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第二章 神竜の守護者
EP 9
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公爵閣下のひらめき、サウナと温泉と理想郷
アルニア公爵領の未来を占う、城塞と街の建設計画会議。ガンツ親方とルーヴェンの間で「この城壁の角度は美しくない!」「見た目だけの壁に何の意味があるか!」といった、いつもの喧々囂々の議論が繰り広げられていた。
そんな中、真守はふと、窓の外で汗を流しながら働くドワーフの弟子たちや、訓練に励む騎士団員たちを眺め、ぽつりと呟いた。
「……あれ? そういえば、今の俺たちの技術力があれば、『サウナ』って作れるんじゃないか?」
「さうな?」
一番に反応したのは、隣で設計図を睨んでいたデュラスだった。「それは、何かの防衛兵器の名前か?」
「いや、違う違う。最高のリフレッシュ施設だよ」
真守はそう言うと、書斎のパソコンを操作し、壁に新たな画像を投影した。そこには、木の香りがしてきそうなフィンランド式のサウナ小屋、湯気が立ち上る広々とした日本のスーパー銭湯、そして古代ローマの荘厳な公衆浴場(テルマエ)の様子が映し出される。
「密閉した小屋を、熱した石や蒸気で温めて、思いっきり汗をかくんだ。そのあと、キンキンに冷えた水風呂に入って、外の風に当たって休憩する。これを繰り返すと、身体の芯から疲れが取れて、めちゃくちゃ気持ちいいんだよ」
「ほう……」デュラスの深紅の瞳に、強い興味の光が宿った。「極端な高温と低温の刺激を身体に与える『冷温交互浴』か。血行を促進し、魔力循環の回復にも絶大な効果があるやもしれん。実に興味深い健康法だ」
「というわけで、エドガーさん」真守は、会議の進行役をしていた堅物執事に、にこやかに振り返った。「これも、領地開発計画の一環として作ってくれないかな?」
「は、はぁ……」エドガーは、突拍子もない提案に一瞬言葉を失ったが、すぐに執政官としての思考を巡らせた。「な、なるほど……大規模な『温泉施設』ですな。確かに、領民の福利厚生と衛生環境の改善に繋がり、さらには新たな観光資源ともなり得ましょう。……検討の価値は、ありますな」
彼の頭の中では、既に入場料や維持費、採算ラインの計算が始まっていた。
その話を聞いていたガンツ親方が、ガハハと豪快に笑った。
「おう、面白いじゃねぇか!熱い小屋に、冷たい水風呂だと!?ドワーフの根性試しにピッタリじゃわい!任せとけ、マモル!最高の『炉(ストーブ)』と『水風呂(カメ)』をワシが作ってやる!」
そして、彼は当然のように、部屋の隅で腕を組んでいたルーヴェンを顎でしゃくった。
「おい、ルーヴェン!手伝え!」
「……誰に向かって指図している、この穴ぐらドワーフが」
ルーヴェンは、美しい眉をひそめて反論する。
「だが、まあいいだろう。どうせお前が作るのは、ただの無骨な蒸し風呂だ。私が、癒やしの効果があるアロマの香る蒸気や、魔力で制御された最適な温度・湿度を設計し、芸術の域まで高めてやる」
二人は、またしても設計図を巡って「熱源は地熱利用が効率的じゃ!」「いや、火の精霊を封じた魔石の方が安定した熱を供給できる!」と、新たな議論の火蓋を切って落とした。
その様子を、会議の隅でお茶を飲んでいたフィリアとエルミナが、楽しそうに眺めていた。
「まあ、楽しみが増えましたわね、フィリアさん」
「うん、温泉、温泉!みんなで入れる大きなお風呂なんでしょ?私が育てた薬草を入れたら、もっと気持ちよくなれそうだね!」
公爵の気まぐれな一言から始まった、異世界初の「サウナ建設計画」。
それは、防衛や統治といった固い話ばかりではなく、人々の生活を直接豊かにし、笑顔にするという、真守が目指す「理想郷」の本質を象徴するような、温かいプロジェクトの始まりだった。
そして、この「アルニアの湯(仮称)」が、後に大陸中から癒やしを求める人々が訪れる一大名所となり、莫大な利益と情報を領地にもたらすことになるのを、この時の彼らはまだ知らない。
ただ、目の前の新しい「お楽しみ」に、誰もが心を躍らせているだけだった。
アルニア公爵領の未来を占う、城塞と街の建設計画会議。ガンツ親方とルーヴェンの間で「この城壁の角度は美しくない!」「見た目だけの壁に何の意味があるか!」といった、いつもの喧々囂々の議論が繰り広げられていた。
そんな中、真守はふと、窓の外で汗を流しながら働くドワーフの弟子たちや、訓練に励む騎士団員たちを眺め、ぽつりと呟いた。
「……あれ? そういえば、今の俺たちの技術力があれば、『サウナ』って作れるんじゃないか?」
「さうな?」
一番に反応したのは、隣で設計図を睨んでいたデュラスだった。「それは、何かの防衛兵器の名前か?」
「いや、違う違う。最高のリフレッシュ施設だよ」
真守はそう言うと、書斎のパソコンを操作し、壁に新たな画像を投影した。そこには、木の香りがしてきそうなフィンランド式のサウナ小屋、湯気が立ち上る広々とした日本のスーパー銭湯、そして古代ローマの荘厳な公衆浴場(テルマエ)の様子が映し出される。
「密閉した小屋を、熱した石や蒸気で温めて、思いっきり汗をかくんだ。そのあと、キンキンに冷えた水風呂に入って、外の風に当たって休憩する。これを繰り返すと、身体の芯から疲れが取れて、めちゃくちゃ気持ちいいんだよ」
「ほう……」デュラスの深紅の瞳に、強い興味の光が宿った。「極端な高温と低温の刺激を身体に与える『冷温交互浴』か。血行を促進し、魔力循環の回復にも絶大な効果があるやもしれん。実に興味深い健康法だ」
「というわけで、エドガーさん」真守は、会議の進行役をしていた堅物執事に、にこやかに振り返った。「これも、領地開発計画の一環として作ってくれないかな?」
「は、はぁ……」エドガーは、突拍子もない提案に一瞬言葉を失ったが、すぐに執政官としての思考を巡らせた。「な、なるほど……大規模な『温泉施設』ですな。確かに、領民の福利厚生と衛生環境の改善に繋がり、さらには新たな観光資源ともなり得ましょう。……検討の価値は、ありますな」
彼の頭の中では、既に入場料や維持費、採算ラインの計算が始まっていた。
その話を聞いていたガンツ親方が、ガハハと豪快に笑った。
「おう、面白いじゃねぇか!熱い小屋に、冷たい水風呂だと!?ドワーフの根性試しにピッタリじゃわい!任せとけ、マモル!最高の『炉(ストーブ)』と『水風呂(カメ)』をワシが作ってやる!」
そして、彼は当然のように、部屋の隅で腕を組んでいたルーヴェンを顎でしゃくった。
「おい、ルーヴェン!手伝え!」
「……誰に向かって指図している、この穴ぐらドワーフが」
ルーヴェンは、美しい眉をひそめて反論する。
「だが、まあいいだろう。どうせお前が作るのは、ただの無骨な蒸し風呂だ。私が、癒やしの効果があるアロマの香る蒸気や、魔力で制御された最適な温度・湿度を設計し、芸術の域まで高めてやる」
二人は、またしても設計図を巡って「熱源は地熱利用が効率的じゃ!」「いや、火の精霊を封じた魔石の方が安定した熱を供給できる!」と、新たな議論の火蓋を切って落とした。
その様子を、会議の隅でお茶を飲んでいたフィリアとエルミナが、楽しそうに眺めていた。
「まあ、楽しみが増えましたわね、フィリアさん」
「うん、温泉、温泉!みんなで入れる大きなお風呂なんでしょ?私が育てた薬草を入れたら、もっと気持ちよくなれそうだね!」
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それは、防衛や統治といった固い話ばかりではなく、人々の生活を直接豊かにし、笑顔にするという、真守が目指す「理想郷」の本質を象徴するような、温かいプロジェクトの始まりだった。
そして、この「アルニアの湯(仮称)」が、後に大陸中から癒やしを求める人々が訪れる一大名所となり、莫大な利益と情報を領地にもたらすことになるのを、この時の彼らはまだ知らない。
ただ、目の前の新しい「お楽しみ」に、誰もが心を躍らせているだけだった。
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