万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜

月神世一

文字の大きさ
7 / 70

EP 7

SSS級ドロップ『龍王の心臓』と、社会的に死んだ元パーティ
​「お待たせ。じゃあ、サクッといこうか」
​ 俺は、恐怖で震えている『深淵の魔龍』に向き直った。
 すでに翼はなく、牙もない。
 かつて深層の王者と呼ばれたドラゴンは、今の俺には「解体待ちの高級食材」にしか見えなかった。
​「悪いな。妹に美味い肉、食わせてやりたいんだ」
​ 俺は右手をかざす。
 狙うは、生命活動の中枢。そして、最も魔力が凝縮された部位。
​「――『解体』!」
​ ブゥン……。
​ 断末魔の叫びすら上げさせない。
 一瞬で、ドラゴンの巨体が光の粒子となって崩れ落ちた。
 後に残ったのは、綺麗にブロック分けされた大量の『龍肉(霜降り)』と、骨、皮。
 そして――
​ ドクン……ドクン……。
​ 中央に浮遊する、深紅に輝く結晶体。
 大人の頭ほどの大きさがあり、まるで生きているかのように脈動している。
 周囲の空気がビリビリと震えるほどの魔力密度だ。
​「うおっ、まぶし」
​ 俺はそれを両手でキャッチした。
 ずっしりと重い。温かい。
​「これ……心臓か? 魔石じゃなくて?」
​ スマホの画面を覗き込む。
 コメント欄が、滝のような速度で流れていた。
​『心臓キタアアアアア!!』
『うわあああああ! SSS級素材『龍王の心臓(ドラゴン・ハート)』だ!!』
『世界に3個しかないやつ!』
『値段つけられないぞこれ。国家予算クラス』
『発電所1個分のエネルギーあるってマジ?』
『【速報】Fランク探索者、世界最強のエネルギー資源を手に入れる』
​「へぇ、そんなに高いのか」
​ 俺は「ラッキー」と呟き、それをポケット(亜空間)に放り込んだ。
 これで借金完済どころか、未緒の将来も安泰だ。
 ついでに、山積みの霜降り肉も収納していく。
​「さて、帰るか……」
​ そう思った時だった。
​「ま、待て……! それは……俺たちの……!」
​ 瓦礫の山から、ボロボロになった男たちが這い出てきた。
 『銀の牙』の3人だ。
 鎧は砕け、服は破れ、全身がアリの体液と自分の血でベトベトになっている。
 どうやら、装甲を剥がされて凶暴化したアリたちから、命からがら逃げ延びたらしい。
​「剛田さん? まだ生きてたんですね」
「ふざけんな……! その心臓……よこせ……!」
​ 剛田がふらつく足で近寄ってくる。
 その目は血走り、強欲と執着で濁っていた。
​「俺たちが……弱らせたんだ……! 俺たちの成果だ……! お前みたいなFランクが……持ってていい代物じゃねえ……!」
​「弱らせた?」
​ 俺は首を傾げた。
 こいつら、アリに追われて逃げ惑っていただけじゃないか?
​「見てましたよね、視聴者さん?」
​ 俺はカメラに向かって問いかけた。
 即座にコメントが反応する。
​『見てた見てた』
『1ミリも攻撃してないぞこいつら』
『むしろ邪魔だった』
『【悲報】元パーティ、幻覚が見え始める』
『強盗の次は詐欺かよ』
『往生際が悪すぎて草も生えない』
​ 世界中が証人だ。
 だが、剛田たちは配信されていることを理解できていないのか、あるいは欲望で理性が飛んでいるのか、剣を構えて脅しにかかってきた。
​「うるせぇ! よこせ! 殺してでも奪ってやる!」
「九条! あんた荷持ちでしょ!? 私たちの言うことを聞きなさいよ!」
​ レナがヒステリックに叫び、魔法の杖を向ける。
 健太も回復魔法を自分にかけながら、睨みつけてくる。
​「はぁ……」
​ 俺はため息をついた。
 こいつら、本当に学習しないな。
 俺はもう、ただの荷持ちじゃない。
 ドラゴンを解体し、壁を解体し、物理法則すらねじ曲げる『解体屋』だ。
​「悪いけど、それ俺のなんで」
​ 俺は剛田が振り上げた剣の切っ先を、指先で軽く弾いた。
​「――『解体』」
​ パキィンッ!
​ 鋼鉄の剣が、飴細工のように粉砕された。
 刃だけではない。
 剛田が着ていたボロボロの鎧、レナの杖、健太の聖印。
 彼らが身につけていた「探索者の証」である全ての装備が、一瞬で砂のように崩れ去った。
​「あ……?」
「えっ……?」
​ 彼らは下着同然の姿で、ダンジョンの冷たい風にさらされることになった。
​「装備、返してもらいましたよ。……質が悪いから、全部ゴミになっちゃいましたけど」
​ 俺は冷ややかに見下ろした。
 殺しはしない。
 だが、探索者としての命は、ここで終わりだ。
​「ひっ……!」
「な、なんだよお前……化け物かよ……!」
​ 剛田が腰を抜かし、後ずさる。
 その無様な姿は、高画質8Kカメラで余すところなく配信され、世界中の端末に保存された。
​『ざまぁwwwww』
『社会的に死亡確認』
『装備全ロスト&全裸配信は草』
『これもう探索者として復帰無理だろ』
『ギルドカード剥奪不可避』
『主、トドメ刺さないのが逆にエグいw』
​ 俺は彼らに背を向け、出口へと続く(壁に穴を開けた)通路へ歩き出した。
​「じゃあ、俺は帰りますね。頑張って自力で帰ってください。……あ、道中のアリさんたち、まだ怒ってると思いますけど」
​ 背後から絶望の悲鳴が聞こえた気がしたが、俺は振り返らなかった。
 ポケットの中の『龍王の心臓』が、ドクンと温かく脈打った。
感想 8

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで迷惑配信者をやっていた俺。うっかりアイドル配信者を襲ってたドラゴンをぶっ飛ばした結果、良い人バレして鬼バズる

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
 矢上一樹は、ダンジョンでマナー違反行為を繰り返す迷惑系配信者だ。  他人の獲物を奪う、弱いモンスターをいたぶる、下品な言葉遣い。やりたい放題やって人気を得ていた彼だったが――ある日、うっかり配信を切り忘れて律儀な一面がバレてしまう。  焦った一樹はキャラを取り繕うも、時すでに遅し。一樹の素は大々的に拡散され話題沸騰していて――さらには、助けた美少女が人気アイドル配信者だったことで、全国レベルでバズってしまい!? これは、炎上系配信者が最強でただのいいヤツだった的な、わりとよくある物語。 ※本作はカクヨムでも連載しています。そちらでのタイトルは「ダンジョンで迷惑配信者をやっていた俺。うっかりアイドル配信者を助けた結果、良い人バレして鬼バズってしまう~もう元のキャラには戻れないかもしれない〜」となります。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【番外編】追加しました。連休のスキマ時間でぜひお楽しみください! 【5話ごとのサクッと読める構成です!】 本編 全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!お気に入り登録、ハート、コメント、とても励みになります♪ ─あらすじ─ 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】