​簿記1級とネット通販スキルで異世界無双! ~隣のポンコツエルフ王女が善意でハイパーインフレを起こすので、俺が経済を牛耳ることにしました~

月神世一

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EP 11

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学園? 行かねぇよ。俺たちは夜の街を支配する
「……優也さん。私たち、学園都市に行くんじゃなかったんですか?」
 旅支度を整えたルナが、キョトンとした顔で尋ねた。
 場所はラルディアの街の出口。
 だが、俺たちが向いている方向は、隣国の学園都市ではなく、この街の「貴族街」と「歓楽街」の境界線だった。
「予定変更だ」
 俺はビシッと言い切った。
「一晩考えたんだが、学生相手の商売は効率が悪い」
「えっ? ニャングルさんは『流行ればデカイ』って言ってましたけど……」
「流行るのは間違いない。だがな、学生が持っているのは所詮『親の小遣い』だ。単価が低い」
 俺は電卓を弾いてみせる。
「文房具やお菓子で薄利多売をするのもいいが、もっと手っ取り早く、莫大な金を落とす層がいることに気づいたんだ」
「そ、それは誰ですか?」
「『金を持て余した貴族』と、『癒やしを求める金持ちの大人たち』だ」
 俺はニヤリと笑った。
「ターゲットは富裕層(ハイソサエティ)。俺たちが提供するのは、文房具じゃない。**『極上の酒』と『夜の空間』**だ」
 ◇
「さっすが社長! 目の付け所がチャイマンナ!」
 案内役のニャングルが、揉み手をしながら先導する。
「ワイもちょうど、ええ物件を見つけたとこなんや。場所は貴族街の裏手。隠れ家的な立地で、元は伯爵の別荘やった建物や」
「ほう、悪くないな」
「せやろ? しかも、家賃は相場の十分の一! 破格やで!」
 十分の一。
 その言葉に、俺の『解析眼』ではなく、現代人としての『警戒心』が反応した。
「おい……まさか『事故物件』じゃないだろうな?」
 ニャングルの猫耳がピクリと震えた。視線が泳ぐ。
「い、いやぁ~、そんな大層なもんやないで? ただちょっと、前の持ち主が『女の霊が出る』とか『夜な夜なうめき声がする』とか言うて逃げ出しただけで……」
「ガッツリ事故物件じゃねえか!!」
 ルナが「ひぃぃっ! お化けぇ!?」とネギオの後ろに隠れる。
 だが、俺は逆に口元を緩めた。
「……面白い。幽霊が出るなら、龍魔呂に殴らせればいい。案内しろ」
「へ?」
 ◇
 案内されたのは、確かに立派だが、蔦が絡まり放題で薄気味悪い洋館だった。
 鉄柵は錆びつき、窓ガラスは割れ、庭は雑草ジャングルだ。
「……ここか。雰囲気はあるな(ホラー的な意味で)」
「出るぞ……間違いなくな……」
 霊感があるのか、龍魔呂が虚空を睨んでボソリと呟く。
 ルナは既にガタガタ震えて使い物にならない。
 俺は『解析眼』を発動し、建物の構造をスキャンした。
【物件名:旧バランドール邸】
【築年数:80年】
【状態:老朽化(中)、霊的汚染(小)】
【構造:石造り、基礎は堅牢】
「基礎は生きている。柱もしっかりしてるな」
「社長、どないします? やめときます?」
「いや、買う。即決だ」
 俺は宣言した。
 内装がボロボロ? 霊が出る? そんなものは『ネット通販』の前では些細な問題だ。
「さあ、仕事だぞお前ら! 今日中にここを、大陸一の『大人の隠れ家』にリフォームする!」
 ◇
【作戦名:劇的ビフォーアフター】
「まずは掃除だ! ネギオ、庭の雑草を全部抜け! ルナ、水魔法で外壁を高圧洗浄しろ! 今度こそ全力でやっていいぞ!」
「は、はいっ! 汚れを吹き飛ばせばいいんですね! ウォーター・ブラスト!」
 ドバァァァッ!
 ルナの放つ激流が、長年の苔と汚れを根こそぎ剥ぎ取っていく。
「龍魔呂! お前は中の家具を全部外に出せ! 幽霊が出たら物理で除霊しろ!」
「……チッ。面倒だ」
 龍魔呂が屋敷に入っていく。
 直後、中から『ギャァァァッ!』という霊の悲鳴と、ドカバキッ!という打撃音が響いた。数分後、スッキリした顔の龍魔呂が、ボロボロのソファーを片手で担いで出てきた。除霊完了らしい。
「よし、俺は内装だ」
 俺は『ネット通販』の画面を高速フリックする。
 今回のテーマは、「モダン・ラグジュアリー」。
 中世ファンタジーの世界には存在しない、洗練された異空間を作る。
 【購入:フローリング材(ダークウォールナット)】
 【購入:漆喰風・珪藻土壁紙】
 【購入:本革チェスターフィールドソファ(黒) × 4セット】
 【購入:バーカウンター用 一枚板天板(風加工)】
 そして、最も重要なアイテム。
 【購入:充電式LED間接照明セット(暖色)】
 【購入:業務用製氷機&大型冷蔵庫(魔石駆動に改造予定)】
 亜空間から次々と現れる現代の建材に、ニャングルが腰を抜かす。
「な、なんやこれぇぇ! 見たことない家具ばっかりや! このふかふかの椅子、王様の玉座より高級やないか!?」
 ◇
 ――数時間後。
 日は完全に落ち、夜の帳が下りた。
 廃墟同然だった屋敷は、驚くべき変貌を遂げていた。
「す、すごいですぅ……!」
 ルナが感嘆の声を漏らす。
 扉を開けると、そこは別世界だった。
 シックなダークブラウンで統一された床と壁。
 そこに置かれた重厚な黒革のソファ。
 そして何より、部屋の隅々やカウンターの下から漏れる、柔らかく幻想的な「間接照明(LED)」の光。
 蝋燭や松明の揺れる火しか知らない彼らにとって、この「影のない安定した光」と「ムードのある薄暗さ」は、魔法以上の奇跡に見えただろう。
「これが……俺たちの店だ」
 俺はカウンターの中に立ち、グラスを磨くフリをした。
 背後の棚(ボトルラック)には、通販で買い揃えたウイスキー、ジン、ウォッカ、リキュールの美しい瓶がズラリと並び、ライトアップされて宝石のように輝いている。
「店名は『Dining Bar AOTA(ダイニングバー・アオタ)』」
 俺は全員を見渡した。
「ルナ、お前はホール係だ。その可愛さで客を釣れ」
「はいっ! 看板娘ですね!」
「ニャングル、お前はフロアマネージャー兼、会計だ。金持ちから搾り取れ」
「任しとき! ぼったくりギリギリの適正価格で攻めたるわ!」
「そして、龍魔呂」
「……あ?」
 俺はカウンターの前に立つ、和装の用心棒を指差した。
「お前は今日から『バーテンダー』だ」
「……は? 俺がか? 酒など作ったことないぞ」
「大丈夫だ、俺が教える。それに……」
 俺は『ネット通販』で購入した、一着の服を彼に投げ渡した。
「お前のその殺気と目つきの悪さ。そして時折見せる『甘党のギャップ』。……絶対に需要がある」
 龍魔呂が渋々着替えて戻ってきた時、ルナとニャングルが息を呑んだ。
 漆黒の高級タキシード。
 首元には蝶ネクタイ。
 オールバックに撫で付けた黒髪。
 その姿は、魔王のような風格と、危険な色気を漂わせる「夜の帝王」そのものだった。
「……首が苦しい。破っていいか?」
「駄目だ。絶対に脱ぐなよ」
 ルナが顔を赤くして、鼻血を垂らしながら呟いた。
「……優也さん。これ、絶対流行ります。私が客なら通います」
 俺は確信した。
 この店は、ラルディアの夜を変える。そして、俺たちに巨万の富をもたらすだろう。
「よし、開店準備だ! 今夜、伝説を作るぞ!」
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