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EP 57
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出汁の香る朝、トイレの新聞、そしてギルドへの道
激戦を終えた翌朝。加藤真守の「マイホーム」のキッチンには、懐かしい日本の朝の香りが満ちていた。昆布と鰹節から丁寧に取られた、一番出汁の豊かな香りだ。
「よし、いい匂いだ」
真守は、昨日から水に浸しておいた昆布と、今しがた加えた鰹節が織りなす黄金色の出汁に、満足げに頷いた。
「フィリア、今日の朝食は純和風でいくぞ。俺は味噌汁と卵焼き担当だ」
「はーい!じゃあ私は、昨日獲れたばかりの浜アジを焼くのと、いつもの薬膳サラダの準備をするね!」
フィリアは、すっかり手慣れた様子でキッチンに立ち、七輪(これもいつの間にかマイホームの常備品だ)に炭を熾し始めた。香ばしい魚の焼ける匂いが、出汁の香りと混じり合う。
「味噌汁の具材は、豆腐にネギ、それにワカメだな。シンプルが一番だ」
真守が豆腐を手のひらの上で小気味よく切っていると、二階からエルミナが少し眠そうな顔で降りてきた。そして、家の静けさに首を傾げた。
「あら……?デュラス様はまだ起きていらっしゃらないのですか?」
「ああ、デュラスなら、さっきからトイレに籠りっきりだぞ」
真守の言葉に、エルミナは何かを察したように、ぷくっと頬を膨らませた。そして、トイレのドアに向かって、少し大きな声で呼びかけた。
「もう、お父さ~ん!新聞をトイレで読むのは、お行儀が悪いのでやめてください~」
その声に、トイレの中から、くぐもった不機嫌そうな声が返ってくる。
「……誰が、お父さんだ。それに、私は時間を無駄にはできん。情報収集も、魔術師の重要な務めの一つだ」
(段々と、言うことまで爺臭くなってきたな、デュラスも……)
真守は、クールな魔族の貴公子がすっかり「日本の頑固オヤジ」化していることに、内心で笑いをこらえた。
やがて、全員が食卓につくと、そこには完璧な日本の朝食が並んでいた。炊き立てのご飯、湯気の立つ具沢山の味噌汁、こんがりと焼かれたアジの開き、フィリア特製の薬膳サラダ、そして真守の作ったふわふわの出汁巻き卵。
「「「「いただきます」」」」
四人の声が、心地よくリビングに響く。
「ん~、美味しい~!やっぱりマモルの作るお出汁は最高だね!心がほっとするよ」
「はい!この『みそしる』というスープ、とても滋味深いですわ…。身体の隅々まで、温かな力が満ちていくようです」
フィリアとエルミナは、幸せそうに味噌汁をすする。
デュラスも、先程までの不機嫌はどこへやら、黙々と、しかし明らかに満足げな表情で食事を進めている。「ふん、合理的でバランスの取れた食事だ。悪くない」などと言いながら、ちゃっかりご飯と味噌汁のおかわりをしていた。
食事が一段落した頃、真守が切り出した。
「さて、今日はどうするんだ?」
その問いに、デュラスが新聞から顔を上げた。新聞の一面には「アルニア村の新星パーティ、S級ダンジョン第二階層の主も撃破か!?」という、少し気が早い見出しが踊っている。
「まずは冒険者ギルドへ行き、依頼達成の報告をするのが筋だろうな。正式な功績として記録を残し、報酬を受け取り、そして次の階層に関する情報を集める。我々の地位を確固たるものにするためにも、ギルドとの連携は密にしておくべきだ」
その冷静で的確な提案に、誰も異論はなかった。
こうして、心温まる朝食を終えた一行は、次なる冒険へと向かう準備を始める。
真守は「王帝」を、フィリアは弓を、エルミナは聖なる力を、そしてデュラスは魔導書と……トイレに置き忘れた新聞を。
家族のようになった仲間たちは、それぞれの武器と、そして揺るぎない絆を胸に、今日もまた、アルカシア大陸の常識を覆すための、大きな一歩を踏み出すのだった。
激戦を終えた翌朝。加藤真守の「マイホーム」のキッチンには、懐かしい日本の朝の香りが満ちていた。昆布と鰹節から丁寧に取られた、一番出汁の豊かな香りだ。
「よし、いい匂いだ」
真守は、昨日から水に浸しておいた昆布と、今しがた加えた鰹節が織りなす黄金色の出汁に、満足げに頷いた。
「フィリア、今日の朝食は純和風でいくぞ。俺は味噌汁と卵焼き担当だ」
「はーい!じゃあ私は、昨日獲れたばかりの浜アジを焼くのと、いつもの薬膳サラダの準備をするね!」
フィリアは、すっかり手慣れた様子でキッチンに立ち、七輪(これもいつの間にかマイホームの常備品だ)に炭を熾し始めた。香ばしい魚の焼ける匂いが、出汁の香りと混じり合う。
「味噌汁の具材は、豆腐にネギ、それにワカメだな。シンプルが一番だ」
真守が豆腐を手のひらの上で小気味よく切っていると、二階からエルミナが少し眠そうな顔で降りてきた。そして、家の静けさに首を傾げた。
「あら……?デュラス様はまだ起きていらっしゃらないのですか?」
「ああ、デュラスなら、さっきからトイレに籠りっきりだぞ」
真守の言葉に、エルミナは何かを察したように、ぷくっと頬を膨らませた。そして、トイレのドアに向かって、少し大きな声で呼びかけた。
「もう、お父さ~ん!新聞をトイレで読むのは、お行儀が悪いのでやめてください~」
その声に、トイレの中から、くぐもった不機嫌そうな声が返ってくる。
「……誰が、お父さんだ。それに、私は時間を無駄にはできん。情報収集も、魔術師の重要な務めの一つだ」
(段々と、言うことまで爺臭くなってきたな、デュラスも……)
真守は、クールな魔族の貴公子がすっかり「日本の頑固オヤジ」化していることに、内心で笑いをこらえた。
やがて、全員が食卓につくと、そこには完璧な日本の朝食が並んでいた。炊き立てのご飯、湯気の立つ具沢山の味噌汁、こんがりと焼かれたアジの開き、フィリア特製の薬膳サラダ、そして真守の作ったふわふわの出汁巻き卵。
「「「「いただきます」」」」
四人の声が、心地よくリビングに響く。
「ん~、美味しい~!やっぱりマモルの作るお出汁は最高だね!心がほっとするよ」
「はい!この『みそしる』というスープ、とても滋味深いですわ…。身体の隅々まで、温かな力が満ちていくようです」
フィリアとエルミナは、幸せそうに味噌汁をすする。
デュラスも、先程までの不機嫌はどこへやら、黙々と、しかし明らかに満足げな表情で食事を進めている。「ふん、合理的でバランスの取れた食事だ。悪くない」などと言いながら、ちゃっかりご飯と味噌汁のおかわりをしていた。
食事が一段落した頃、真守が切り出した。
「さて、今日はどうするんだ?」
その問いに、デュラスが新聞から顔を上げた。新聞の一面には「アルニア村の新星パーティ、S級ダンジョン第二階層の主も撃破か!?」という、少し気が早い見出しが踊っている。
「まずは冒険者ギルドへ行き、依頼達成の報告をするのが筋だろうな。正式な功績として記録を残し、報酬を受け取り、そして次の階層に関する情報を集める。我々の地位を確固たるものにするためにも、ギルドとの連携は密にしておくべきだ」
その冷静で的確な提案に、誰も異論はなかった。
こうして、心温まる朝食を終えた一行は、次なる冒険へと向かう準備を始める。
真守は「王帝」を、フィリアは弓を、エルミナは聖なる力を、そしてデュラスは魔導書と……トイレに置き忘れた新聞を。
家族のようになった仲間たちは、それぞれの武器と、そして揺るぎない絆を胸に、今日もまた、アルカシア大陸の常識を覆すための、大きな一歩を踏み出すのだった。
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