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第二章 神竜の守護者
EP 82
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英雄たちの凱旋と、お弁当ウォーズ
その日の夕暮れ時。マモルの家の、広々としたリビングは、異様な緊張感と、香ばしい匂いに包まれていた。
エプロン姿のマモルは、キッチンのカウンターの上で、小さな赤いウインナーと、一本の包丁を前に、うんうんと唸っている。
「……くそっ、足が8本にならない……!どうしても6本になっちまう!タコじゃなくて、これはもう、ただの赤い宇宙人だ……!」
彼の傍らでは、パソコンのモニターが「初心者でも絶対できる!愛情たっぷり♡キャラ弁講座」というサイトを映し出している。
明日に控えたアルカの遠足。そのお弁当作りの練習は、S級ダンジョン攻略よりも、遥かに難航していた。
その、あまりにも平和な戦いの最中。
リビングの中央の空間が、ふわりと、暖炉の炎のような、温かい光に包まれた。
「――ただいま!」
「ただいま戻りましたわ!」
「……帰還した」
「マモルただいまー!」
光が収まると、そこには、少し疲れた、しかし確かな達成感と自信に満ちた表情の、フィリア、エルミナ、デュラス、そしてアルカの姿があった。彼らは、キュルリンから授かった「絆の炉石」の力で、ダンジョンから直接、我が家へと帰還したのだ。
「おおっ!みんな、お帰り!大丈夫だったか!?怪我はないか!?」
マモルは、練習中のタコさんウインナーを放り出し、仲間たちの元へ駆け寄った。
「うん、もちろん!見て、マモル!」フィリアは、得意げに胸を張った。「デュラスさんと、エルミナさんと、私の三人で、最後のボスも、ちゃんとやっつけたんだから!」
「はい!」エルミナも、誇らしげに頷く。「そして、これが、今回のダンジョンの報酬ですわ!」
彼女が差し出したのは、温かな光を放つ「絆の炉石」だった。
デュラスもまた、やれやれといった表情で肩をすくめながらも、その声には確かな手応えが滲んでいた。
「……まあ、お前たちがいない状況での、良い実戦訓練にはなったな。ここにいる三人も、ただの飾りではないと、証明できたはずだ」
「マモル見て見てー!アルカ、お友達できたの!」
アルカは、どこで手に入れたのか、キラキラと輝く毛並みを持つ「うるうるラッコ」を、嬉しそうにマモルに見せびらかしている。
その、誇らしげな仲間たちの顔を見て、マモルの胸に、熱いものがこみ上げてきた。
「……そうか。そうか!すごいじゃないか、みんな!俺がいなくても、ちゃんと……。いや、俺がいなかったからこそ、だな。信じてたよ。お前たちは、俺が世界で一番誇れる、最高の仲間だ!」
マモルは、心からの笑顔で、仲間たちの健闘を称えた。
その、感動的な再会の雰囲気を、フィリアが、くんくんと鼻を鳴らして破った。
「……あれ?マモル、なんだか、すごく良い匂いがしない?」
「あ、ああ、これは……」
マモルは、気まずそうに、キッチンのカウンターを指差した。そこには、無数の調理器具と、可愛らしい形に切り抜かれた野菜、そして、足が6本しかない、無数の「赤い宇宙人」の残骸が転がっていた。
「明日の、アルカの遠足のお弁当の、練習を……」
「「お弁当!」」
フィリアとエルミナの目が、カッと輝いた。
「わー!キャラ弁だ!可愛いー!」
「まあ!マモル様、そのような繊細な作業もお出来になるのですか!?」
二人は、ダンジョン攻略の疲れも忘れ、キッチンの周りに集まってくる。
「マモル、下手っぴー!タコさんの足はね、こうやって、斜めに切り込みを入れるんだよ!」
「まあ、素敵ですわ!こちらの卵焼きには、お花の形を刻印してみるのはいかがでしょう?」
「あるかも、やるー!」
あっという間に、キッチンは、英雄たちの凱旋祝賀会から、賑やかな「お弁当作り教室」へとその姿を変えた。
デュラスだけが、その光景を、少し離れた場所から、やれやれといった表情で眺めている。
(……ついさっきまで、古代のゴーレムと死闘を繰り広げていたとは思えんな……)
S級ダンジョンを攻略した英雄たちが、今、総力を挙げて挑んでいる、最大の敵。
それは、神竜アルカの、最高の笑顔を引き出すための、「完璧なキャラ弁」だった。
アルニア公爵領の、どこまでも温かく、そしてどこまでも賑やかな夜は、こうして、ゆっくりと更けていくのだった。
その日の夕暮れ時。マモルの家の、広々としたリビングは、異様な緊張感と、香ばしい匂いに包まれていた。
エプロン姿のマモルは、キッチンのカウンターの上で、小さな赤いウインナーと、一本の包丁を前に、うんうんと唸っている。
「……くそっ、足が8本にならない……!どうしても6本になっちまう!タコじゃなくて、これはもう、ただの赤い宇宙人だ……!」
彼の傍らでは、パソコンのモニターが「初心者でも絶対できる!愛情たっぷり♡キャラ弁講座」というサイトを映し出している。
明日に控えたアルカの遠足。そのお弁当作りの練習は、S級ダンジョン攻略よりも、遥かに難航していた。
その、あまりにも平和な戦いの最中。
リビングの中央の空間が、ふわりと、暖炉の炎のような、温かい光に包まれた。
「――ただいま!」
「ただいま戻りましたわ!」
「……帰還した」
「マモルただいまー!」
光が収まると、そこには、少し疲れた、しかし確かな達成感と自信に満ちた表情の、フィリア、エルミナ、デュラス、そしてアルカの姿があった。彼らは、キュルリンから授かった「絆の炉石」の力で、ダンジョンから直接、我が家へと帰還したのだ。
「おおっ!みんな、お帰り!大丈夫だったか!?怪我はないか!?」
マモルは、練習中のタコさんウインナーを放り出し、仲間たちの元へ駆け寄った。
「うん、もちろん!見て、マモル!」フィリアは、得意げに胸を張った。「デュラスさんと、エルミナさんと、私の三人で、最後のボスも、ちゃんとやっつけたんだから!」
「はい!」エルミナも、誇らしげに頷く。「そして、これが、今回のダンジョンの報酬ですわ!」
彼女が差し出したのは、温かな光を放つ「絆の炉石」だった。
デュラスもまた、やれやれといった表情で肩をすくめながらも、その声には確かな手応えが滲んでいた。
「……まあ、お前たちがいない状況での、良い実戦訓練にはなったな。ここにいる三人も、ただの飾りではないと、証明できたはずだ」
「マモル見て見てー!アルカ、お友達できたの!」
アルカは、どこで手に入れたのか、キラキラと輝く毛並みを持つ「うるうるラッコ」を、嬉しそうにマモルに見せびらかしている。
その、誇らしげな仲間たちの顔を見て、マモルの胸に、熱いものがこみ上げてきた。
「……そうか。そうか!すごいじゃないか、みんな!俺がいなくても、ちゃんと……。いや、俺がいなかったからこそ、だな。信じてたよ。お前たちは、俺が世界で一番誇れる、最高の仲間だ!」
マモルは、心からの笑顔で、仲間たちの健闘を称えた。
その、感動的な再会の雰囲気を、フィリアが、くんくんと鼻を鳴らして破った。
「……あれ?マモル、なんだか、すごく良い匂いがしない?」
「あ、ああ、これは……」
マモルは、気まずそうに、キッチンのカウンターを指差した。そこには、無数の調理器具と、可愛らしい形に切り抜かれた野菜、そして、足が6本しかない、無数の「赤い宇宙人」の残骸が転がっていた。
「明日の、アルカの遠足のお弁当の、練習を……」
「「お弁当!」」
フィリアとエルミナの目が、カッと輝いた。
「わー!キャラ弁だ!可愛いー!」
「まあ!マモル様、そのような繊細な作業もお出来になるのですか!?」
二人は、ダンジョン攻略の疲れも忘れ、キッチンの周りに集まってくる。
「マモル、下手っぴー!タコさんの足はね、こうやって、斜めに切り込みを入れるんだよ!」
「まあ、素敵ですわ!こちらの卵焼きには、お花の形を刻印してみるのはいかがでしょう?」
「あるかも、やるー!」
あっという間に、キッチンは、英雄たちの凱旋祝賀会から、賑やかな「お弁当作り教室」へとその姿を変えた。
デュラスだけが、その光景を、少し離れた場所から、やれやれといった表情で眺めている。
(……ついさっきまで、古代のゴーレムと死闘を繰り広げていたとは思えんな……)
S級ダンジョンを攻略した英雄たちが、今、総力を挙げて挑んでいる、最大の敵。
それは、神竜アルカの、最高の笑顔を引き出すための、「完璧なキャラ弁」だった。
アルニア公爵領の、どこまでも温かく、そしてどこまでも賑やかな夜は、こうして、ゆっくりと更けていくのだった。
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