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EP 50
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幻惑の鏡回廊、無数の獣、そして鷹の目の真実
首無し暗黒騎士との死闘を乗り越え、真守たちが第二階層へと続く扉を開けた先は、それまでとは全く異質な空間だった。
そこは、壁も、床も、天井までもが、磨き上げられた巨大な鏡で構成された、無限回廊。自分たちの姿が四方八方にどこまでも映り込み、一歩足を踏み出すだけで方向感覚も距離感も狂わされる、幻惑的な空間だ。
「うわっ……!なんだ、この部屋は……目がチカチカする……」
フィリアが、自分の姿が無限に映る光景に目を回している。
「気をつけろ。キュルリンのことだ、ただの飾りであるはずがない。おそらく、心理的な罠も兼ねているぞ」
デュラスは、杖を構え、冷静に周囲の魔力の流れを探る。エルミナも、聖なる盾を前面に構え、警戒を怠らない。
真守は、仲間たちに声をかけた。
「全員、背中合わせで円陣を組め!どこから何が来ても対応できるようにするぞ!」
その指示に従い、四人が中央で円陣を組んだ、まさにその瞬間だった。
ガシャン!という甲高い音と共に、周囲の鏡の中から、獣のような鋭い爪が、幻影のように突き出してきた!
「――っ!上か!」
「右からもですわ!」
「後ろだ!」
四方八方から、時間差で繰り出される無数の斬撃。それは、鏡の中に潜む何か――「鏡獣グロッタ」の分身たちによる、完璧な飽和攻撃だった。
「くそっ、キリがない!」
真守は「王帝」を巧みに操り、迫りくる爪を弾き、いなすが、攻撃はすぐに別の鏡から繰り出される。エルミナの聖盾も、無数の攻撃を完全に防ぎきることはできず、鎧に浅い傷が刻まれ始めた。
「我が炎よ、幻影ごと焼き尽くせ!」
デュラスが広範囲の火炎魔法を放つが、炎は鏡に反射して威力が減衰し、倒しても倒しても、すぐに新たな鏡獣が別の鏡から姿を現す。
「どうすれば……!このままではジリ貧ですわ!」
エルミナの悲痛な声が響く。
その時、後方で弓を構え、じっと戦況を見つめていたフィリアの瞳が、カッと見開かれた。
スキル「鷹の目」が、常人には見えない真実を捉えていたのだ。
無数の鏡が攻撃を仕掛けてくる中で、たった一枚だけ、何の動きも見せない、静かな鏡がある。他の鏡に映る鏡獣たちが微かに魔力の残滓を放っているのに対し、その鏡だけが、何の反応も示していない。不自然なまでに、静かすぎる。
(あの鏡……そこからだけ、魔物が出てこない……。もしかして、あれが全ての幻影を映し出している本体……!?)
フィリアは、自らの直感と「鷹の目」が導き出した答えに賭けた。
「マモル、エルミナさん、デュラスさん!一分だけ、時間を稼いで!私がこいつを終わらせる!」
フィリアの力強い声に、仲間たちが応える。
彼女は深く息を吸い、愛用の弓に矢を番えた。そして、その矢に自身の闘気を、これ以上ないほどに凝縮させていく。矢の先端が、眩いほどの闘気のオーラで輝き始めた。
「――行くわよ!」
真守たちが作り出した、ほんの一瞬の隙。フィリアはその好機を逃さない。
「一点集中! チャージ・アローッ!!」
放たれた矢は、闘気の塊そのものとなって一直線に飛翔し、フィリアが見定めた「静かな鏡」へと吸い込まれていった。
パリンッ!という軽い音ではない。
ゴォォォォンッ!!という、空間そのものが砕けるような、凄まじい轟音と共に、その鏡が粉々に砕け散った!
そして、本体である鏡が破壊された瞬間、あれほど執拗に襲いかかってきていた無数の鏡獣グロッタが、甲高い悲鳴を上げながら、ガラスの破片のようにキラキラと光りながら消滅していった。
後に残されたのは、静寂と、割れた鏡の破片だけだった。
「……やったか!」真守が、息を切らしながら言った。
「すごいよフィリア!よくあの鏡が本体だって見つけたね!」
「フィリアさんの慧眼(けいがん)のおかげですわ!あのままでは、本当に危なかったです……」
エルミナも、安堵の表情でフィリアの肩を叩く。
「ふん、力押しだけでは通用しないという、良い教訓になったな。見事だ、フィリア。お前のその『目』は、我々のパーティにとって何よりの宝だ」
デュラスからの、滅多に聞けない素直な称賛の言葉に、フィリアは少し照れくさそうに、しかし誇らしげに微笑んだ。
「えへへ、みんなのおかげだよ!」
仲間たちの賞賛を受け、フィリアの心には、パーティの一員として確かな自信が芽生えていた。
キュルリンの創り出した幻惑の回廊は、フィリアという弓使いの真価を、仲間たちに改めて示すための、最高の舞台となったのだった。
そして、砕け散った鏡の破片が集まり始め、次の部屋への新たな道を形作り始めていることに、彼らはまだ気づいていなかった。
首無し暗黒騎士との死闘を乗り越え、真守たちが第二階層へと続く扉を開けた先は、それまでとは全く異質な空間だった。
そこは、壁も、床も、天井までもが、磨き上げられた巨大な鏡で構成された、無限回廊。自分たちの姿が四方八方にどこまでも映り込み、一歩足を踏み出すだけで方向感覚も距離感も狂わされる、幻惑的な空間だ。
「うわっ……!なんだ、この部屋は……目がチカチカする……」
フィリアが、自分の姿が無限に映る光景に目を回している。
「気をつけろ。キュルリンのことだ、ただの飾りであるはずがない。おそらく、心理的な罠も兼ねているぞ」
デュラスは、杖を構え、冷静に周囲の魔力の流れを探る。エルミナも、聖なる盾を前面に構え、警戒を怠らない。
真守は、仲間たちに声をかけた。
「全員、背中合わせで円陣を組め!どこから何が来ても対応できるようにするぞ!」
その指示に従い、四人が中央で円陣を組んだ、まさにその瞬間だった。
ガシャン!という甲高い音と共に、周囲の鏡の中から、獣のような鋭い爪が、幻影のように突き出してきた!
「――っ!上か!」
「右からもですわ!」
「後ろだ!」
四方八方から、時間差で繰り出される無数の斬撃。それは、鏡の中に潜む何か――「鏡獣グロッタ」の分身たちによる、完璧な飽和攻撃だった。
「くそっ、キリがない!」
真守は「王帝」を巧みに操り、迫りくる爪を弾き、いなすが、攻撃はすぐに別の鏡から繰り出される。エルミナの聖盾も、無数の攻撃を完全に防ぎきることはできず、鎧に浅い傷が刻まれ始めた。
「我が炎よ、幻影ごと焼き尽くせ!」
デュラスが広範囲の火炎魔法を放つが、炎は鏡に反射して威力が減衰し、倒しても倒しても、すぐに新たな鏡獣が別の鏡から姿を現す。
「どうすれば……!このままではジリ貧ですわ!」
エルミナの悲痛な声が響く。
その時、後方で弓を構え、じっと戦況を見つめていたフィリアの瞳が、カッと見開かれた。
スキル「鷹の目」が、常人には見えない真実を捉えていたのだ。
無数の鏡が攻撃を仕掛けてくる中で、たった一枚だけ、何の動きも見せない、静かな鏡がある。他の鏡に映る鏡獣たちが微かに魔力の残滓を放っているのに対し、その鏡だけが、何の反応も示していない。不自然なまでに、静かすぎる。
(あの鏡……そこからだけ、魔物が出てこない……。もしかして、あれが全ての幻影を映し出している本体……!?)
フィリアは、自らの直感と「鷹の目」が導き出した答えに賭けた。
「マモル、エルミナさん、デュラスさん!一分だけ、時間を稼いで!私がこいつを終わらせる!」
フィリアの力強い声に、仲間たちが応える。
彼女は深く息を吸い、愛用の弓に矢を番えた。そして、その矢に自身の闘気を、これ以上ないほどに凝縮させていく。矢の先端が、眩いほどの闘気のオーラで輝き始めた。
「――行くわよ!」
真守たちが作り出した、ほんの一瞬の隙。フィリアはその好機を逃さない。
「一点集中! チャージ・アローッ!!」
放たれた矢は、闘気の塊そのものとなって一直線に飛翔し、フィリアが見定めた「静かな鏡」へと吸い込まれていった。
パリンッ!という軽い音ではない。
ゴォォォォンッ!!という、空間そのものが砕けるような、凄まじい轟音と共に、その鏡が粉々に砕け散った!
そして、本体である鏡が破壊された瞬間、あれほど執拗に襲いかかってきていた無数の鏡獣グロッタが、甲高い悲鳴を上げながら、ガラスの破片のようにキラキラと光りながら消滅していった。
後に残されたのは、静寂と、割れた鏡の破片だけだった。
「……やったか!」真守が、息を切らしながら言った。
「すごいよフィリア!よくあの鏡が本体だって見つけたね!」
「フィリアさんの慧眼(けいがん)のおかげですわ!あのままでは、本当に危なかったです……」
エルミナも、安堵の表情でフィリアの肩を叩く。
「ふん、力押しだけでは通用しないという、良い教訓になったな。見事だ、フィリア。お前のその『目』は、我々のパーティにとって何よりの宝だ」
デュラスからの、滅多に聞けない素直な称賛の言葉に、フィリアは少し照れくさそうに、しかし誇らしげに微笑んだ。
「えへへ、みんなのおかげだよ!」
仲間たちの賞賛を受け、フィリアの心には、パーティの一員として確かな自信が芽生えていた。
キュルリンの創り出した幻惑の回廊は、フィリアという弓使いの真価を、仲間たちに改めて示すための、最高の舞台となったのだった。
そして、砕け散った鏡の破片が集まり始め、次の部屋への新たな道を形作り始めていることに、彼らはまだ気づいていなかった。
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