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第二章 神竜の守護者
EP 8
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美と秩序の設計者、そして鉄壁の防衛論
アルニア公爵領の政務室(マイホームの書斎を一時的に改装したものだ)では、真守、エドガー、デュラス、そしてラミアスとガンツ親方を交えた、第一回の領地開発会議が開かれていた。
エドガーが広げた巨大な地図の上で、ガンツ親方が「まずはこの街道を整備し、商業区画と工房区画を分けるんじゃ!」と熱弁を振るっている。
その議論が一段落したのを見計らい、エドガーは咳払いを一つして、真守に向き直った。
「マモル公爵閣下。街の発展計画も重要ですが、それと同時に、いや、それ以上に急がねばならぬ議題がございます。領地の『防衛』についてです」
エドガーの厳しい声に、場の空気が引き締まる。
「現在のアルニア村の防衛は、自警団と王国騎士団による物理的な防御が主体。しかし、グルシア帝国や魔族が本気で攻めてきた場合、強力な攻撃魔法や、飛竜といった空中からの襲撃に対しては、あまりにも無力です。早急に、魔法的な防御機構を備えた『魔法城壁』の建設と、対空迎撃システムの構築が必須かと存じます」
その的確な分析に、誰もが頷くしかなかった。
「そこで」エドガーは、満足げに続けた。「その分野における、大陸屈指の専門家を王都よりお呼びいたしました。――ルーヴェン、こちらへ!」
エドガーの声に応じ、控えていた隣室から、一人の男が優雅な足取りで姿を現した。
月光を編み込んだような長い銀髪、森の湖面を思わせる深い翠色の瞳。人間離れしたその美貌は、彼がただのエルフではない、上位種であるハイエルフであることを示していた。
「わぁ……綺麗な人……」フィリアが、思わず声を漏らす。
「エルフの方……いえ、それ以上の、とても高貴で清浄な気配を感じますわ」エルミナも、その神々しささえ感じさせる佇まいに目を奪われている。
デュラスだけが、冷静にその実力を見抜いていた。(ハイエルフの魔術技工士か。エドガーめ、王都からこれほどの重要人物を引っ張ってくるとは、なかなかの手腕だ)
「マモル公爵閣下か。ハイエルフのルーヴェンだ。以後、よろしく頼む」
ルーヴェンは、丁寧だがどこか対等な、あるいは少し見下したような口調で挨拶をした。そして、マイホームの室内を一瞥する。
「ふむ。確かに、エドガー殿の報告書にあった通り、大した家だ。個人の住居としては、これ以上ないほどの快適さと、ある種の要塞機能も備えている。この異質な技術、魔術技工士として実に興味深い」
彼は、専門家として家の価値は素直に認めた。しかし、すぐに挑戦的な笑みを浮かべて続ける。
「――だが、マモル公爵。個人の家を守ることと、数千の民が住まう『領地』全体を守ることは、全く次元が異なる。この家がどれほど頑丈でも、領民が暮らす街が焼かれてしまっては、領主としての面目は丸潰れだろう?」
その言葉は、誰もが分かっていながら口に出せなかった、痛いところを突いていた。
「私が、このアルニア公爵領に相応しい、美しく、そして鉄壁の防衛計画を立ててやる」
ルーヴェンは、自信に満ちた声で宣言した。
「物理的な城壁は、そこにいるドワーフ(ガンツ)にでも積ませておけばいい。私は、その壁に魔力循環システムを組み込み、恒久的な魔法障壁を展開させる。さらに、侵入者を自動で感知し、迎撃する魔法砲台を各所に設置する。空からの侵入者には、広域対空結界と、魔力追尾型の『光の矢』で、手厚く『歓迎』してやろうではないか」
その壮大で、しかし緻密な防衛計画に、ラミアスは息を呑み、エドガーは満足げに頷いた。
ガンツ親方は「なんだと、このスカしたエルフめ!」と顔をしかめたが、その計画の有効性は認めざるを得ず、悔しそうに唸っている。
真守は、また一人、とんでもなく有能で、そして個性の強い仲間(?)が加わったことを悟った。
(……なんだか、すごいことになってきたな……)
彼のスローライフの夢は、もはや完全に過去の遺物となりつつあった。
その代わり、彼の目の前には、「大陸一安全で、快適で、美しい国を創る」という、壮大で、そして何よりも心躍る未来が、少しずつ形を見せ始めていた。
「よろしくお願いします、ルーヴェンさん」
真守は、新たな仲間に、力強く手を差し出した。
国作りの歯車が、また一つ、大きく噛み合い、回り始めた瞬間だった。
アルニア公爵領の政務室(マイホームの書斎を一時的に改装したものだ)では、真守、エドガー、デュラス、そしてラミアスとガンツ親方を交えた、第一回の領地開発会議が開かれていた。
エドガーが広げた巨大な地図の上で、ガンツ親方が「まずはこの街道を整備し、商業区画と工房区画を分けるんじゃ!」と熱弁を振るっている。
その議論が一段落したのを見計らい、エドガーは咳払いを一つして、真守に向き直った。
「マモル公爵閣下。街の発展計画も重要ですが、それと同時に、いや、それ以上に急がねばならぬ議題がございます。領地の『防衛』についてです」
エドガーの厳しい声に、場の空気が引き締まる。
「現在のアルニア村の防衛は、自警団と王国騎士団による物理的な防御が主体。しかし、グルシア帝国や魔族が本気で攻めてきた場合、強力な攻撃魔法や、飛竜といった空中からの襲撃に対しては、あまりにも無力です。早急に、魔法的な防御機構を備えた『魔法城壁』の建設と、対空迎撃システムの構築が必須かと存じます」
その的確な分析に、誰もが頷くしかなかった。
「そこで」エドガーは、満足げに続けた。「その分野における、大陸屈指の専門家を王都よりお呼びいたしました。――ルーヴェン、こちらへ!」
エドガーの声に応じ、控えていた隣室から、一人の男が優雅な足取りで姿を現した。
月光を編み込んだような長い銀髪、森の湖面を思わせる深い翠色の瞳。人間離れしたその美貌は、彼がただのエルフではない、上位種であるハイエルフであることを示していた。
「わぁ……綺麗な人……」フィリアが、思わず声を漏らす。
「エルフの方……いえ、それ以上の、とても高貴で清浄な気配を感じますわ」エルミナも、その神々しささえ感じさせる佇まいに目を奪われている。
デュラスだけが、冷静にその実力を見抜いていた。(ハイエルフの魔術技工士か。エドガーめ、王都からこれほどの重要人物を引っ張ってくるとは、なかなかの手腕だ)
「マモル公爵閣下か。ハイエルフのルーヴェンだ。以後、よろしく頼む」
ルーヴェンは、丁寧だがどこか対等な、あるいは少し見下したような口調で挨拶をした。そして、マイホームの室内を一瞥する。
「ふむ。確かに、エドガー殿の報告書にあった通り、大した家だ。個人の住居としては、これ以上ないほどの快適さと、ある種の要塞機能も備えている。この異質な技術、魔術技工士として実に興味深い」
彼は、専門家として家の価値は素直に認めた。しかし、すぐに挑戦的な笑みを浮かべて続ける。
「――だが、マモル公爵。個人の家を守ることと、数千の民が住まう『領地』全体を守ることは、全く次元が異なる。この家がどれほど頑丈でも、領民が暮らす街が焼かれてしまっては、領主としての面目は丸潰れだろう?」
その言葉は、誰もが分かっていながら口に出せなかった、痛いところを突いていた。
「私が、このアルニア公爵領に相応しい、美しく、そして鉄壁の防衛計画を立ててやる」
ルーヴェンは、自信に満ちた声で宣言した。
「物理的な城壁は、そこにいるドワーフ(ガンツ)にでも積ませておけばいい。私は、その壁に魔力循環システムを組み込み、恒久的な魔法障壁を展開させる。さらに、侵入者を自動で感知し、迎撃する魔法砲台を各所に設置する。空からの侵入者には、広域対空結界と、魔力追尾型の『光の矢』で、手厚く『歓迎』してやろうではないか」
その壮大で、しかし緻密な防衛計画に、ラミアスは息を呑み、エドガーは満足げに頷いた。
ガンツ親方は「なんだと、このスカしたエルフめ!」と顔をしかめたが、その計画の有効性は認めざるを得ず、悔しそうに唸っている。
真守は、また一人、とんでもなく有能で、そして個性の強い仲間(?)が加わったことを悟った。
(……なんだか、すごいことになってきたな……)
彼のスローライフの夢は、もはや完全に過去の遺物となりつつあった。
その代わり、彼の目の前には、「大陸一安全で、快適で、美しい国を創る」という、壮大で、そして何よりも心躍る未来が、少しずつ形を見せ始めていた。
「よろしくお願いします、ルーヴェンさん」
真守は、新たな仲間に、力強く手を差し出した。
国作りの歯車が、また一つ、大きく噛み合い、回り始めた瞬間だった。
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