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第二章 神竜の守護者
EP 22
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三つの玉座、三つの号令
【魔王城 - 深淵の間】
神界での茶会から帰還した魔王サルバロスは、黒曜石でできた巨大な玉座に深く腰掛け、満足げに口の端を吊り上げた。その前に、漆黒の鎧を纏った、魔族軍最強と謳われる将軍イガロスが跪いている。
「――全軍に準備を命じよ」
サルバロスの、静かだが威厳に満ちた声が、広大な玉座の間に響き渡った。
「我が精鋭、魔竜兵団!そして、一騎当千の鬼人兵団もだ!」
その言葉に、イガロスは驚き、そして歓喜に顔を上げた。
「ぜ、全軍、ですと!?おお、我が君!ついに、ついに本腰を入れられますか!長きにわたる屈辱の時を経て、今こそ忌々しい天使族を、この世から亡き者にするための……!」
「――違う」
サルバロスは、イカロスの勘違いを、あっさりと、そして楽しそうに否定した。
「アルニアという、面白い場所へ、景気づけの『遠足』に行くのだ」
「は……?あるにあ、ですか?確か、デュラス様が滞在されているという、辺境の……」
イガロスの困惑を、サルバロスの冷徹な一言が遮る。
「――復唱しろ、イガロス」
「ハッ!」イガロスは、弾かれたように背筋を伸ばし、主君の真意を悟った。娯楽であれ、何であれ、王の命令は絶対だ。
「全軍に通達!我が魔王軍は、総力を以て、アルニア公爵領へ向かう!目的は、ド派手な『遠足』である、と!」
その奇妙な号令は、魔王城に、混乱と、そして未知の冒険への奇妙な興奮をもたらした。
【竜王城 - 龍の寝床】
竜王ドラグニールの元へ、腹心の将軍ドランゴが、息を切らして駆け込んできた。その顔には、怒りと、そして計画通り事が運んだことへの、歪んだ喜びが浮かんでいる。
「ドラグニール様!お聞きください!アルニアにて、我が兵団が、人間どもの卑劣な罠にかかり、亡き者にされました!これは、我ら竜の民に対する明確な挑戦です!」
ドランゴは、ドラグスから受けた虚偽の報告を、さらに誇張して王に伝える。
ドラグニールは、その報告を静かに聞き、そしてゆっくりと、しかし力強く立ち上がった。その瞳には、深い憂いと、そして新たな時代への確かな決意が宿っていた。
「……ドランゴよ。アルニアに向けて、飛龍騎士団、そして我が直属の竜騎士団を編成せよ」
「おおぉっ!ついに、ついに動かれますな、我が王よ!」
ドランゴは、王が遂に復権のために立ち上がったのだと確信し、歓喜に震えた。
「仰せのままに!ただちに、人間どもを根絶やしにするための準備を!」
ドランゴが勇んで部屋を飛び出していく。その背中を見送りながら、ドラグニールは静かに呟いた。
(フフフ……根絶やし、ではない。確かめに行くのだ。古の予言にある、新たな時代の担い手の器を。そして、我が始祖竜アルカ様の御心を……。時代が、大きく動き出すわい)
彼の真意を知る者は、まだ誰もいなかった。
【神殿 - 天空の聖域セレスティア】
神王セラフィナは、玉座に戻ると、ただ一言、静かに告げた。
「――ヴァルキュリア」
その呼びかけに応え、どこからともなく、純白の鎧に身を包んだ、凛々しい女性騎士が音もなく現れ、セラフィナの前に跪いた。天使族最強の戦士団を率いる、戦闘団長ヴァルキュリアだ。
「ハッ!ここに」
「軍を編成なさい。アルニアへ行きます」
セラフィナの言葉は、短く、そして絶対だった。
ヴァルキュリアは、驚きに顔を上げた。
「何ですと!?人間の地に、我ら本隊が……?何故です、セラフィナ様!かの地を、滅ぼすおつもりですか?」
天使族の本隊が動くということは、それすなわち、神罰の行使を意味する。
セラフィナは、冷たく、美しい瞳で、地上の世界を見下ろしながら言った。
「――それは、彼らの出方次第です」
その言葉が、肯定であるのか、否定であるのか。ヴァルキュリアには分からなかった。
ただ、自らの女王が、世界の「調和」を乱す者に対し、いかなる慈悲も与えるつもりがないことだけは、痛いほどに伝わってきた。
竜の復権、魔族の気まぐれ、そして天使の秩序。
三つの巨大な軍勢が、それぞれの思惑を胸に、アルニア公爵領という一点を目指して、今、動き出した。
その中心にいるマモルたちは、天上の神々の茶会よりも、ずっと身近な、「今夜の晩ごはん」の心配をしていることを、彼らはまだ知らない。
【魔王城 - 深淵の間】
神界での茶会から帰還した魔王サルバロスは、黒曜石でできた巨大な玉座に深く腰掛け、満足げに口の端を吊り上げた。その前に、漆黒の鎧を纏った、魔族軍最強と謳われる将軍イガロスが跪いている。
「――全軍に準備を命じよ」
サルバロスの、静かだが威厳に満ちた声が、広大な玉座の間に響き渡った。
「我が精鋭、魔竜兵団!そして、一騎当千の鬼人兵団もだ!」
その言葉に、イガロスは驚き、そして歓喜に顔を上げた。
「ぜ、全軍、ですと!?おお、我が君!ついに、ついに本腰を入れられますか!長きにわたる屈辱の時を経て、今こそ忌々しい天使族を、この世から亡き者にするための……!」
「――違う」
サルバロスは、イカロスの勘違いを、あっさりと、そして楽しそうに否定した。
「アルニアという、面白い場所へ、景気づけの『遠足』に行くのだ」
「は……?あるにあ、ですか?確か、デュラス様が滞在されているという、辺境の……」
イガロスの困惑を、サルバロスの冷徹な一言が遮る。
「――復唱しろ、イガロス」
「ハッ!」イガロスは、弾かれたように背筋を伸ばし、主君の真意を悟った。娯楽であれ、何であれ、王の命令は絶対だ。
「全軍に通達!我が魔王軍は、総力を以て、アルニア公爵領へ向かう!目的は、ド派手な『遠足』である、と!」
その奇妙な号令は、魔王城に、混乱と、そして未知の冒険への奇妙な興奮をもたらした。
【竜王城 - 龍の寝床】
竜王ドラグニールの元へ、腹心の将軍ドランゴが、息を切らして駆け込んできた。その顔には、怒りと、そして計画通り事が運んだことへの、歪んだ喜びが浮かんでいる。
「ドラグニール様!お聞きください!アルニアにて、我が兵団が、人間どもの卑劣な罠にかかり、亡き者にされました!これは、我ら竜の民に対する明確な挑戦です!」
ドランゴは、ドラグスから受けた虚偽の報告を、さらに誇張して王に伝える。
ドラグニールは、その報告を静かに聞き、そしてゆっくりと、しかし力強く立ち上がった。その瞳には、深い憂いと、そして新たな時代への確かな決意が宿っていた。
「……ドランゴよ。アルニアに向けて、飛龍騎士団、そして我が直属の竜騎士団を編成せよ」
「おおぉっ!ついに、ついに動かれますな、我が王よ!」
ドランゴは、王が遂に復権のために立ち上がったのだと確信し、歓喜に震えた。
「仰せのままに!ただちに、人間どもを根絶やしにするための準備を!」
ドランゴが勇んで部屋を飛び出していく。その背中を見送りながら、ドラグニールは静かに呟いた。
(フフフ……根絶やし、ではない。確かめに行くのだ。古の予言にある、新たな時代の担い手の器を。そして、我が始祖竜アルカ様の御心を……。時代が、大きく動き出すわい)
彼の真意を知る者は、まだ誰もいなかった。
【神殿 - 天空の聖域セレスティア】
神王セラフィナは、玉座に戻ると、ただ一言、静かに告げた。
「――ヴァルキュリア」
その呼びかけに応え、どこからともなく、純白の鎧に身を包んだ、凛々しい女性騎士が音もなく現れ、セラフィナの前に跪いた。天使族最強の戦士団を率いる、戦闘団長ヴァルキュリアだ。
「ハッ!ここに」
「軍を編成なさい。アルニアへ行きます」
セラフィナの言葉は、短く、そして絶対だった。
ヴァルキュリアは、驚きに顔を上げた。
「何ですと!?人間の地に、我ら本隊が……?何故です、セラフィナ様!かの地を、滅ぼすおつもりですか?」
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セラフィナは、冷たく、美しい瞳で、地上の世界を見下ろしながら言った。
「――それは、彼らの出方次第です」
その言葉が、肯定であるのか、否定であるのか。ヴァルキュリアには分からなかった。
ただ、自らの女王が、世界の「調和」を乱す者に対し、いかなる慈悲も与えるつもりがないことだけは、痛いほどに伝わってきた。
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三つの巨大な軍勢が、それぞれの思惑を胸に、アルニア公爵領という一点を目指して、今、動き出した。
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