​簿記1級とネット通販スキルで異世界無双! ~隣のポンコツエルフ王女が善意でハイパーインフレを起こすので、俺が経済を牛耳ることにしました~

月神世一

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EP 18

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雨の夜の禁断(勘違い)ロマンス
​ ザァァァァァァッ……!
​ 『Dining Bar AOTA』の閉店時間。
 外は、バケツをひっくり返したような土砂降りの雨になっていた。
​「あら……困ったわね」
​ 入り口の扉を少し開けたルチアナが、困り顔で立ち尽くしている。
 彼女の服装は、ここに来た時のままの薄手のローブだ。この豪雨の中を歩けば、一瞬でずぶ濡れになり、せっかくカルボナーラで温まった体も冷えてしまうだろう。
​「傘、持ってないのよね……。魔法で止めるのも目立つし……」
​ 彼女が独り言を呟いていると、背後から低い足音が近づいてきた。
​「……おい」
​ 龍魔呂だ。
 彼は無言で、着ていた高級タキシードのジャケットを脱いだ。
 引き締まった筋肉と、古傷の残るワイシャツ姿が露わになる。
​「え?」
​ ファサッ。
​ 龍魔呂は、そのジャケットを乱暴に、しかし確実な手つきでルチアナの肩にかけた。
 男物のジャケットから漂う、微かな残り香と温もり。
​「……チッ。こんな薄着で出歩くな。風邪を引くぞ」
​ 龍魔呂は不機嫌そうに舌打ちをした。
 だが、その行動は、完全に「守る男」のそれだった。
​ ドクンッ!!
​ ルチアナの心臓が、本日最大級の音を立てた。
 彼女は頬を真っ赤に染め、ジャケットの襟をギュッと握りしめた。
​(な、何この展開……!? 少女漫画!? 自分の上着を貸してくれるなんて……!)
​ 彼女の脳内で、乙女回路がフル回転を始める。
 龍魔呂は、そんな彼女の様子などお構いなしに、傘立てから一本の傘を取り出した。
 俺がネット通販で仕入れた**『紳士用 高級ジャンプ傘(黒)』**だ。
​ バサッ。
 ボタン一つで開く傘に、ルチアナがビクリとする。
​「行くぞ。送っていく」
「えっ……?」
「この雨だ。駅(辻馬車の乗り場)まで濡れるだろ。さっさと入れ」
​ 龍魔呂は傘を差し出し、顎で「入れ」と促した。
 相合傘の誘いだ。
​(ま、待ってイケメン……! 家まで送る気!? それってつまり……『今夜は帰さない』ってこと!?)
​ ルチアナはパニックになった。
 彼女は創造神だ。地上の人間と恋に落ちることなど、天界の掟で厳しく禁じられている。
 しかし、目の前の男は、そんな掟など知ったことではないと言わんばかりの強引さで、彼女をリードしようとしている。
​「だ、駄目よ……! 私には……立場というものが……!」
「あ? 何をごちゃごちゃ言ってるんだ」
​ 龍魔呂は痺れを切らし、ルチアナの肩(ジャケットの上から)をグイと引き寄せた。
​「濡れるぞ。寄れ」
「ひゃんっ♡」
​ 強引に傘の中へ。
 龍魔呂の太い腕が、すぐ横にある。
 雨音だけの世界に、二人きり。
​「(あああ……! 禁断の……禁断のロマンスが始まってしまうわ……! 神と人との、許されざる愛が……!)」
​ ルチアナは顔を沸騰させ、龍魔呂の腕にしがみついた。
​「……わかったわ。地獄の果てまで、あなたについて行く……!」
「……駅までだと言ってるだろ。耳が悪いのか、このオバサンは」
​ 龍魔呂は呆れたように溜息をついた。
 彼にとっては、「か弱い女性(に見える)を放置して、後で風邪でも引かれて店にクレームが来たら面倒くさい」という、極めて事務的な判断だった。
​ ◇
​ 二人が雨の中へ消えていくのを、俺たちは店の中から見送っていた。
​「……社長。あれ、どう見てもカップルやで」
「ああ。しかも、世界を揺るがすレベルのな」
​ 俺は頭を抱えた。
 龍魔呂の天然ジゴロスキルが、神をも堕としてしまった。
 このままでは、天界から雷が落ちてくるか、あるいは龍魔呂が神の夫(主夫)になってしまうか。
​「……まあ、龍魔呂さんなら、神様相手でも尻に敷きそうですけどね」
​ ルナが呑気に笑う。
 確かに。龍魔呂なら、神殿の玉座で「角砂糖はないのか」と文句を言っている姿が容易に想像できる。
​「……優也さん。私たちも帰りましょうか」
「そうだな。明日の仕込みもあるしな」
​ 俺たちは店の灯りを落とした。
​ 雨の夜道。
 一つの傘の下で、壮大な勘違いをした女神と、早く帰って寝たい元殺人鬼の、奇妙な道行が続いていた。
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