異世界転生×ユニークスキル マイホームで無双する!?【TOP10入り感謝!】

月神世一

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EP 30

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涼風の着想、経済という名の城壁、そして見えた道

アルニア村での教師生活と、仲間たちとの賑やかな日常。それは平穏で満ち足りてはいたが、真守の心の片隅には、デュラスに指摘された「異質な力を持つ者の末路」という懸念が常にあった。

そんなある夏の日。マイホームの中はエアコンのおかげで快適そのものだが、一歩外に出れば、異世界の太陽が容赦なく地面を照りつけ、汗が噴き出してくる。自警団の訓練に励むボルグ団長も、畑仕事をする村人たちも、皆、汗だくで作業に励んでいた。

「……それにしても、暑いな。こっちの世界の夏も、やっぱり厳しいもんだ」

リビングで冷たい麦茶を飲みながら、真守はぽつりと呟いた。

「そうですね。私の故郷セレスティアは、常に聖なる風が吹いているので、これほどの暑さは経験したことがありませんわ」エルミナが、手編みのレースを編みながら優雅に言う。

「魔界の灼熱地獄に比べれば、これくらいは散歩のようなものだがな」デュラスは涼しい顔で本を読んでいた。

「なあ、デュラス」真守は、何かを思いついたように顔を上げた。「この世界に、『クーラー』って作れないのかな?」

「……くーらー?なんだそれは。新たな召喚獣の名前か?」

デュラスは怪訝な顔で本から目を離した。

「いや、部屋の空気を冷やす機械だ。俺の部屋にも付いてるだろ、あれだよ」

真守は壁のエアコンを指差す。

「あれは、気化熱の原理を利用してるんだ。水が蒸発する時、周りの熱を奪うだろ?打ち水とか、汗が乾く時に涼しくなるのと同じだ。その現象を、機械の中で効率的に繰り返してるだけなんだよ」

「ほう……」デュラスの深紅の瞳に、知的な光が宿った。「『相転移』に伴うエネルギー吸収を冷却に応用する、か。我々の魔法体系にはない、実に合理的な発想だ」

「だろ?だから、この家のエアコンみたいに電気でコンプレッサーを動かすのは無理でも、例えば風魔法で常に風を送り続けたり、氷結魔法で冷却媒体を冷やしたりすれば、似たようなものは作れるんじゃないかと思ってな」

「なるほどな。風魔法と氷結魔法の複合術式か……悪くない視点だ」

真守はさらに続けた。「俺がいた世界でも、昔は大きな氷の塊を家庭に売って、その周りに風を送って涼んでたらしい。だから、いきなり高性能なクーラーは無理でも、氷を長持ちさせる『保冷庫』とか、濡らしたフィルターに風を送るだけの『冷風機』くらいなら、この世界の技術と魔法でも作れるかもしれない」

「でも、マモル。どうして急にそんなことを?」

話を聞いていたフィリアが、不思議そうに尋ねた。エルミナも、編み物の手を止めて「うんうん」と頷いている。

真守は、仲間たちの顔を順に見渡し、そして静かに、しかし力強い口調で言った。

「俺が、この世界で誰にも打たれない為に。そして、誰にも文句を言わせない『出過ぎた杭』になる為にだよ。そのために、俺が中心となる経済網を作るんだ」

「……経済網?」

「ああ。この『涼しくなる技術』は、そのための最初の、そして最強の切り札になる」

真守の言葉に、デュラスはハッと目を見開いた。

「……そういうことか。快適な生活への欲求は、種族を問わず誰もが持つ根源的なものだ。特に、夏場の労働環境の改善や、食料の長期保存、医療への応用……その価値は計り知れない。その技術と、そこから生まれる製品の流通をマモル、お前が完全に掌握すれば……」

「国とて、お前を無下にはできなくなる。下手に拘束したりすれば、その恩恵が止まることで民衆や貴族から不満が噴出するからな。むしろ、こちらの機嫌を損ねないよう、丁重に扱わざるを得なくなるだろう。見事な戦略だ、マモル。力で支配するのではなく、経済で支配する……実に狡猾で、魔族好みだ」

デュラスは、初めて会った時から見せなかったような、心からの感嘆の笑みを浮かべた。

フィリアも、その壮大な計画に目を輝かせた。

「そっか!マモルの家のこの快適さを、村のみんなや、他の国の人たちも知ったら……絶対に欲しがるに決まってるもん!それなら、もう誰もマモルをいじめたりできないんだね!」

「はい!人々を暑さの苦しみから解放する……それは、とても素晴らしい『善行』にも繋がりますわ!その結果としてマモル様の安全が守られるのでしたら、私も全力で協力させていただきます!」

エルミナもまた、その計画の正当性に強く共感し、力強く頷いた。

仲間たちの言葉に、真守の胸に熱いものがこみ上げてくる。

ただ隠れて生き延びるのではない。ただ力に任せて戦うのでもない。

自分の持つ知識を、仲間たちの力を、そしてこの世界の技術を融合させ、新たな価値を創造し、それをもって自らの自由と未来を勝ち取る。

それは、元・中学教師である彼らしい、建設的で、そしてとてつもなく野心的な道だった。

「……道が見えてきたな」

真守は、窓の外に広がるアルカシア大陸の青い空を見上げ、そう呟いた。

その瞳には、もう迷いはなかった。

「よし、まずは試作品作りだ!デュラスは魔法理論の構築、フィリアとエルミナは材料になりそうな植物や魔石の探索、俺は書斎で設計図を描く!それと、ガンツの親方も巻き込むぞ!」

加藤真守の「快適生活工房(仮)」が、今、静かに、しかし確かに、その産声を上げた。

彼のマイホームから始まるその小さな工房が、やがて大陸全体の経済を、そして人々の暮らしを根底から揺るがすことになるのを、まだ誰も知らない。

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