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EP 2
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通信阻害結界を『解体』したら、世界最強の神回線が開通しました
バキンッ!!
耳をつんざくような破砕音が響いた。
俺は死を覚悟して目を瞑っていたが……痛みがない。
「……あれ?」
恐る恐る目を開ける。
そこには、信じられない光景が広がっていた。
俺の目の前で、巨大なキラーマンティスが――いや、「キラーマンティスだったもの」が、綺麗に整列していたのだ。
右側には、鋭利な鎌と外殻(キチン質)が積み上げられている。
左側には、ピンク色をした新鮮な筋肉繊維(食用肉)がパック詰めのような状態で置かれていた。
そして中央には、キラキラと輝く魔石が一つ。
「これ……全部、素材?」
血の一滴すら落ちていない。
まるで、熟練の解体師が何時間もかけて処理したかのような、完璧な仕事ぶりだ。
いや、それ以上だ。本来なら傷ついて価値が下がるはずの部位まで、分子レベルで綺麗に分離されている。
「まさか……今の『解体』スキルか?」
俺は自分の掌を見つめる。
ただの生活魔法だと思っていた。死体を切り分けるだけの、地味なゴミスキル。
それが、生きている魔物にも効いたのか?
ギギギッ! シャアアアッ!
感傷に浸る暇はない。
仲間の死に激昂したのか、残りのマンティスたちが一斉に襲いかかってきた。数は十体以上。
逃げ場はない。
「くそっ、やるしかないのか!」
俺は再び右手を突き出した。
対象は、視界に映る全ての敵。
構造を理解しろ。肉、骨、魔石、外殻。それらは全て、ただのパーツの集合体だ。
バラせ。
元の形を保たせるな。
「――『解体(ディスマントル)』!」
ブォンッ。
一瞬だった。
飛びかかってきた十体の魔物が、空中で同時に弾け飛んだ――いや、**「仕分け」**られた。
ドサドサドサッ!
大量の高級食材と素材の山が、俺の周囲に築かれる。
「は、はは……。マジかよ」
震えが止まらない。
俺はずっとFランクとして馬鹿にされてきた。
剛田たちに殴られ、妹には「甲斐性なし」と罵られ、社会の底辺を這いつくばってきた。
それが、指先一つでCランクの魔物を瞬殺?
「……いや、喜んでる場合じゃない」
ここはダンジョンの深層だ。
ボス部屋の前だ。
マンティスは倒したが、もっとヤバい奴が出てくるかもしれない。
帰らなきゃ。でも、装備も地図もない。
「誰か……救援を……」
俺はポケットから、画面の割れたスマホを取り出した。
5年落ちの型落ちモデル。バッテリーも切れかけだ。
震える指で電源を入れる。
『圏外』
……知ってた。
ダンジョンの中、特に深層には強力な魔力場が満ちていて、電波なんて届かない。
GPSも狂う。だから探索者は高価な通信機を持つか、「伝書鳩」のような魔物を使うしかないのだ。
「ふざけんなよ……。ここで電波が繋がれば、ギルドに救難信号が送れるのに!」
焦りが苛立ちに変わる。
スマホの画面に表示された、忌々しい『圏外』の文字。
そして、空間に漂う重苦しい魔力の淀み。
「邪魔なんだよ、この……結界みたいなのが!」
俺は無意識に、スマホではなく**「空間そのもの」**に手をかざしていた。
目に見えない壁。電波を遮断している、薄い膜のような概念。
それもまた、「構造」を持っているはずだ。
なら――バラせる。
「……『解体』」
パリンッ。
何かが割れる音がした。
ガラスじゃない。もっと高位の、世界の理(ことわり)のようなものが砕け散った音。
直後。
スマホが震えた。
『5G+ バリ3』
「……は?」
アンテナピクトが最大まで振り切れている。
それどころか、見たこともない「6G」とか「GOD」みたいな謎のアイコンが点滅し始めた。
通信速度測定アプリが勝手に起動し、測定不能のエラーを吐いている。
「つ、繋がった!? マジか!」
俺は慌てて「Dチューブ(ダンジョン・チューブ)」のアプリを起動した。
電話よりも、配信の方が確実だ。
動画を残せば、もし俺がここで死んでも、剛田たちの悪事を告発できる。
俺の遺体が見つかる手がかりになるかもしれない。
「えっと、配信開始……タイトルは……」
指が震えてうまく打てない。
『遺言。誰か聞いて』
それだけ入力し、俺は「ライブ開始」ボタンを押した。
インカメラが起動する。
画面には、薄暗いダンジョンの壁と、死相の浮いた俺の顔。
そして背景には――山積みになったマンティスの死体(素材)が映り込んでいた。
「あー、あー。聞こえますか」
視聴者数:0人。
当たり前だ。無名のFランクの配信なんて誰も見ない。
だが、俺は気づいていなかった。
俺が今、「世界中のあらゆる通信セキュリティとファイアウォールを『解体(無視)』して」、トップページのおすすめ枠に強制割り込みしていることに。
――同接数が、異常な速度で「1」から「1000」に跳ね上がった。
バキンッ!!
耳をつんざくような破砕音が響いた。
俺は死を覚悟して目を瞑っていたが……痛みがない。
「……あれ?」
恐る恐る目を開ける。
そこには、信じられない光景が広がっていた。
俺の目の前で、巨大なキラーマンティスが――いや、「キラーマンティスだったもの」が、綺麗に整列していたのだ。
右側には、鋭利な鎌と外殻(キチン質)が積み上げられている。
左側には、ピンク色をした新鮮な筋肉繊維(食用肉)がパック詰めのような状態で置かれていた。
そして中央には、キラキラと輝く魔石が一つ。
「これ……全部、素材?」
血の一滴すら落ちていない。
まるで、熟練の解体師が何時間もかけて処理したかのような、完璧な仕事ぶりだ。
いや、それ以上だ。本来なら傷ついて価値が下がるはずの部位まで、分子レベルで綺麗に分離されている。
「まさか……今の『解体』スキルか?」
俺は自分の掌を見つめる。
ただの生活魔法だと思っていた。死体を切り分けるだけの、地味なゴミスキル。
それが、生きている魔物にも効いたのか?
ギギギッ! シャアアアッ!
感傷に浸る暇はない。
仲間の死に激昂したのか、残りのマンティスたちが一斉に襲いかかってきた。数は十体以上。
逃げ場はない。
「くそっ、やるしかないのか!」
俺は再び右手を突き出した。
対象は、視界に映る全ての敵。
構造を理解しろ。肉、骨、魔石、外殻。それらは全て、ただのパーツの集合体だ。
バラせ。
元の形を保たせるな。
「――『解体(ディスマントル)』!」
ブォンッ。
一瞬だった。
飛びかかってきた十体の魔物が、空中で同時に弾け飛んだ――いや、**「仕分け」**られた。
ドサドサドサッ!
大量の高級食材と素材の山が、俺の周囲に築かれる。
「は、はは……。マジかよ」
震えが止まらない。
俺はずっとFランクとして馬鹿にされてきた。
剛田たちに殴られ、妹には「甲斐性なし」と罵られ、社会の底辺を這いつくばってきた。
それが、指先一つでCランクの魔物を瞬殺?
「……いや、喜んでる場合じゃない」
ここはダンジョンの深層だ。
ボス部屋の前だ。
マンティスは倒したが、もっとヤバい奴が出てくるかもしれない。
帰らなきゃ。でも、装備も地図もない。
「誰か……救援を……」
俺はポケットから、画面の割れたスマホを取り出した。
5年落ちの型落ちモデル。バッテリーも切れかけだ。
震える指で電源を入れる。
『圏外』
……知ってた。
ダンジョンの中、特に深層には強力な魔力場が満ちていて、電波なんて届かない。
GPSも狂う。だから探索者は高価な通信機を持つか、「伝書鳩」のような魔物を使うしかないのだ。
「ふざけんなよ……。ここで電波が繋がれば、ギルドに救難信号が送れるのに!」
焦りが苛立ちに変わる。
スマホの画面に表示された、忌々しい『圏外』の文字。
そして、空間に漂う重苦しい魔力の淀み。
「邪魔なんだよ、この……結界みたいなのが!」
俺は無意識に、スマホではなく**「空間そのもの」**に手をかざしていた。
目に見えない壁。電波を遮断している、薄い膜のような概念。
それもまた、「構造」を持っているはずだ。
なら――バラせる。
「……『解体』」
パリンッ。
何かが割れる音がした。
ガラスじゃない。もっと高位の、世界の理(ことわり)のようなものが砕け散った音。
直後。
スマホが震えた。
『5G+ バリ3』
「……は?」
アンテナピクトが最大まで振り切れている。
それどころか、見たこともない「6G」とか「GOD」みたいな謎のアイコンが点滅し始めた。
通信速度測定アプリが勝手に起動し、測定不能のエラーを吐いている。
「つ、繋がった!? マジか!」
俺は慌てて「Dチューブ(ダンジョン・チューブ)」のアプリを起動した。
電話よりも、配信の方が確実だ。
動画を残せば、もし俺がここで死んでも、剛田たちの悪事を告発できる。
俺の遺体が見つかる手がかりになるかもしれない。
「えっと、配信開始……タイトルは……」
指が震えてうまく打てない。
『遺言。誰か聞いて』
それだけ入力し、俺は「ライブ開始」ボタンを押した。
インカメラが起動する。
画面には、薄暗いダンジョンの壁と、死相の浮いた俺の顔。
そして背景には――山積みになったマンティスの死体(素材)が映り込んでいた。
「あー、あー。聞こえますか」
視聴者数:0人。
当たり前だ。無名のFランクの配信なんて誰も見ない。
だが、俺は気づいていなかった。
俺が今、「世界中のあらゆる通信セキュリティとファイアウォールを『解体(無視)』して」、トップページのおすすめ枠に強制割り込みしていることに。
――同接数が、異常な速度で「1」から「1000」に跳ね上がった。
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