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第二章 神竜の守護者
EP 77
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神竜のお散歩と、優しすぎる試練
最初の魔物(ギルマン)の群れを、アルカの「あっち行って」の一言で無力化した一行。
デュラスは深すぎるため息をつき、フィリアとエルミナは「さすがアルカちゃん!」「すごいですわ!」と手放しで称賛している。当のアルカは、綺麗になった水路で、再び発光する小魚を追いかけ始めていた。
「……行くぞ、アルカ。あまり、はしゃぎすぎるなよ」
デュラスが、早くも保護者のような口調で声をかけると、アルカは「はーい!」と元気よく返事をし、一行の元へと戻ってきた。
こうして、S級ダンジョン攻略パーティは、神竜のお散歩に付き添う三人の引率者のような構図で、恐るべき迷宮の奥へと、奇妙な足取りで進んでいくのだった。
次に彼らがたどり着いたのは、これまでの湿った遺跡とは打って変わって、まるで海底の楽園のような、広大で美しい空間だった。
天井からは、柔らかな光が降り注ぎ、色とりどりの珊瑚が輝き、そして床には、フワフワとした、見たこともない可愛らしい生き物が、たくさん丸まっていた。
それは、海のウサギのような姿をした、全身が綿毛のようなもので覆われた、小さな生き物だった。
「わーーーっ!可愛いーーーっ!」
その光景に、真っ先に歓声を上げたのは、アルカだった。
「もふもふがいっぱいいるー!」
彼女は、デュラスの制止も聞かず、そのフワフワの生き物たちへと駆け寄ろうとする。
「まあ!なんて愛らしい生き物でしょう!」
「うん、すっごく可愛いね!」
フィリアとエルミナも、その光景にすっかり心を奪われている。
デュラスだけが、冷静に、そして警戒を解いていなかった。
「待て。ここは、あのキュルリンが創ったダンジョンだぞ。ただ『可愛い』だけで終わるはずが……」
そのデュラスの言葉を証明するかのように、アルカが近づいた瞬間、フワフワの生き物たちが、一斉にそのつぶらな瞳をカッと見開き、鋭い牙を剥き出しにした!
「「「シャアアアアアアッ!!」」」
可愛らしい綿毛の下には、獰猛な肉食獣の本性が隠されていたのだ。
「――やはりか!」
デュラスが杖を構え、フィリアが弓を引き絞り、エルミナが盾を構える。
しかし、その時、広間の天井から、キュルリンの楽しげな声が響き渡った。
「くふふ、ようこそ挑戦者たちよ!ここは『もふもふパラダイス・サバイバル』のステージじゃ!」
声と同時に、広間の反対側にある岩陰から、今度は、先程のフワフワとは違う、キラキラと輝く毛並みを持つ、ラッコのような、さらに輪をかけて可愛らしい生き物たちが、怯えたように姿を現した。
「そこの怒りんぼの『もふもふウサギ』は、全部倒さねばならん!じゃが、あそこにいる、気弱な『うるうるラッコ』ちゃんを、一匹でも傷つけたり、怖がらせて泣かせたりしたら……」
キュルリンは、そこで意地悪く、言葉を切った。
「――この部屋の天井が、ぜーんぶ、落ちてくるから、そのつもりでな!健闘を祈るぞよ!」
「「「なっ……!?」」」
その、あまりにも悪趣味で、あまりにも意地の悪いルール。
広範囲を攻撃するデュラスの魔法も、エルミナの「ゴールド・フェザー」も、これでは使えない。下手をすれば、ラッコたちを巻き込んでしまう。
そして何より、このルールが牙を剥いたのは、パーティ最強の戦力である、アルカだった。
「……えっと……」
アルカは、牙を剥く「もふもふウサギ」と、隅でブルブル震える「うるうるラッコ」を交互に見つめ、完全に混乱していた。
「……どっちも、可愛い……。戦うのは、かわいそう……」
彼女の、純粋すぎる優しさが、この状況では、完全な足枷となっていた。
「くそっ、あの妖精め……!」デュラスは、この試練の本当の意味を悟った。「これは、アルカを封じるための罠か!」
「どうするの、デュラスさん!?」
「仕方ない!我々三人でやるぞ!」
デュラスは、即座に指示を出す。
「エルミナ!お前は、あのラッコたちの前で盾を構え、絶対に守り抜け!フィリア!お前の『鷹の目』で、ラッコに近づくウサギだけを、一匹ずつ正確に射抜け!私は、単体拘束魔法で援護する!」
そして、アルカに向き直る。
「――アルカ!お前の仕事は、一番重要だ!あそこにいるラッコちゃんたちが、怖がっていないか、悲しそうな顔をしていないか、よーく見て、俺たちに教えるんだ!いいな!」
「う、うん!わかった!」
アルカは、重要な任務を与えられたと、真剣な顔で頷いた。
こうして、S級ダンジョンの中とは思えない、奇妙な戦いが始まった。
エルミナが、聖なる盾で、まるで雛鳥を守る親鳥のように、うるうるラッコたちの壁となり、フィリアが、その超絶技巧の弓術で、ラッコに近づく敵だけを、精密に射抜いていく。デュラスは、その二人から漏れた敵を、的確な拘束魔法で足止めする。
それは、派手な必殺技の応酬ではない。
極限の集中力と、完璧な連携が求められる、あまりにも繊細で、あまりにも過酷な「魔物駆除作業」だった。
数十分後。
最後の一匹をフィリアの矢が射抜いた時、三人は、汗だくで、その場にへたり込んでいた。
「はぁ……はぁ……。こ、今までのボス戦より、疲れたかもしれない……」
フィリアの言葉に、エルミナもデュラスも、深く頷くしかなかった。
「デュラスー!フィリアー!エルミナー!」
その三人の元へ、アルカが、満面の笑みで駆け寄ってきた。
「見て見て!ラッコちゃんたち、もう怖がってないよ!アルカ、ちゃんとお仕事できた!」
彼女の手の中では、すっかり懐いたらしい「うるうるラッコ」が、嬉しそうに鳴いていた。
その、あまりにも平和で、あまりにも可愛らしい光景。
デュラスは、その光景を、深すぎる疲労感と共に、ただ、遠い目で見つめるのだった。
(……このダンジョン、もしかして、本当の敵は、あの妖精の悪趣味な性格そのものなのでは……)
彼の、胃痛の種が、また一つ、増えた瞬間だった。
最初の魔物(ギルマン)の群れを、アルカの「あっち行って」の一言で無力化した一行。
デュラスは深すぎるため息をつき、フィリアとエルミナは「さすがアルカちゃん!」「すごいですわ!」と手放しで称賛している。当のアルカは、綺麗になった水路で、再び発光する小魚を追いかけ始めていた。
「……行くぞ、アルカ。あまり、はしゃぎすぎるなよ」
デュラスが、早くも保護者のような口調で声をかけると、アルカは「はーい!」と元気よく返事をし、一行の元へと戻ってきた。
こうして、S級ダンジョン攻略パーティは、神竜のお散歩に付き添う三人の引率者のような構図で、恐るべき迷宮の奥へと、奇妙な足取りで進んでいくのだった。
次に彼らがたどり着いたのは、これまでの湿った遺跡とは打って変わって、まるで海底の楽園のような、広大で美しい空間だった。
天井からは、柔らかな光が降り注ぎ、色とりどりの珊瑚が輝き、そして床には、フワフワとした、見たこともない可愛らしい生き物が、たくさん丸まっていた。
それは、海のウサギのような姿をした、全身が綿毛のようなもので覆われた、小さな生き物だった。
「わーーーっ!可愛いーーーっ!」
その光景に、真っ先に歓声を上げたのは、アルカだった。
「もふもふがいっぱいいるー!」
彼女は、デュラスの制止も聞かず、そのフワフワの生き物たちへと駆け寄ろうとする。
「まあ!なんて愛らしい生き物でしょう!」
「うん、すっごく可愛いね!」
フィリアとエルミナも、その光景にすっかり心を奪われている。
デュラスだけが、冷静に、そして警戒を解いていなかった。
「待て。ここは、あのキュルリンが創ったダンジョンだぞ。ただ『可愛い』だけで終わるはずが……」
そのデュラスの言葉を証明するかのように、アルカが近づいた瞬間、フワフワの生き物たちが、一斉にそのつぶらな瞳をカッと見開き、鋭い牙を剥き出しにした!
「「「シャアアアアアアッ!!」」」
可愛らしい綿毛の下には、獰猛な肉食獣の本性が隠されていたのだ。
「――やはりか!」
デュラスが杖を構え、フィリアが弓を引き絞り、エルミナが盾を構える。
しかし、その時、広間の天井から、キュルリンの楽しげな声が響き渡った。
「くふふ、ようこそ挑戦者たちよ!ここは『もふもふパラダイス・サバイバル』のステージじゃ!」
声と同時に、広間の反対側にある岩陰から、今度は、先程のフワフワとは違う、キラキラと輝く毛並みを持つ、ラッコのような、さらに輪をかけて可愛らしい生き物たちが、怯えたように姿を現した。
「そこの怒りんぼの『もふもふウサギ』は、全部倒さねばならん!じゃが、あそこにいる、気弱な『うるうるラッコ』ちゃんを、一匹でも傷つけたり、怖がらせて泣かせたりしたら……」
キュルリンは、そこで意地悪く、言葉を切った。
「――この部屋の天井が、ぜーんぶ、落ちてくるから、そのつもりでな!健闘を祈るぞよ!」
「「「なっ……!?」」」
その、あまりにも悪趣味で、あまりにも意地の悪いルール。
広範囲を攻撃するデュラスの魔法も、エルミナの「ゴールド・フェザー」も、これでは使えない。下手をすれば、ラッコたちを巻き込んでしまう。
そして何より、このルールが牙を剥いたのは、パーティ最強の戦力である、アルカだった。
「……えっと……」
アルカは、牙を剥く「もふもふウサギ」と、隅でブルブル震える「うるうるラッコ」を交互に見つめ、完全に混乱していた。
「……どっちも、可愛い……。戦うのは、かわいそう……」
彼女の、純粋すぎる優しさが、この状況では、完全な足枷となっていた。
「くそっ、あの妖精め……!」デュラスは、この試練の本当の意味を悟った。「これは、アルカを封じるための罠か!」
「どうするの、デュラスさん!?」
「仕方ない!我々三人でやるぞ!」
デュラスは、即座に指示を出す。
「エルミナ!お前は、あのラッコたちの前で盾を構え、絶対に守り抜け!フィリア!お前の『鷹の目』で、ラッコに近づくウサギだけを、一匹ずつ正確に射抜け!私は、単体拘束魔法で援護する!」
そして、アルカに向き直る。
「――アルカ!お前の仕事は、一番重要だ!あそこにいるラッコちゃんたちが、怖がっていないか、悲しそうな顔をしていないか、よーく見て、俺たちに教えるんだ!いいな!」
「う、うん!わかった!」
アルカは、重要な任務を与えられたと、真剣な顔で頷いた。
こうして、S級ダンジョンの中とは思えない、奇妙な戦いが始まった。
エルミナが、聖なる盾で、まるで雛鳥を守る親鳥のように、うるうるラッコたちの壁となり、フィリアが、その超絶技巧の弓術で、ラッコに近づく敵だけを、精密に射抜いていく。デュラスは、その二人から漏れた敵を、的確な拘束魔法で足止めする。
それは、派手な必殺技の応酬ではない。
極限の集中力と、完璧な連携が求められる、あまりにも繊細で、あまりにも過酷な「魔物駆除作業」だった。
数十分後。
最後の一匹をフィリアの矢が射抜いた時、三人は、汗だくで、その場にへたり込んでいた。
「はぁ……はぁ……。こ、今までのボス戦より、疲れたかもしれない……」
フィリアの言葉に、エルミナもデュラスも、深く頷くしかなかった。
「デュラスー!フィリアー!エルミナー!」
その三人の元へ、アルカが、満面の笑みで駆け寄ってきた。
「見て見て!ラッコちゃんたち、もう怖がってないよ!アルカ、ちゃんとお仕事できた!」
彼女の手の中では、すっかり懐いたらしい「うるうるラッコ」が、嬉しそうに鳴いていた。
その、あまりにも平和で、あまりにも可愛らしい光景。
デュラスは、その光景を、深すぎる疲労感と共に、ただ、遠い目で見つめるのだった。
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