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第二章 神竜の守護者
EP 45
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公爵閣下と消えた島、そして執事の気絶
一夜にして、その身も力も、そして厄介さも成長を遂げた神竜アルカ。
その翌朝、マモルは、公爵としての務めを果たすため、アルニア城の執務室へと向かっていた。しかし、その足取りはいつもより少しだけ重い。なぜなら、彼の右腕には、成長したアルカが、これ以上ないというほどぴったりと、そして楽しそうに組み付いて離れないからだ。
「マモル、お城、ひろい。あるかと、おにごっこしよ?」
「はいはい、後でな。今は仕事中なんだから、少しだけ静かにしててくれよ」
そんな微笑ましい(?)やり取りをしながら執務室の扉を開けると、そこには、既に山のような書類と格闘していた筆頭執事エドガーの姿があった。
「おはようございます、マモル公爵閣下。本日のご予定は……」
エドガーは、いつものように完璧な挨拶をしたが、すぐにマモルの腕に絡みつく、見慣れない美少女の存在に気づき、その言葉が止まった。
「……マ、マモル様?そ、そちらの、麗しい娘様は、一体どちらの……?」
エドガーの目が、最大限の警戒と不審を浮かべて、少女に向けられる。
「ああ、エドガーか。おはよう。こいつはアルカだ。見ての通り、大きくなったんだ」
「…………はい?」
大きくなった?どういうことだ?昨日まで、アルカ様は確かに、可愛らしい幼竜のお姿だったはずだが。この美しい少女が?大きく?
エドガーの脳内は、疑問符で埋め尽くされた。しかし、彼の有能な執事としての本能が、それよりも遥かに優先順位の高い、緊急案件を思い出させた。
「お、大きく……?い、いえ、それよりも閣下!一大事でございます!昨夜、遥か南方に位置していたはずの『ドルノ島』が、地図上から完全に『消失』したとの報告が、先程、王国監視塔から入りました!原因は一切不明!これは、何かの天変地異か、あるいは帝国の新型兵器か……!」
エドガーが、顔面蒼白で早口に報告する。
その言葉に、マモルの腕に抱きついていたアルカが、ぴょこっと顔を上げた。そして、少しバツが悪そうに、しかし悪びれる様子もなく、にこりと微笑んだ。
「――あ、それ、私がやったの~!ごめんね、エドガー?」
「………………」
エドガーの時間が、止まった。
彼の震える視線が、アルカとマモルを行き来する。
「……わ、私が……やった、とは……ど、どういう……意味で、ございましょうか、アルカ様……?」
「んーとね」アルカは、首をこてんと傾げた。「昨日、身体があつーくなって、力がドーンってなっちゃって。それでね……」
アルカは、言葉で説明するよりも、見せた方が早いと思ったらしい。
彼女は、執務室の大きな窓の外――広大なアクアマリン湾の、遥か水平線に向かって、可愛らしく口をすぼめた。
「――こうやって」
「ぴゅっ」という、気の抜けたような音と共に、彼女の唇から、一本の細い、しかし純白の光線が放たれた。
光線は、音もなく海面に着弾する。
一瞬の静寂。
そして、次の瞬間。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!
遥か彼方の水平線が、太陽がもう一つ生まれたかのように白く輝き、巨大な爆炎ときのこ雲、そして天を突くほどの水柱が、アルニア城からでもはっきりと見えた。
数秒後、ゴゴゴゴゴ……という地響きが、城全体を揺るがした。
エドガーは、その光景を、口を半開きにしたまま、ただ、呆然と見ていた。
島一つを、いとも容易く消し飛ばす力。その一端を、今、目の当たりにしてしまったのだ。
彼の、長年の文官生活で培われた常識も、現実認識も、全てが、あの可愛らしい「ぴゅっ」という音と共に、完全に蒸発した。
「………………あ」
短い声を最後に、エドガーは白目を剥くと、糸が切れた人形のように、その場に静かに崩れ落ちた。
「……という事なんだ、エドガー。色々大変だと思うけど、王都への報告とか、地図の修正とか、後処理、頼むな」
マ無言ルは、気絶した忠実な執事に、優しく声をかける。
その腕の中では、アルカが「あれ?えどがー、ねちゃったの?」と、不思議そうに首を傾げていた。
アルニア公爵領の、今日もまた、平和で、そして胃の痛い一日が始まろうとしていた。
一夜にして、その身も力も、そして厄介さも成長を遂げた神竜アルカ。
その翌朝、マモルは、公爵としての務めを果たすため、アルニア城の執務室へと向かっていた。しかし、その足取りはいつもより少しだけ重い。なぜなら、彼の右腕には、成長したアルカが、これ以上ないというほどぴったりと、そして楽しそうに組み付いて離れないからだ。
「マモル、お城、ひろい。あるかと、おにごっこしよ?」
「はいはい、後でな。今は仕事中なんだから、少しだけ静かにしててくれよ」
そんな微笑ましい(?)やり取りをしながら執務室の扉を開けると、そこには、既に山のような書類と格闘していた筆頭執事エドガーの姿があった。
「おはようございます、マモル公爵閣下。本日のご予定は……」
エドガーは、いつものように完璧な挨拶をしたが、すぐにマモルの腕に絡みつく、見慣れない美少女の存在に気づき、その言葉が止まった。
「……マ、マモル様?そ、そちらの、麗しい娘様は、一体どちらの……?」
エドガーの目が、最大限の警戒と不審を浮かべて、少女に向けられる。
「ああ、エドガーか。おはよう。こいつはアルカだ。見ての通り、大きくなったんだ」
「…………はい?」
大きくなった?どういうことだ?昨日まで、アルカ様は確かに、可愛らしい幼竜のお姿だったはずだが。この美しい少女が?大きく?
エドガーの脳内は、疑問符で埋め尽くされた。しかし、彼の有能な執事としての本能が、それよりも遥かに優先順位の高い、緊急案件を思い出させた。
「お、大きく……?い、いえ、それよりも閣下!一大事でございます!昨夜、遥か南方に位置していたはずの『ドルノ島』が、地図上から完全に『消失』したとの報告が、先程、王国監視塔から入りました!原因は一切不明!これは、何かの天変地異か、あるいは帝国の新型兵器か……!」
エドガーが、顔面蒼白で早口に報告する。
その言葉に、マモルの腕に抱きついていたアルカが、ぴょこっと顔を上げた。そして、少しバツが悪そうに、しかし悪びれる様子もなく、にこりと微笑んだ。
「――あ、それ、私がやったの~!ごめんね、エドガー?」
「………………」
エドガーの時間が、止まった。
彼の震える視線が、アルカとマモルを行き来する。
「……わ、私が……やった、とは……ど、どういう……意味で、ございましょうか、アルカ様……?」
「んーとね」アルカは、首をこてんと傾げた。「昨日、身体があつーくなって、力がドーンってなっちゃって。それでね……」
アルカは、言葉で説明するよりも、見せた方が早いと思ったらしい。
彼女は、執務室の大きな窓の外――広大なアクアマリン湾の、遥か水平線に向かって、可愛らしく口をすぼめた。
「――こうやって」
「ぴゅっ」という、気の抜けたような音と共に、彼女の唇から、一本の細い、しかし純白の光線が放たれた。
光線は、音もなく海面に着弾する。
一瞬の静寂。
そして、次の瞬間。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!!
遥か彼方の水平線が、太陽がもう一つ生まれたかのように白く輝き、巨大な爆炎ときのこ雲、そして天を突くほどの水柱が、アルニア城からでもはっきりと見えた。
数秒後、ゴゴゴゴゴ……という地響きが、城全体を揺るがした。
エドガーは、その光景を、口を半開きにしたまま、ただ、呆然と見ていた。
島一つを、いとも容易く消し飛ばす力。その一端を、今、目の当たりにしてしまったのだ。
彼の、長年の文官生活で培われた常識も、現実認識も、全てが、あの可愛らしい「ぴゅっ」という音と共に、完全に蒸発した。
「………………あ」
短い声を最後に、エドガーは白目を剥くと、糸が切れた人形のように、その場に静かに崩れ落ちた。
「……という事なんだ、エドガー。色々大変だと思うけど、王都への報告とか、地図の修正とか、後処理、頼むな」
マ無言ルは、気絶した忠実な執事に、優しく声をかける。
その腕の中では、アルカが「あれ?えどがー、ねちゃったの?」と、不思議そうに首を傾げていた。
アルニア公爵領の、今日もまた、平和で、そして胃の痛い一日が始まろうとしていた。
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