツ』も作ろう」
「タロー様! 差し入れの唐揚げ弁当おいしいですぅ~! もぐもぐ」
リーザも幸せそうだ。
そんな平和な楽屋に、倒したはずのギガント・ミノタウロスが、恥ずかしそうにやってきた。
その巨大な手には、タローの作った『ファンクラブ入会申込書』が握られている。
「モォ……(会員番号、1番ほしい……)」
「……マジかよ。まあ、いいけど」
こうして、天魔窟の第50階層は、冒険者と魔物がサイリウムを振って交流する「平和的なライブ会場」としてリニューアルされた。
後日、このライブの噂を聞きつけた不死鳥フレアが、「私だって歌えるわよ!」と対抗意識を燃やし、タローに「デュエット曲作りなさいよ!」と迫ることになるのだが、それはまた別の騒動である。
地下ダンジョン「天魔窟」の第50階層。
ここは本来、中間管理職的なボスモンスター「ギガント・ミノタウロス」が支配する、死と絶望のエリア……のはずだった。
「テステス、マイクの調子はどうかな~? 後ろの席のゴブリンちゃんたち、聞こえてる~?」
広大な鍾乳洞のドームに、可愛らしい声が響き渡る。
特設されたステージ(タローが100均の『レジャーシート』と『折りたたみテーブル』で作った)の上には、フリルの衣装を着たリーザが立っていた。
今日の彼女は、いつもの「ゴミ拾い」スタイルではない。
タローから支給された「お腹いっぱいのご飯」でエネルギーを充填し、アイドルとして輝いている。
「さあ、いよいよ開演だ。みんな準備はいいかー!」
ステージ袖で、タローが声を張り上げる。
彼の手には、ダンボール箱いっぱいの「棒状の物体」が握られていた。
「はい、応援グッズだよー。一本500円(銅貨5枚)ねー」
タローが配っているのは、パキッと折ると発光する『ケミカルライト(サイリウム)・極太高輝度タイプ』である。
原価100円のそれを5倍で売りつけるタローも大概だが、購入した冒険者たちの反応は真剣そのものだった。
「おぉ……! 折っただけで、魔力もなしに光り輝いたぞ!?」
「こ、これは伝説の『聖なる破魔の光棒(ホーリー・ロッド)』!?」
「この光を振れば、魔を祓い、推し(リーザ様)に祈りが届くというのか……!」
冒険者たちは涙を流してサイリウムを購入し、両手に掲げた。
会場は、赤、青、緑、ピンクの光の海となる。
そして――それを見ていたのは人間だけではない。
壁際に群がるゴブリンやオーク、そして玉座に座るボス・ギガントミノタウロスまでもが、その光景に圧倒されていた。
「グルァ……(なんだあの光は……神々しい……)」
知能の低い魔物たちには、その光が「威嚇」ではなく「祝祭」の灯火に見えたのだ。
「それでは聴いてください! 私の魂の叫び……新曲、『半額シールの向こう側 ~タイムセールの鐘が鳴る~』!!」
ズンチャ、ズンチャ!
タローがスマホ(スピーカー接続)で流した安っぽい打ち込み音源に合わせて、リーザが歌い出す。
♪ 閉店間際のスーパーで~
♪ 私が見つめる あのシール~
♪ 30パー(%)じゃまだ早い~ 半額まで待つのよ~
切実すぎる歌詞。
しかし、その歌声には、固有スキル【人魚の歌声(セイレーン・ボイス)】による強力な精神干渉(魅了)が乗っていた。
「うおおおおッ! リーザちゃん! 俺たちも待つよ! 半額まで!!」
「そうだ! 諦めるな! 弁当はまだ残ってる!」
冒険者たちがサイリウムを振り回し、統率の取れた動き(オタ芸)を始める。
シュッシュッ! キレッキレのロマンス!
その激しい動きに合わせて、サイリウムの光が残像を描き、魔法陣のような幾何学模様を空中に刻む。
すると、奇跡が起きた。
ボワァァァァ……!
数千本のサイリウムから放たれる「応援の想い(と化学発光)」が共鳴し、ドーム全体を浄化の光で満たしたのだ。
「グ、グオォォォォン……(心が……洗われる……)」
凶暴なギガント・ミノタウロスが、巨大な斧を取り落とした。
彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
日々の侵入者撃退業務に疲れていた彼の心に、リーザの歌声(貧乏生活の哀愁)が染み渡ったのだ。
「モォォォォッ!!(俺も! 応援する!)」
ミノタウロスは雄叫びを上げると、手近なオークをつかみ、サイリウム代わりにブンブンと振り回し始めた。
「「「ブヒィィィッ!?(目が回るぅぅ!?)」」」
オークが発光(物理的に摩擦熱で光る)しながら振り回される。
それを見た他の魔物たちも、松明や骨を振ってリズムに乗り始めた。
人間と魔物が、アイドルの歌の下に一つになった瞬間だった。
「ありがとうー! みんな大好きーっ!」
歌い終えたリーザが投げキッスをすると、ミノタウロスは鼻血を出して倒れた(幸福による気絶)。
ボス攻略、完了である。
◇ ◇ ◇
ライブ後。
グッズ売り場で、タローは売上金を数えてホクホク顔だった。
「いやー、サイリウム完売だわ。次は『タオル』と『Tシャツ』も作ろう」
「タロー様! 差し入れの唐揚げ弁当おいしいですぅ~! もぐもぐ」
リーザも幸せそうだ。
そんな平和な楽屋に、倒したはずのギガント・ミノタウロスが、恥ずかしそうにやってきた。
その巨大な手には、タローの作った『ファンクラブ入会申込書』が握られている。
「モォ……(会員番号、1番ほしい……)」
「……マジかよ。まあ、いいけど」
こうして、天魔窟の第50階層は、冒険者と魔物がサイリウムを振って交流する「平和的なライブ会場」としてリニューアルされた。
後日、このライブの噂を聞きつけた不死鳥フレアが、「私だって歌えるわよ!」と対抗意識を燃やし、タローに「デュエット曲作りなさいよ!」と迫ることになるのだが、それはまた別の騒動である。
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