万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜

月神世一

文字の大きさ
7 / 10

EP 7

しおりを挟む
SSS級ドロップ『龍王の心臓』と、社会的に死んだ元パーティ
​「お待たせ。じゃあ、サクッといこうか」
​ 俺は、恐怖で震えている『深淵の魔龍』に向き直った。
 すでに翼はなく、牙もない。
 かつて深層の王者と呼ばれたドラゴンは、今の俺には「解体待ちの高級食材」にしか見えなかった。
​「悪いな。妹に美味い肉、食わせてやりたいんだ」
​ 俺は右手をかざす。
 狙うは、生命活動の中枢。そして、最も魔力が凝縮された部位。
​「――『解体』!」
​ ブゥン……。
​ 断末魔の叫びすら上げさせない。
 一瞬で、ドラゴンの巨体が光の粒子となって崩れ落ちた。
 後に残ったのは、綺麗にブロック分けされた大量の『龍肉(霜降り)』と、骨、皮。
 そして――
​ ドクン……ドクン……。
​ 中央に浮遊する、深紅に輝く結晶体。
 大人の頭ほどの大きさがあり、まるで生きているかのように脈動している。
 周囲の空気がビリビリと震えるほどの魔力密度だ。
​「うおっ、まぶし」
​ 俺はそれを両手でキャッチした。
 ずっしりと重い。温かい。
​「これ……心臓か? 魔石じゃなくて?」
​ スマホの画面を覗き込む。
 コメント欄が、滝のような速度で流れていた。
​『心臓キタアアアアア!!』
『うわあああああ! SSS級素材『龍王の心臓(ドラゴン・ハート)』だ!!』
『世界に3個しかないやつ!』
『値段つけられないぞこれ。国家予算クラス』
『発電所1個分のエネルギーあるってマジ?』
『【速報】Fランク探索者、世界最強のエネルギー資源を手に入れる』
​「へぇ、そんなに高いのか」
​ 俺は「ラッキー」と呟き、それをポケット(亜空間)に放り込んだ。
 これで借金完済どころか、未緒の将来も安泰だ。
 ついでに、山積みの霜降り肉も収納していく。
​「さて、帰るか……」
​ そう思った時だった。
​「ま、待て……! それは……俺たちの……!」
​ 瓦礫の山から、ボロボロになった男たちが這い出てきた。
 『銀の牙』の3人だ。
 鎧は砕け、服は破れ、全身がアリの体液と自分の血でベトベトになっている。
 どうやら、装甲を剥がされて凶暴化したアリたちから、命からがら逃げ延びたらしい。
​「剛田さん? まだ生きてたんですね」
「ふざけんな……! その心臓……よこせ……!」
​ 剛田がふらつく足で近寄ってくる。
 その目は血走り、強欲と執着で濁っていた。
​「俺たちが……弱らせたんだ……! 俺たちの成果だ……! お前みたいなFランクが……持ってていい代物じゃねえ……!」
​「弱らせた?」
​ 俺は首を傾げた。
 こいつら、アリに追われて逃げ惑っていただけじゃないか?
​「見てましたよね、視聴者さん?」
​ 俺はカメラに向かって問いかけた。
 即座にコメントが反応する。
​『見てた見てた』
『1ミリも攻撃してないぞこいつら』
『むしろ邪魔だった』
『【悲報】元パーティ、幻覚が見え始める』
『強盗の次は詐欺かよ』
『往生際が悪すぎて草も生えない』
​ 世界中が証人だ。
 だが、剛田たちは配信されていることを理解できていないのか、あるいは欲望で理性が飛んでいるのか、剣を構えて脅しにかかってきた。
​「うるせぇ! よこせ! 殺してでも奪ってやる!」
「九条! あんた荷持ちでしょ!? 私たちの言うことを聞きなさいよ!」
​ レナがヒステリックに叫び、魔法の杖を向ける。
 健太も回復魔法を自分にかけながら、睨みつけてくる。
​「はぁ……」
​ 俺はため息をついた。
 こいつら、本当に学習しないな。
 俺はもう、ただの荷持ちじゃない。
 ドラゴンを解体し、壁を解体し、物理法則すらねじ曲げる『解体屋』だ。
​「悪いけど、それ俺のなんで」
​ 俺は剛田が振り上げた剣の切っ先を、指先で軽く弾いた。
​「――『解体』」
​ パキィンッ!
​ 鋼鉄の剣が、飴細工のように粉砕された。
 刃だけではない。
 剛田が着ていたボロボロの鎧、レナの杖、健太の聖印。
 彼らが身につけていた「探索者の証」である全ての装備が、一瞬で砂のように崩れ去った。
​「あ……?」
「えっ……?」
​ 彼らは下着同然の姿で、ダンジョンの冷たい風にさらされることになった。
​「装備、返してもらいましたよ。……質が悪いから、全部ゴミになっちゃいましたけど」
​ 俺は冷ややかに見下ろした。
 殺しはしない。
 だが、探索者としての命は、ここで終わりだ。
​「ひっ……!」
「な、なんだよお前……化け物かよ……!」
​ 剛田が腰を抜かし、後ずさる。
 その無様な姿は、高画質8Kカメラで余すところなく配信され、世界中の端末に保存された。
​『ざまぁwwwww』
『社会的に死亡確認』
『装備全ロスト&全裸配信は草』
『これもう探索者として復帰無理だろ』
『ギルドカード剥奪不可避』
『主、トドメ刺さないのが逆にエグいw』
​ 俺は彼らに背を向け、出口へと続く(壁に穴を開けた)通路へ歩き出した。
​「じゃあ、俺は帰りますね。頑張って自力で帰ってください。……あ、道中のアリさんたち、まだ怒ってると思いますけど」
​ 背後から絶望の悲鳴が聞こえた気がしたが、俺は振り返らなかった。
 ポケットの中の『龍王の心臓』が、ドクンと温かく脈打った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...